私が、全てにおいて完璧な幼なじみの婚約をわざと台無しにした悪女……?そんなこと知りません。ただ、誤解されたくない人がいるだけです

珠宮さくら

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ジョヴァンナは、アルドからの手紙ですぐにルチアの見舞いに来た。

これまで、どんなところでも堂々としていたのが嘘のように所在なさげに義兄と現れた彼女にアルドが、誰だと問う一歩手前だったほど、知らない令嬢がそこにいた。


「ジョヴァンナ……?」
「ルチア」
「ジョヴァンナ!」


王宮で、やっと熱が下がったルチアは幼なじみがいるのに夢を見ているのかと思っていたが、本物だとわかるや嬉しそうな顔をして、2人は抱きしめあった。

アルドが、見慣れない人だと思ったのが嘘のようにルチアは、幼なじみのことを勘違いしなかった。おや、夢だと思ったのも勘違いだが、別のものだ。


「ジョヴァンナ。ごめんなさい。私がちゃんとしていなきったから、嫌な思いさせてしまったわ」
「あなたのせいじゃないわ。私と同じ名前の令嬢なのに勘違いした。あの子息が悪いのよ」


そして、黒幕がいたせいだとはジョヴァンナは言わなかった。

そこから、色んな話を幼なじみ同士はしたが、ジョヴァンナは仕返しをするために戻って来ているなんて微塵も感じさせないほど和やかにしつつ、義兄のことをルチアに紹介した。


「ジョヴァンナ」
「何かしら?」
「とっても素敵なお兄様ね」


目をキラキラとさせてルチアは、そんなことを言ったことで、王太子とアルドがギロッと睨むことになった。

それこそ、ルチアたちの対面に義兄がいるのなら、自分たちもいると言い出した2人は居心地の悪さを覚えていたはずが、今は凄い顔をしていた。

そんな視線に気づいていないかのようにジョヴァンナの義兄はルチアの頭を撫でた。怖いもの知らずと言われるが、本当にその程度、怖いうちに入らないだけだ。


「2人は本物の姉妹みたいだな」


ルチアのみならず、ジョヴァンナの頭も撫でながら、そんなことを言った。ジョヴァンナがされるがままなのも珍しかったし、甘えているのも珍しい。

姉妹と言う響きにルチアは、ジョヴァンナと顔を合わせて、2人はそっくりな顔をして目を輝かせた。


「素敵な響き」
「そうね。姉妹になれたら、素敵ね。でも、お義兄様には素敵な婚約者がいるのよ」
「こんなに素敵なのだもの。いない方がおかしいわ」
「……本当に可愛いな。婚約者も連れて来たらよかったな」


3人がいたら、目の保養になったかのようにしていた。婚約者が喜ぶのが見られたのにととても残念そうにしていた。

そんなことを言いつつ、チラッとアルドを見た。それにアルドは、睨み返していた。


「まぁ、私は婚約しているが、ルチア嬢の弟はまだフリーだろ? ジョヴァンナなんて、どうだ? そしたら、晴れて義姉妹になれるんじゃないか?」
「っ、」


そう来たかと王太子は思った。本命がいるはずのジョヴァンナが何か言うかと思えば、言いよどんで狼狽えた。

そんなジョヴァンナのことを見ていなかったルチアは、弟のことをじっと見ていた。


「アルド」
「……そんな顔しないでよ。ジョヴァンナ嬢だって、私みたいな年下なんて眼中にないって」
「そんなことないわ!」
「……」
「む、むしろ、私みたいな年上は、嫌よね」
「……別に嫌ではないけど」
「っ、」


何やら良い感じにまとまりそうなことにルチアは、嬉しそうにしていた。

ジョヴァンナは顔を赤くさせて、ルチアに益々抱きついていた。するとぽつりと呟いた。


「……私ばっかり幸せになるなんてできないわ」
「ジョヴァンナ?」


あまりに小さくて聞こえなかった。ルチアは、どうしたのかと思っていた。


「ルチアにも、素敵な婚約者が必要よ」
「私は、こんなにもみんなに迷惑かけて、騒がせてしまったもの。両親にも、アルドにも迷惑かけてしまったし、修道院にでも……」
「「駄目だ!」」
「っ、」

王太子とアルドが、そう言った。ジョヴァンナは、それを言った途端、眉をこれでもかと顰めた。

それをジョヴァンナの義兄は面白そうに見ていた。


「姉さんが、そんなことする必要ない」
「でも」
「でもじゃない。そんなことさせない」
「そうだ。そんなことされたら、私が婚約できなくなる」
「へ?」
「あ、いや、今のは……」


つい、ポロッと王太子が言ったことで、きょとんとした顔をしたルチアは、その後、頭で理解した後は顔を真っ赤にさせた。

王太子も、負けず劣らず顔を赤くしていた。


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