私が、全てにおいて完璧な幼なじみの婚約をわざと台無しにした悪女……?そんなこと知りません。ただ、誤解されたくない人がいるだけです

珠宮さくら

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(王太子視点)


あんなことを言うつもりはなかった。ジョヴァンナの本命が誰なのかがわかって、あの場の雰囲気に流されてしまっただけだ。

あの雨の中で、出会った日のことを今も覚えている。涙した彼女も記憶に焼き付いて離れることはなかった。

それが、ジョヴァンナを見た途端、嬉しそうにしているのだ。その笑顔をずっと見ていたくなる。

私に笑いかけてほしい。隣に居続けてほしい。

そんなことを考えていたから、ポロッと言うつもりがないことを言ってしまった。

そもそも、ルチアがあんなことを言うのが悪いんだ。


「私は、こんなにもみんなに迷惑かけて、騒がせてしまったもの。両親にも、アルドにも迷惑かけてしまったし、修道院にでも……」
「「駄目だ!」」
「っ、」

私とアルドが、思わずそう言っていた。ジョヴァンナは、それを言った途端、眉をこれでもかと顰めていたし、ジョヴァンナの義兄は面白そうにそれを見ていたが、そんなの知ったことじゃない。

修道院になんて行かせられるわけがない。


「姉さんが、そんなことする必要ない」
「でも」
「でもじゃない。そんなことさせない」


アルドの言う通りだ。それにそんなことされたら、私は困る。


「そうだ。そんなことされたら、私が婚約できなくなる」
「へ?」


ルチアが、きょとんとした顔をして、私を見た。それすら可愛いなと思ってしまったが、それどころではない。

ルチアだけでなくて、一斉に私を見ている視線を感じるが、そんなことはどうでもいい。……というか。そんなに見ないでほしい。ルチアの顔が可愛すぎる。


「あ、いや、今のは……」


つい、ポロッと言ったことで、きょとんとした顔をしたルチアは、本当に何度も言うが可愛かった。

その後、頭で何を言われたのかを理解したルチアは
顔を真っ赤にさせた。

それも可愛かったが、悠長にしていられなかったのは、聞かせるつもりのないことを口にしたからにほかならない。

負けず劣らず顔が赤くなっているだろう。あぁ、こんなことになるなんて思わなかった。

というか。ジョヴァンナの義兄の生暖かい目が一番腹が立ってならなかった。


「落ち込むな。ルチア嬢の幸せをジョヴァンナが願っているからな。ついでで良ければ手を貸す」
「……」


ついでなんてことを王太子の私に平然と言う子息に会ったことがなかった。


「……」
「そんなに悩むなよ。嫌なら何もしない」
「……む」
「ん?」
「……頼めるか?」
「なんだ。いいぞ。ついででよければだが」
「あぁ、それでいい」


不本意だが頼んだら、安心感が半端なかった。ジョヴァンナやルチアが、懐くのも無理はないと思ってしまった。

文武両道で何でも努力で道を切り開いてきた私が、頼る相手としては悪くなかったのは確かだ。

逆に敵になったら、ジョヴァンナと大差なさそうに思えるのは、気のせいであってほしいところだ。


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