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しおりを挟むオールポート侯爵は、愛してやまない娘たちにじっと見られていた。一緒に怒られるのは初めてだと言い、怒られるのを期待した目で見られていた。これで、どう怒れと言うのか。そんな顔をしていた。このオールポート侯爵も、娘たちに弱かった。
「……」
何とも言えない顔をして固まる父親にこのままなら怒られずに済むかと思っていたら……。
「あなたたち、お父様を困らせては駄目よ」
「「ごめんなさい」」
母は、そのまま見過ごす気はなかったようだ。それでも、シャーリーたちは楽しそうにしていて、母親がため息をついた。
「あなた。人に手を上げるのを見過ごせませんわ」
「そ、そうだな」
仕方なく母の方が言葉にした。父に同意を求め続けた。
「それを許可する姉も、同罪ですよね? しかも、わざと転ばせるなんて」
「あー、いや、勝手に転んだように見えたぞ。それにお互い様であって……」
それでも、父は娘たちの味方をしようとした。するとそれに気づいた母が眉を顰めた。
「あの家族と同じようになかったことにする気ですか? 責任を取らせなくては、あんなのと一緒にさせるわけにはいきません」
「だが、反省しているのなら、それで……」
「この顔のどこに反省が見られると?」
「……」
そんなやり取りを見聞きしていたジェレマイアは、最初は微笑ましそうにしていた。
そこから、夫婦喧嘩のようになってしまい、それに姉妹が慌てて自分たちの罰を考えた。
「大変。夫婦喧嘩になってしまったわ」
「お姉様。こういう時って、外出禁止とかでしょうか?」
「そんなことを言ったら、私、いつも罰を受けているようなものになってしまうわ」
「……どうしましょう。あ、おやつ抜き?」
「それは、辛いわね」
「夕食のデザート抜きも、辛いですよね」
真剣に姉妹で罰を考えているのだが、その罰が可愛らしいものにどうしてもなってしまっていて、それを見ていた使用人たちは微笑ましそうにしつつ、オールポート侯爵夫妻の喧嘩を心配そうに見ていた。
「デザート抜きなんて、罰が重すぎるわ。それに2人とも、痩せすぎているのだもの、食事はきちんと食べなくては駄目よ」
姉妹で考えたのを両親に言うとそう言ったのは、母親だった。
それに父は何とも言えない顔をしたが、母は至って真面目で真剣な目をしていたから、余計なことは言わなかった。
そこまでになって、オールポート侯爵はジェレマイアに縋るような目を向けた。埒が明かないと思ってのことだ。妻だけでなく、娘たちからも色々言われ始めて、困り果てたのだ。
ジェレマイアは、義父になる人に申し訳なさそうにしたが、オールポート侯爵家の女性陣を敵に回すようなことはできなかった。
何より、婚約者のエイプリルに嫌われたら立ち直れない。更にエイプリルの大事な妹に嫌われても、大変なことになるのだ。そんな姉妹の母親に嫌われても大変なことになるのは目に見えている。
かと言って父親の方に嫌われても困ることになりそうだが、オールポート侯爵家の女性陣を味方につけていたら、何とかなりそうでやはり侯爵に味方するよりも女性陣の味方の方がジェレマイアにはいいこと尽くしに思えていた。
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