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しおりを挟むマリーヌとテオドールが、婚約してから、色々とあった。テオドールの方の両親は、息子が婚約したい女性ができたとわかって狂喜乱舞したのだ。
それこそ、彼の両親は、噂が真実ではないかと思ってすらいたようだ。
女嫌いなだけでなくて、男が好きで、何よりエドガーに片想いしているとすら、彼の母親は思っていたようなのだ。
それが、マリーヌに一目惚れして、彼女のことを女神のように素晴らしい女性なのだと語りに語ったのだ。それでも、テオドールとしては語り足りないようだったが、それを聞いて是が非でも婚約させて、是非とも我が家の嫁にと思ってくれたのも、すぐのことだった。
マリーヌは、なぜだが大歓迎ムードなテオドールの両親に困惑しきりだった。
マリーヌの養父母たちは、マリーヌが嫁ぐ家、ましてや義両親の歓迎っぷりににこにこしていた。マリーヌの良さをわかってくれているだけでなくて、息子が気に入ったのだからといい子に違いないというのに良い家族だと思っているようだ。
マリーヌとして、おばあちゃんに色々聞いていたのと違う歓迎一色なムードにどうしたら良いのかと思っていた。
「マリーヌ。最初が、肝心だよ。婚約者のご両親に好かれるには、副団長様を褒めるのを忘れちゃいけないよ」
「褒める……?」
「そうさ。誰のとこだって、我が子を褒められて、こういうところが素晴らしいから一生ついていこうと決めたと言われたら嬉しいもんだよ」
「……」
マリーヌは、それを聞いて困り果てた。それこそ、顔合わせになっても、まだ何と言ったら良いのかと悩んでいた。
気が合うと答えたことが、何やら大事になってしまっていることに頭を抱えたくなっていたが、テオドールも、彼の両親と同じく嬉しそうにしているのを見て、彼があんなに喜んでいるのなら、それでいいかとマリーヌは思うのも早かった。
どうやら、嫌われてはいないようだし、彼の嫁になっても以前の婚約のように蔑ろにされることも、必要ないと言われることもないだろう。
一生を共にしてくれる人間など、他に現れるとは思えないことから、マリーヌはここから彼のことを好きになろうと奮闘することになった。
彼にやっぱり、他の女性の方が良かったと思われて捨てられることになったら、良くしてくれているみんなからも嫌われることになって、ここから出ていかなくてはならなくなる。
前と同じことをやることは、今のマリーヌにはできそうもなかった。みんなに必要ない存在になったら、生きていけそうにない。
そんなことを思っていたのとおばあちゃんのアドバイスを思案していて、マリーヌはこんなことを言っていた。
「私、副団長様が……、テオドール様がいないと生きていけそうもありません」
「っ、」
「一生、お側にいても……?」
「も、勿論です!」
テオドールは感激して、マリーヌの手を握りしめていた。
「まぁ! そこまで、息子のことを……」
「そうか。そうか。テオドール! 良かったな。お前の女神は、お前にぞっこんだぞ」
そんなことを聞けると思っていなかったテオドールは、目を見開きながら、頬を赤く染めていた。実に嬉しそうに蕩けるような瞳で、マリーヌを見ていた。
マリーヌは、内心で、ん?と思っていたが、まぁ、感激しているようだから、うまいったんだなとホッとしていた。
マリーヌの養父母も、マリーヌの気持ちを聞けたとして泣いて喜んでいた。お互い延両親と養父母たちもまた凄く仲良くなって、その和気藹々としたムードにマリーヌとテオドールも笑顔となっていた。
エドガーは、テオドールから彼の両親との顔合わせの時にマリーヌの想いを聞いたと嬉しそうに報告をされて、それに驚かずにはいられなかった。
「お嬢が、そんなことを……?」
「はい。なので、一生大事にしようと思います」
テオドールから、そんなことを聞くことになる日が来るとは思っていなかった。エドガーは、良かったなと心から祝福した。
婚約して顔合わせをしたことで、マリーヌが恋心を自覚したのだと思ってのことだ。
そうか。自分の思い違いだったみたいだなと思い、心からエドガーはホッとしていた。
老婦人も、マリーヌの気持ちを聞いて、感極まって泣いたほどだ。それが、メイド長に伝わり、年甲斐もなく二人は、はしゃいだようだ。
だが、マリーヌの中には未だに根強く残されたままの傷に気づく者はいなかった。
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