私が、全てにおいて完璧な幼なじみの婚約をわざと台無しにした悪女……?そんなこと知りません。ただ、誤解されたくない人がいるだけです

珠宮さくら

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「お前のせいだぞ!」
「っ、」


ルチアは、ジョヴァンナの兄にあの日からずっと責め立てられていた。ルチアが、全て悪いと言わんばかりに怒鳴り散らしていた。

それは、心優しい人だとルチアが思っていた理想の兄はいなくなっていた。


「全く、妹の友達だと勝手に思っていたようだが、お前のようなのが妹の友達に相応しいわけがないんだ。こうなると思って引き離そうとしていたのに。おめでたい頭をしていたから、私の言っている意味がわからなかったのかと思っていたが、こんなことを密かに考えている頭はあったみたいだな」
「っ、」


ジョヴァンナは、あの後、婚約を解消することになった。

優しい兄だと思っていたら、全然優しくはなかったことを身を持って知ることになった。くどくど、ねちねちとルチアは言われ続けていた。

全ては、ルチアが悪いと彼は言いたいのだ。こんな性格をしているとは思わなかった。

それこそ、あの一件について王太子が、ルチアは巻き込まれただけだと言っていて、エルマンノの勘違いのせいだと言ったのだが、それを聞かなかったかのように彼はルチアを責め立てていた。

ルチアもまた、責め立てられるに値することをしたと思っているせいで、言い返せないまま自分を責めていた。

それでも、疲れてきた。ずっと続くことになるなんて思わなかったのだが、終わりが見えないことになるとは思いもしなかった。


(こんな人だったんだ。ジョヴァンナが、アルドの方がいいって言ってたのは、こういうことだったのね。弟は、ここまでねちねちしてないもの)


そう思うとジョヴァンナが言いたかった意味がやっとわかった気がしてならないが、今更わかってもどうしようもない気がしていた。

始まりは、エルマンノのとんでもない勘違いからだった。あの子息が、婚約したと思い込んだのだが、ジョヴァンナという名前のみが一緒の全く別の令嬢だったのだ。

同じ名前の令嬢が他にいることを知らずにタイミング悪く婚約する話をされて、話題になっている公爵家のジョヴァンナだと思い込んだのだ。

あのトンチンカンな思考をしている彼の導き出した答えは、いつもそんな感じで出されたようだ。ルチアにもできないことだ。

ちょっとした計算ミスなんかじゃない。ミスをどれだけ重ねたら、そうなったのか。考えてもわかるわけがない。

エルマンノの方は、婚約しそうだったのが、あの一件で白紙になった。当たり前の結果だ。誰も、エルマンノのような子息と婚約させるわけがない。

王太子を不快にさせただけでなくて、婚約しそうな状況で、他の令嬢とプレゼントを買いに行くようなのと婚約したいわけがないし、させたいわけがない。

あのアクセサリーショップの店員や証言してくれた人たちも、必死にルチアを擁護してくれたが、その時には噂を流されてしまって、そちらがまことしやかに話されて広まってしまっていた。

それだけでなくて、ルチアが言ったことで誤解されてしまって、本当のことがネジ曲がってしまった。

ルチアが、悪意を持って幼なじみの婚約を台無しにしたことが真実のようにされるまで、あっという間のことだった。

ちゃんと証明した人たちがいたのに。ルチアのことを見ていた者が吹聴して回ったことで、すっかりルチアは幼なじみを前々から気に入らずに機会を伺っていて、やっと機会が巡って来たとばかりに狙い澄まして貶めた悪女のように学園では言われてしまったのだ。

ジョヴァンナの兄だけではない。エルマンノも、ルチアのせいだと責め立てた。それこそ、エルマンノは自分が勘違いしたのが、彼の家族にもよくわかったはずなのに家のピンチを全てルチアのせいにしたのだ。

どちらの家族も、ルチアを悪者にした。そのせいで、ルチアの家族がいい迷惑を被ったのは言うまでもない。

そんなことになったことで、ジョヴァンナはショックを受けてしまったのか。ルチアは、誤解を解こうとしても会わせてもらえずにいた。

誰に何を言われるよりも、ジョヴァンナに疑われていると思う方が、ルチアにはきつくて堪えられなかった。


(会ってもらえないってことは、私のことを周りと同じようにはめたと思っているってことよね)


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