自己中すぎる親友の勘違いに巻き込まれ、姉妹の絆がより一層深まったからこそ、お互いが試練に立ち向かえた気がします

珠宮さくら

文字の大きさ
7 / 24

しおりを挟む

眠り続けるシャーリーの側にエイプリルがいた時に目を覚ました。それを側にいる者は、どれほど待ちわびたことか。


「シャーリー。起きた?」
「……お姉様?」
「えぇ、おはよう」
「おはよう、ございます」


シャーリーが目を覚ました時の姉は、いつもの姉だった。いや、寝起きでいつもと同じだと思っていただけかも知れないが、無理をしている顔ではなかったはずだ。

寝すぎた感じのするシャーリーは、ぼーっとしていた。その間にエイプリルは側にいたメイドに知らせを頼んでいたのも見聞きしていなかった。

ただ、シャーリーは目が覚めて一番に姉がいたのが嬉しいと思ったが、なぜ付き添っていたのかがわからなかった。

起きたと知らせを聞いた両親は、またもすぐに駆けつけた。それだけ心配していたのだが、その光景はエイプリルの時によく見ているもので、シャーリーは自分がされる側になっていることに思考が追いつかなかった。

寝起きなのに寝たりないような変な感覚にシャーリーは思考がぼんやりしたままだった。


「シャーリー! あぁ、よかった」


シャーリーが起きているのを見て、母親は抱きついた。それはエイプリルによくしていた。


「気分は?」
「……眠たいです」


母に抱きつかれながら、父がそう聞いてきたので、そう答えた。するとエイプリルが笑った。

「ふふっ、シャーリーはたくさん頑張っていたから、ゆっくりした方がいいみたいね」
「そうみたいだな。シャーリー、ゆっくりすればいい」
「そうね。でも、眠る前に何か少し食べては、どうかしら?」


シャーリーが、ぼーっとしているのは珍しいことだった。両親たちは、それを心配していた。

目が覚めたと聞いて医者が診察に来たが、その頃にはシャーリーが好きな果物を食べて、またうとうとしていた。医者は、好きなようにさせて問題ないと帰って行った。

そして、また眠り始めた頃にジェレマイアが立ち寄った。


「シャーリー嬢が起きたのか?」
「はい。でも、寝たりないらしくて、また寝てしまいました」
「……」


3日寝ていたのに寝たりないと言うエイプリルにジェレマイアは、何とも言えない顔をしていた。


「頑張り屋さんだから、無理していたのでしょうね」


エイプリルは、そんなことを呟いた。病弱で学園には通うことがままならない分をシャーリーが頑張っていることを姉は知っていた。

隣国のように自宅で課題をこなせば単位を取れて卒業もできるシステムが、この国にないせいで色々と言われているのも知っていたが、そのことをこの家で話すことはなかった。

ジェレマイアは、それを聞いて……。


「君に似ているな」
「え?」
「気づいていないのか? シャーリー嬢は、君に似ている。君も、頑張り屋だ」
「私は……」


そこで父親が、エイプリルたちに声をかけた。


「あの令嬢が、両親と一緒に謝罪に来た」
「……今更ですか?」
「そうだ。お前たちも、会うか?」
「会います」


エイプリルは、父の言葉に何を今更と思っていた。3日がすぎていた。シャーリーたちの父親は、それを聞いた次の日には、苦情と抗議をしていて、今日辺りにジェレマイアの家から苦情と抗議がなされた。

隣国の公爵からの苦情と抗議にアンゼリカの家もようやく動く気になったようだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編】誰も幸せになんかなれない~悪役令嬢の終末~

真辺わ人
恋愛
私は前世の記憶を持つ悪役令嬢。 自分が愛する人に裏切られて殺される未来を知っている。 回避したいけれど回避できなかったらどうしたらいいの? *後編投稿済み。これにて完結です。 *ハピエンではないので注意。

悪役令嬢は断罪されない

竜鳴躍
恋愛
卒業パーティの日。 王太子マクシミリアン=フォン=レッドキングダムは、婚約者である公爵令嬢のミレニア=ブルー=メロディア公爵令嬢の前に立つ。 私は、ミレニア様とお友達の地味で平凡な伯爵令嬢。ミレニアさまが悪役令嬢ですって?ひどいわ、ミレニアさまはそんな方ではないのに!! だが彼は、悪役令嬢を断罪ーーーーーーーーーーしなかった。 おや?王太子と悪役令嬢の様子がおかしいようです。 2021.8.14 順位が上がってきて驚いでいます。うれしいです。ありがとうございます! →続編作りました。ミレニアと騎士団長の娘と王太子とマリーの息子のお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/114529751 →王太子とマリーの息子とミレニアと騎士団長の娘の話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/449536459

姉の八つ当たりの対象の持ち主となっていましたが、その理由まで深く考えていなかったせいで、色々な誤解が起こっていたようです

珠宮さくら
恋愛
オルテンシア・バロワンは、幼い頃から迷惑していることがあった。それは、姉がオルテンシアが持っているものに何かあると八つ当たりすることだった。 そんなことをするのは、いつも妹であるオルテンシアの持ちものにだけで、そこまで嫌われているのかと思っていたのだが……。

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~

桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」 ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言? ◆本編◆ 婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。 物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。 そして攻略者達の後日談の三部作です。 ◆番外編◆ 番外編を随時更新しています。 全てタイトルの人物が主役となっています。 ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。 なろう様にも掲載中です。

悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。 ※初めての悪役令嬢物です。

私の感情が行方不明になったのは、母を亡くした悲しみと別け隔てない婚約者の優しさからだと思っていましたが、ある人の殺意が強かったようです

珠宮さくら
恋愛
ヴィルジ国に生まれたアデライードは、行き交う街の人たちの笑顔を見て元気になるような王女だったが、そんな彼女が笑わなくなったのは、大切な人を亡くしてからだった。 そんな彼女と婚約したのは、この国で将来を有望視されている子息で誰にでも優しくて別け隔てのない人だったのだが、彼の想い人は別にいたのをアデライードは知っていた。 でも、どうにも何もする気が起きずにいた。その原因が、他にちゃんとあったこアデライードが知るまでが大変だった。

愛に死に、愛に生きる

玉響なつめ
恋愛
とある王国で、国王の側室が一人、下賜された。 その側室は嫁ぐ前から国王に恋い焦がれ、苛烈なまでの一途な愛を捧げていた。 下賜された男は、そんな彼女を国王の傍らで見てきた。 そんな夫婦の物語。 ※夫視点・妻視点となりますが温度差が激しいです。 ※小説家になろうとカクヨムにも掲載しています。

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

処理中です...