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しおりを挟むシャーリー・オールポートは、友達の令嬢とのんびりとお茶をしていた。
こんな風にのんびりするのは久しぶりだった。ちょっと前に突然、婚約破棄をすると言い出した令嬢がいて、何が不満なのかはわからないが、相手の子息と揉めに揉めていた。学園の中で、大声で口論していて、それを耳にするたび、首を傾げる者やまた始まったのかと逃げる者ばかりいて各々が大変な目にあっていた。
それが無事と言っていいのかはわからないが、破棄となったようで突然破棄したいと言われた子息は、もはや元婚約者の令嬢のことを他人のようにして過ごしていた。
それによって、やっと前のような状態となって、みんなホッとしていた。シャーリーも、その1人だった。
深く何があったかを聞いてはいないが、破棄するのに全く関係ないことで言い争うのを聞いていて楽しいわけがない。
シャーリーは、ただ傍観していたわけではない。最初に何があったのかと聞いたが……。
「これは、彼と私のことだから」
「でも……」
相手の子息が納得できていないのは明らかで、事情をできれば聞きたかったが、彼女が答えてくれることはなかった。
それでも、何があったのかと思わせるような口論に発展して、このままにしておけないとシャーリーは話しかけると……。
「あなたに関係ないことよ」
「……」
そんな風に言われてしまってからは、ほっとくしかなかった。
それこそ、シャーリーだけでなくて周りにいた令嬢たちも、そんな風に突き放したその令嬢に不満が爆発したのは、すぐだった。
「あんな言い方するなんて、信じられないわ」
「学園で言い争うのは結構ですけど、あんな大声で言い争っていたら聞きたくなくとも不愉快になる人がいるのもわかってないみたいですね」
「……まぁ、本人がほっといてほしいのなら、そうするしかないわ。そういう令嬢だから」
シャーリーが、首を突っ込んでも無駄だなと判断してからは更に酷くなったが、それに何か言うことも、することもなかった。
それが、いつまで続くのかと思っていた。思いのほか、長い言い争いに学園中がうんざりしていた。
その頃の話題は、婚約破棄をしたがっている理由だった。元婚約者の子息が何かしたわけではなく、一方的にその話をされて理由を聞こうにも破棄してくれればいいみたいに言われてばかりで、そこから一方的な不満をぶつけられ、それに子息が激怒したことで口論になったようだ。
そもそも、不満があるとしたら子息の方だろうと大半が思っていた。更には、その子息と破棄したら次なんてないだろうにと言う者が多かったが、令嬢は破棄となって機嫌よくしていた。
元婚約者の子息も破棄となってから、スッキリした顔をしている。たくさんの人たちが、大変だったとねぎらっていたし、破棄となって半月もせずに新しい婚約者が決まって、今は幸せそうにしている。
まぁ、よくわからないが幸せそうな子息と新しい婚約者がみんなに祝福され、暖かく見守られている状態となっていた。
「それにしても、お似合いですよね」
「えぇ、心からそう思うわ」
元婚約者の令嬢より、うんと素敵な令嬢と婚約したのだ。お似合いでないはずがない。
だが、シャーリーと一緒にいる令嬢たちは、言葉を選んでそう言っていた。和やかな話題で楽しくしていた。
そこに現れたのは、シャーリーの親友のアンゼリカ・バークロンビーだった。その姿が見えた途端、シャーリーと一緒にいた令嬢たちの顔色が変化した。何を隠そう婚約破棄をした令嬢とは、このアンゼリカのことなのだ。
こんなのとシャーリーは昔から、なぜか親友となっていた。シャーリーも、いつからだったかわからないが親友だとしつこく言われ続けて、そう言う肩書きがついただけな気もしなくもないが、シャーリーはそこを深く掘り下げていなかった。
アンゼリカとの出会いは、10年ほどになるだろうか。彼女の母親は元公爵令嬢らしく、それが自慢の女の子だった。……今も、それが自慢のようだが。
彼女自身は伯爵令嬢で、シャーリーは侯爵令嬢だ。昔から、母親が元公爵令嬢だから、自分はシャーリーよりも上なのだと言わんばかりに好き勝手なことをしていた。それを会うたびに何度も親友と言われ続けていて、そういうものだとシャーリーは刷り込まれてしまっていて、ほうぼうでシャーリーの親友を傘にきて好き勝手なことをしているようだが、それもそういうものになってしまっていた。
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