自己中すぎる親友の勘違いに巻き込まれ、姉妹の絆がより一層深まったからこそ、お互いが試練に立ち向かえた気がします

珠宮さくら

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だが、そんなやり取りをしていたのが中断したのは、姉妹揃って熱を出すことになったからだ。

ジェレマイアは、ふと気づいた。話の矛先を意識的に変えるためにそうしたわけではない。無意識に2人の変化に気づいて声に出していた。


「2人共、顔が赤くないか?」
「「え?」」
「あら、本当だわ」
「熱か?」
「風邪かしら? ……大変だわ。2人共、おでこが熱いわ」
「すぐに医者を呼べ」
「はい」
「私としたことが、シャーリーはゆっくりしなくてはいけなかったのに。エイプリルだって、シャーリーを見ていたから、疲れていたのに。気が利かなかったわ」
「落ち着きなさい。ジェレマイア、エイプリルを部屋まで運んでくれ。私はシャーリーを運ぶ」
「はい」


姉妹揃って、歩けると言っても駄目だった。罰うんねんは有耶無耶になったまま、医者に再び呼ばれて今度は何事だと慌てて来たようだが……。


「仲良く熱を出すことないでしょうに。一体、何をしたんですか?」
「姉妹揃って叱ってもらおうとしただけよ」
「はい?」


それでわかるはずもなく、医者は目をパチクリさせていた。そんな顔を見たのは初めてで笑いそうになったが、心配そうに母がやって来たため、シャーリーは黙ることにした。


「先生。どうですか? 風邪? それとも、何か悪い病気?」
「あー、よほど仲がよいのか。姉妹揃って、知恵熱を出されたようです」
「……知恵熱?」
「そうです。やり慣れないことでもなさったのですか?」
「そうね。姉妹揃って反抗期にちょっとなったかしら」


母が、姉妹のやったことをちょっとした反抗期と表現したことにシャーリーは笑いそうになった。母からしたら、そう見えたようだ。

確かにあんなことをしたのは生まれて初めてだ。姉も、ここにいたらシャーリーと同じように驚いていたはずだ。

その話をこっそり部屋から抜け出して姉にその話をしたシャーリーは、母に見つかる前に部屋に戻ったりして、母にバレないように悪知恵だけはスキルアップしていった。

それによって、姉妹の仲は前より一段とよくなった。それに巻き込まれるように付き添っているメイドたちが焦っていたが、姉妹で楽しそうにするのをやめさせられなかったようで、共犯となってくれていた。

シャーリーは、学園を長らく休むことになったが、オールポート侯爵家で楽しく過ごしていた。

今までで一番姉と思う存分、遊んだ気になっていた。もしかするとそのせいで、知恵熱が下がらなかったのかも知れない。悪知恵を働かせるのに熱が上がったままになっていたのなら、心配してくれている両親や姉の婚約者に申し訳ない気持ちもなかったわけではない。

ある程度のところで、やめたことで熱は順調に落ち着いた。やはり知恵熱だったようだ。

そんな感じで熱が下がるまで学園を休むことになった。

診断は、やり慣れないことをしたことの知恵熱と医者に言われて姉妹揃って笑ってしまったが、母が娘たちの側にいようとしてくれて、笑っていられたのも最初だけだった。

申し訳ない気持ちになっても、熱が平熱に戻るのに色々やっていたせいで時間がかかってしまい、シャーリーはやり慣れないことをするものじゃないなと内心で苦笑したが、やったことに後悔を持つことはなかった。

心配していたのは、姉の体調のことだった。逆にエイプリルが心配したのは妹のことだった。

そんなオールポート侯爵家にジェレマイアは毎日来たかというと忙しいらしく、数日置きにやって来ていたようだ。体調不良の理由がわかっているのと知恵熱という診断に呆れているのかも知れない。

それにシャーリーは、姉の婚約がちょっと心配になってしまったが、来れない日は見舞いの品が届いていたらしく、姉の部屋が花屋のようになっていたのを見て杞憂だったと気づいたのは、しばらくしてからだった。

姉の婚約者がそんなことで姉への愛を冷めさせることはなかったのだ。それにホッとしながら、素敵な婚約者がいることが、羨ましくなってしまった。


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