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しおりを挟むルチアが気づくとそこにいた。眠っていたようだが、頭はガンガンしていた。二日酔いなんてなったことはない。お酒を飲める歳ではないが、二日酔いはこんな感じな気がしてならなかった。
(知らないところ。どこだろう??)
頭が痛すぎて思考も判断もいつにも増して鈍い。
「お目覚めになられましたか?」
「えっと」
「すぐに殿下に知らせて」
「かしこまりました」
そこにいたのは、我が家の侍女ではなかった。それをぼーっと見ているとしばらくして、医者が現れた。見たことない医者だった。
ゆっくりと起き上がって、診察を受けていると王太子がやって来た。
(ここって、王宮……?)
やっと、自分がどこにいるかわかったが、なぜそんなところにいるのかがわからなかった。
「どうだ?」
「まだ、熱が下がりきっていないので、安静にしておいた方がいいですね。心労と過労と、精神的なものが大きいようです。その上、風邪を引いてもいる。体力もなくなっていたから、3日も眠っておられた。胃に優しいものを食べれたら食べてください。薬も出しておきます。熱もまだ下がりきっていないので、話すのなら手短にお願いします」
「わかった」
医者は、そう言って出て行った。
(3日……? 寝すぎていたから、頭が痛いのか。熱のせいで、頭が痛いのか)
頭の痛さに眉を顰めずにはいられなかった。
「あの、私、どうしてここに?」
「ん? あぁ、そこからか。そうだな。倒れたのを覚えているか?」
「えっと、……あ、外にいて……」
「そうだ。精神的にまいっていて、ろくに食べていなかったようだし、雨の中にかなり立っていたから、風邪を引いたんだろう。家に送るよりも、こっちが近いから王宮でしばらく療養させるからと預かっている」
「申し訳ありません」
「いいんだ。それより……」
そこに護衛が現れて、王太子に耳打ちした。何か重要なことかもしれない。
(家に帰らなきゃ)
ルチアは、王宮に居続けるわけにいかないと思っていた。
「君の弟が来ているようだ」
「え、アルドが?」
王太子から、弟の話題が出て驚いた。
「毎日来ている。君に渡したいものがあるようだ。通しても?」
王太子の問いにルチアは頷いた。弟を追い帰すなんてするはずがない。たとえ、怒られても、ルチアはアルドに会いたかった。
「わかった。通してくれ」
ルチアにとって眠っていたせいか。数日経っている気がしなかったが、アルドは姉が起きているのに安堵した顔をした。その顔を見て、心配かけたことがわかって、ルチアは申し訳ない気持ちになった。
そんな顔を弟がしたのを見たことがない。
「姉さん。よかった。目が覚めたんだな」
「えぇ、ついさっき起きたの。心配かけて、ごめんなさい」
「全くだよ。あ、これ、この間、姉さんが倒れた日に届いたんだ」
「?」
手紙のようだが、ルチアはそれが誰からなのかと不思議そうにした。
「ジョヴァンナ嬢からだよ」
「っ、!?」
「あそこの侍女が、公爵家の人たちにバレないように届けるのに時間がかかったみたいだ。書いたのは、ジョヴァンナ嬢が養子に行く前だと思う」
「え? 養子??」
ルチアは、目をぱちくりさせた。そんなことをルチアは聞いていない。ジョヴァンナのことは、ルチアにとって自分のことより重要なことだった。頭が痛いなんて言っていられない。
「それって……」
「君のせいじゃない。公爵家が体面を保つのに養子にすることにしただけだ」
「っ、」
(体面って、何で?? ジョヴァンナは何も悪くないのに)
王太子の言葉にルチアは今にも泣きそうな顔をしたが、アルドも不満そうにしていた。
「殿下が、姉さんには非がないって言ってくれてるのに全然聞いてくれてないのが、そもそも変なんだ。あれで、落ち着くどころか。酷くなるなんてありえない」
「そうだな。まるで、ルチアを悪者にしないと気が済まない者がいるようだ」
「……」
ルチアは、そんなことよりジョヴァンナからの手紙を手にして何とも言えない顔をしていた。
悪者にされることより、ジョヴァンナのことで頭がいっぱいになっていた。
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