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「姉さんが、倒れた?」
色々とやることがあって、姉にばかり構っていられなかった。あんなに危うい状態で、学園でもあの噂を信じた者たちが嫌がらせをしているようだから、ずっと側にいた方がよかったのだろうが、腑に落ちないことがあって、それについて調べるのに躍起になっていたせいだ。
帰宅するなり、いつにもなく静まり返っていた両親がいて、姉が倒れたことを聞いてどれだけ驚いたことか。何なら心臓を掴まれた気すらした。
急いで姉の部屋に行きたかったが、両親は沈んだ声でこう続けた。
「王太子から知らせが来た。しばらく、王宮で預かるそうだ」
部屋に姉はいないとわかって、眉を顰めずにはいられなかった。
「王太子から? なぜ、そんなことに?」
「殿下に婚約解消の撤回を願い出たようだ」
「……」
父の言葉に何とも言えない顔をしてしまった。ずっと顔色が悪かったし、食事もろくにしていなかった。よく眠れていない顔をしていた。倒れても仕方がない。
あの子息のせいで、悪女のように言われるまでになったが、王太子はあの子息が全ての根源だと言って我が家には、姉には非がないと言ってくれているのに。それすら聞かずに姉を悪く言い続ける者は後を絶たなかった。
まるで、そうあり続けてくれないと困るかのようだった。
そもそも、姉が幼なじみを裏切っていたかのようにしているのも、前々から仕込まれていたかのようになっていた。悪意が花開いたかのようになっていて私だけでなく、両親もそれに眉を顰めずにはいられなかった。
全てが、姉のせいで終わらせようとしているかのようになっているのが、気に入らない。
その上、ジョヴァンナは恥をさらしたとして隣国の親戚の養子になることが決まったらしく、それがかなり前に決まって隣国に行ったようだが、それを私はやっと掴んだ。
そんな時に今更かと思うことがあった。あの家の侍女から姉宛てに届けものがあったのだ。
随分前にジョヴァンナに渡されていたが、中々届けるチャンスがなかったと言っていた。あちらでは、この家自体が鬼門というか。関わりたくないと思っているようだ。
それこそ、ここに届け物をしたと知られただけでも、咎められるのだろう。だから、慎重に届けたようで、遅くなってしまったことを謝罪して、受け取ったのは私だった。
本当なら、こんなことになった姉宛ての手紙など渡したくはないところだが、姉が倒れるまで必死になっていたのが、撤回だったのだとしたら、この手紙を早く届けた方がいいはずだ。
姉のことで、ジョヴァンナへの評価は下がり始めるかと思ったが、下がりきる判断ができずにいた。姉を苦しめる存在と判断しきれなかった。
「姉さんには、私が届けます」
「そうしてくれ」
「ルチアは、大丈夫かしら」
「……少なくとも、これを見たら元気になるかと」
「そうね。あの子は、ジョヴァンナが大好きだもの」
姉が幼なじみを貶めたなんて、家族の誰も思ってはいない。むしろ、おかしなことだらけではめられたのではないかと思っているが、それが誰なのかを探していて、まだ見つかっていない。
「見つけたら、ただではおかない」
父の言葉に私も、頷いた。そんなこと言われるまでもなかったが、私は姉をあんな目に合わせたのだから、数倍にして返すつもりで探していた。
探すのに必死になって姉が倒れたことに苛立ってならない。
見つかったら地獄を見せてやる。
そう思うほど、腸が煮えくり返っていた。
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