姉の厄介さは叔母譲りでしたが、嘘のようにあっさりと私の人生からいなくなりました

珠宮さくら

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長い冬が終わりを迎え、もうそろそろ夏が訪れようとし始めた頃のことだ。

学年が上がり、イヴォンヌ・ロカンクールは選択授業を多く取ったことで、他の令嬢よりも忙しくしていた。でも、選択した授業はどれも楽しく、難しいところがあっても、取ったことを後悔してはいない。

そこをイヴォンヌは後悔していないが、問題というか。厄介なことが増えてきた。そこさえなければ、充実した日々だったはずなのだが、何でこんなことになっているのか。イヴォンヌにはさっぱりわからなかった。

選択授業を詰め込んでいるため、帰宅するのも遅くなることがよくあったイヴォンヌは、今日もその厄介なことが起こっていることに眉を顰めずにはいられなかった。


「何、これ、ダサいわね」
「……」


さも当たり前のようにマドレーヌは届いたものを開けて、そんなことを言っていた。しかも、開け方が酷かった。丁寧に開けるなんてことはせずにビリビリと破いて中のものをぞんざいに出して、そんなことを言ったのだ。

イヴォンヌが絶句するのは、その開け方だけのせいではない。このマドレーヌは、自分宛ての包装にも、いつもこうだ。この荷物だからしているわけではないが、イヴォンヌはこの開け方が好きではなかった。

特に嫌な気分になっているのは、別のことが大きかった。

それこそ、宛名を見ればわかりそうなものだが、見もせずにマドレーヌを開けて、ボロクソに言うのはいつものこととなっている。

宛名には、イヴォンヌ様宛てとちゃんと書いてある。イヴォンヌとは、マドレーヌの妹の名前だ。

つまり、姉が妹に届いた物を勝手に開封しているのだ。しかも、開けただけでなくて、その品物の扱いも雑なのだ。

箱から出して、散々に言い、床に放り投げたり、ソファに投げたり、イヴォンヌに投げて寄越したり……。マドレーヌは、そんなことをするのだ。

今回のは、よほど気に入らなかったらしく、床に放り投げられた。イヴォンヌは、これが一番嫌だった。


「はぁ、趣味が悪すぎて着られやしないわ。公爵家の跡継ぎが、こんなのしか寄越せないなんて信じられないわ」
「……」


おかしなことを言っている。婚約者は、イヴォンヌに贈ってくれているというのにこんなことをわざわざ、それも丁寧に毎回言うのだ。

別にマドレーヌに着てくれと送って来ているわけではないというのに何を言っているのかとイヴォンヌは思うことはなかった。

残念ながら、イヴォンヌはそれを毎回聞いていなかった。投げ捨てられた贈り物を見つめて、俯いて泣きそうになっていて、それを聞いていなかった。

使用人は、イヴォンヌをいつも心配していた。マドレーヌに何か言うと使用人のみならず、イヴォンヌに倍に返って来るのだ。ヒステリックになれば、暴れ出して怪我をさせられることがあるため、使用人たちは暴れられる方が困ると黙っていたが、みんな腸が煮えくり返りそうになっていた。

他の家族が不在の間に妹をいびっていると思っていた。

だが、そんなことになっているのにマドレーヌは全く気づくことなく、ケロッとした顔をして……。


「まぁ、いいわ。あなたの好きにすればいいわ」
「……」


そう言って、マドレーヌは興味をなくしたようにいなくなった。

何度も言うが、好きにするのは当たり前だ。イヴォンヌ宛ての物なのだ。

それをイヴォンヌは、よく聞いていない。ショックすぎて頭に入らないまま、イヴォンヌは贈り物を拾い上げた。

使用人たちは、顔を見合わせていた。どう慰めようかとしていた。

しばらくして、イヴォンヌは気を取り直すように使用人にこう尋ねた。それは、イヴォンヌには珍しいことではあった。


「……お姉様の趣味に合わないのなら、素敵ってことよね?」


姉の嫌味のあとで、そんなことを言うのは、イヴォンヌにしては珍しいことだった。マドレーヌは、最新のファッションだと言って、イヴォンヌには全くわからない格好をするところがあり、そんな姉の趣味と真逆だとこの国では、流行るのだ。

おかしな話だが、マドレーヌにわざわざ、そう言うのを聞く令嬢がいるくらいだ。そこから、マドレーヌはファッションのことを何かと周りに聞かれるから、センスがあると思ってるところがあるようで、そんなところが親戚にもいたりする。

その親戚も、若い頃から今もマドレーヌと同じように周りにファッションのことを聞かれて、未だに勘違いしているようだ。

流石にマドレーヌは、そんな大人にならないと思いたいが、そっくりらしいから変わらないかもしれない。

使用人たちは、ここぞとばかりに言った。


「イヴォンヌ様にとてもお似合いになるかと」
「イヴォンヌ様が、こんな素敵な物をお召になれば、また流行りますよ」
「そうですとも、最近はずっとイヴォンヌ様のお召し物を若い令嬢たちは気にかけているくらいですし」
「……」


流行りになることに全く興味はないが、婚約者が選んだものを褒められるのは、嬉しい。……そう、嬉しいはずなのだが、どうにもイヴォンヌは疲れた顔をしていた。


「そう。……お姉様に色々言われた後だと自信がなくなるわ」


嬉しいはずの婚約者からの贈り物なのに一番に開けることが未だにできていない。それも、イヴォンヌにとってはショックなことだった。

これまでも、妹のものを取り上げて開封したりする姉を両親はよく怒っていた。一番上の兄も、両親以上に激怒していたが、マドレーヌに通じたことはない。

イヴォンヌも、最初の頃は姉に楽しみを奪われて、よく泣いていた。でも、泣いても、怒っても、姉は何もわかってくれないのだ。

そして、婚約してからは益々酷くなった。

使用人たちも、あれこれと頑張ってくれているが、開けさせないとその後が怖い状態になり始めていて、今やイヴォンヌは諦めている。

諦めているはずだが、そんなことを諦めなければならないイヴォンヌのことを気の毒そうにしながら、心配そうに見ているしかできない者しか、今はこの屋敷にいない。

両親は、遠縁の結婚式に出席するのに留守にしているし、頼もしい味方の兄は留学していて、しばらく戻って来ない。

そのため、この屋敷には姉妹しかいないのだ。

だから、選択授業を多めに取ったのもあったが、そのせいでこんなことになるとは思いもしなかった。


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