私が、全てにおいて完璧な幼なじみの婚約をわざと台無しにした悪女……?そんなこと知りません。ただ、誤解されたくない人がいるだけです

珠宮さくら

文字の大きさ
18 / 18

18

しおりを挟む

そんな風に元婚約者の令嬢が勘当されて、全てが終わったかのようにジョヴァンナの兄は思った。兄のみならず、公爵夫妻も似たりよったりだった。


「ジョヴァンナ。戻って来ていいんだぞ」
「巻き込まれただけなのだもの。辛かったわね」
「……」


公爵夫妻である実の両親にそんなことを言われていて、ジョヴァンナは冷めた目をしていた。話があると呼ばれたが、それに付き合う義理はジョヴァンナにはなかったのだが、これが最後だと思って会うことにした。


「戻るも何も、そちらとは縁を切ってありますので、今後はそんな話は聞きたくありません。二度となさらないでください」
「ジョヴァンナ。意地になるな」


ジョヴァンナの実の兄は、妹が意地になっていると言うのにジョヴァンナは笑いたくなった。


「意地になっているのは、そちらでしょ。今更、私が戻って立て直す手伝いなんてする気はありません」


そう言うとジョヴァンナのことを怒鳴りつけて来たが、義兄と婚約者となったアルドが、そんな公爵家に裏でやり返したのは、この後だった。

密かに心配して、どうなるかを見守っていた2人は、謝罪する気もない公爵家に激怒した。

養子に出しただけで飽き足らず、これからも利用する気でいるのにそんな気が起こらないようにした。

公爵家に嫁ごうと思うような令嬢は中々現れることはなかったのも、そういうことだ。

もちろん、エルマンノの家も、エルマンノのことをそのままにしておいたら、まずいと思ったのは、ルチアが王太子の婚約者になってからだった。それですら遅いのだが、まだ間に合うと本気で思っていた。

息子を勘当して、全力でルチアに媚を売ろうとしたが、そんなのをルチアに近づけるなんて王太子が許さなかった。

他にも、ルチアに目に見えて酷いことをしていた令嬢たちも何をしていたかを家族に知られることになったのは、苦情と抗議がなされたからだった。

前までならスルーしていたが、王太子が怒っているとわかって、娘を見限る者ばかりだった。

家の今後のことを考えていたなら、王太子が言ったことで終わらせておけばよかったのだが、ジョヴァンナのことを幼なじみと言い、唯一の友達だと言い合うルチアのことを妬ましく思っていたのもあり、ルチアがいなくなれば、ジョヴァンナが孤立して、王太子との婚約を数日で解消したのを散々笑えると思ってのことだった。

そんなジョヴァンナがいなくなり、新しい婚約者になる者が選ばれることになる。そうなるのは、ジョヴァンナがいなくなれば自分しかいないと思っている令嬢たちが、これまでジョヴァンナへの鬱憤を晴らすのにルチアを利用した結果が、あんな嫌がらせになって止まらなくなるとは、誰も思っていなかった。

矛先をルチアに向けたのは、ジョヴァンナみたいな完璧な令嬢を馬鹿にするほどの令嬢なのかと思われると立ち直れないと思ってのことだ。

それとルチアなら勝てると思っていたことも大きかったが、そんな勝てると思っていたルチアが王太子に溺愛されることになるとは誰も思わなかった。


「そんな、どうして、あの令嬢が選ばれるのよ」
「本当にそうよね」


勘当されはしないが、婚約が台無しになった令嬢たちは、ルチアが婚約者に選ばれたことが癪でならなくて、グチグチ言うのをやめられない令嬢が幸せになることもなかった。


「懲りない人たちね」
「謝罪なんて、する気もない人たちですからね。悪いとは本気で思っていないのは明らかでしょう」


ジョヴァンナは、アルドと一緒になって、ルチアのことを悪く言い続けるを令嬢に仕返しするのをやめることはなかった。

その頃には、ジョヴァンナの義兄はとっくに国に帰っていた。ジョヴァンナは花嫁修業が必要だからとアルドたちの家に住んでいた。

日に日にそっくりになっていくアルドとジョヴァンナが何を話し合っているかなんてルチアが、知ることはなかっとた。

いや、その内容なんてどうでもよかった。


(ふふっ、本当に仲良しね)


ルチアは、幼なじみと弟がくっついて話しているのを見て、そんなことを思うばかりだった。

それこそ、ルチアの周りでルチアに対して色々とやっていた人たちがいなくなっていっていることにすら気づいていなかった。

それも、そのはず、元々ルチアにとってはどうでもよかったのだ。

ジョヴァンナに嫌われさえしなければ、他はどうでもよかった。いや、弟や両親は、どうでもよくはなかったが、ジョヴァンナに敵うことはなかった。

今は婚約者やら、ジョヴァンナの義理の兄やらとどうでもよくない者もたくさん増えたが、それでもジョヴァンナには敵わない。

ルチアの世界は、ジョヴァンナがいることで成り立っていると言っても大袈裟ではない。

そんな偏りきった世界で生きているルチアのことを溺愛する王太子のみならず、彼女のことを愛してやまない人たちによって、仕返しされることになった面々はたまったものではなかったはずだ。

それでも、謝罪をすることはなかったのは、口先だけの謝罪など意味をなさないからだ。そんなことで、許す面々ではなかった。

ルチア本人が、何とも思っていなくとも。

ルチアは王太子妃となる勉強に追われ、長らく休んでいた授業の勉強にも追われて、パニックになっている間に色々と片付いていったのにも、気づくことはなかったほどだ。


「……あれ? なんか、ありましたか?」
「ん? いや、何もないぞ」
「??」


王太子は、何でもないとルチアに微笑んだ。

ジョヴァンナが、実家と色々あって二度と戻る気はないと話し合いが終わっていることも、ルチアが知ることはなかった。


「姉さんにバレずに終わりましたね」
「そうね。あそこまで、気づかれないままで終わるとは思わなかったわ」


アルドは、流石にバレるかと思っていたが、そんなことはないところに脱力していた。

ジョヴァンナは、そんなルチアにらしいと思っていた。2人がくっついて話す話題の殆どがルチアだったりするが、この2人はそれでよかった。


「まぁ、結果からすれば、おさまるところにおさまった感じですね」
「……そ、そうね」


ジョヴァンナは、アルドに手を握られて吃って、頬を赤らめていた。王太子と対峙しても、堂々としていられたのが嘘のようにアルドの前では、恋する乙女のようになっていた。


「ルチア。どうした?」
「いえ、幼なじみと弟が、幸せそうだと思って」


そんな2人を見て、ルチアは満面の笑顔を見せた。その笑顔に王太子は、ドキマギしていた。

泣き顔にも慌てふためくが、ルチアの笑顔に翻弄される王太子も、色んなところで目撃されることになった。

そんな風に仲睦まじくしている姿が色んなところで目撃された。

ルチアの笑顔が曇るたび、王太子やジョヴァンナ、アルドが般若のような顔や殺気を放つため、ルチアに嫌がらせをしようなんて強者が現れることはなかった。

何より、そんなジョヴァンナたちもルチアの心のうちを把握しきれていなかったことを知らないまま、幸せな人生を送ることになった。


しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜

よどら文鳥
恋愛
 伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。  二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。  だがある日。  王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。  ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。  レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。  ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。  もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。  そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。  だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。  それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……? ※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。 ※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~

桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」 ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言? ◆本編◆ 婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。 物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。 そして攻略者達の後日談の三部作です。 ◆番外編◆ 番外編を随時更新しています。 全てタイトルの人物が主役となっています。 ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。 なろう様にも掲載中です。

我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。 そこで目撃してしまったのだ。 婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。 よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!  長くなって来たので長編に変更しました。

ハーレムエンドを迎えましたが、ヒロインは誰を選ぶんでしょうね?

榎夜
恋愛
乙女ゲーム『青の貴族達』はハーレムエンドを迎えました。 じゃあ、その後のヒロイン達はどうなるんでしょうね?

それは報われない恋のはずだった

ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう? 私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。 それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。 忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。 「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」 主人公 カミラ・フォーテール 異母妹 リリア・フォーテール

彼の妹にキレそう。信頼していた彼にも裏切られて婚約破棄を決意。

佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢イブリン・キュスティーヌは男爵令息のホーク・ウィンベルドと婚約した。 好きな人と結ばれる喜びに震え幸せの絶頂を感じ、周りの景色も明るく見え笑顔が輝く。 彼には妹のフランソワがいる。兄のホークのことが異常に好き過ぎて婚約したイブリンに嫌がらせをしてくる。 最初はホークもフランソワを説教していたが、この頃は妹の肩を持つようになって彼だけは味方だと思っていたのに助けてくれない。 実はずっと前から二人はできていたことを知り衝撃を受ける。

【完結】知らないですか、仏の顔も三度まででしてよ?

詩河とんぼ
恋愛
 侯爵令嬢のレイラ・ローニャは、筆頭公爵家子息のブラント・ガルシアと婚約を結んだ関係で仲も良好であった。しかし、二人が学園に入学して一年たったころ突如としてその関係は終わりを告げる。  ティアラ・ナルフィン男爵令嬢はブラントだけでなく沢山の生徒•教師を味方にし、まるで学園の女王様のようになっていた。  レイラはそれを第二王子のルシウス・ハインリッヒと一緒に解決しようと試みる。    沢山のお気に入り登録、ありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡  小説家になろう様でも投稿させていただいております。

処理中です...