12 / 24
12
しおりを挟む半月近く経ってからシャーリーが学園に行くとみんなに心配された。
「シャーリー様、もう、大丈夫なのですか?」
「えぇ、この通りよ。心配をかけて申し訳なかったわ」
「謝らないでください」
「そうですわ」
そう言いながら、アンゼリカに平手打ちをしたと言うのを彼女たちは知っていた。
ジェレマイアが話したとは思えなかったシャーリーは、不思議に思っていると……。
「本当に信じられないわ。見てよ。まだ、腫れているわ」
「……そう?」
「よく見てよ!」
「元々、そういう顔だったと思うけど?」
相手をするのも面倒だと言わんばかりにアンゼリカの話を聞いていた令嬢の1人がそう言うと周りが吹き出していた。
「な、何を言うのよ!!」
それを見ていたシャーリーとアンゼリカが目があった。その途端、こっちに来ようとしていたが、シャーリーは逃げも隠れもする気はなかった。
周りの令嬢が、逃げ腰になっていたのは、アンゼリカに捕まるとあぁして同じ話ばかりされていたからだろう。
だが、そこにジェレマイアが現れた。今日は、一緒に学園に来ていなかった。
「やぁ、シャーリー嬢。おはよう」
「おはようございます。ジェレマイア様」
アンゼリカは、それでも止まることなく、こっちに来た。シャーリーしか見えていないようだ。
「シャーリー!!」
「ご機嫌よう。伯爵令嬢」
「白々しい!」
「……」
ギャンギャンと喚き散らすのにシャーリーは、耳をふさぎたくなったが、ジェレマイアと一緒にいる男性を見つけて、そちらが気になっていた。
アンゼリカが何を言っているかなど聞いてもいなかった。ただ、直せと言った呼び捨てをやめていないことにイラッとしてしまったが、それは後だ。
「ジェレマイア。シャーリー嬢は、侯爵令嬢と言っていなかったか?」
「そう言いました」
ジェレマイアのことを呼び捨てにするほどのようだが、シャーリーは見かけたことがない男性に誰だろうかと思っていた。
「この令嬢は、礼儀を知らないようだな」
「はぁ? 失礼な男ね! どこの子息よ?!」
「君のような令嬢に答えたくない」
「なっ、」
その男性は、シャーリーの方を見てにっこりと微笑んだ。まるで、アンゼリカなどいないものとして話し始めたことにシャーリーより、側にいた令嬢たちが驚いていた。
「初めまして、ジェレマイアに君の話を聞いて会えるのを楽しみにしていたんだ。具合がよくなかったそうだけど、もう平気かい?」
「はい。よくなりました。あの、ジェレマイア様のご友人ですか?」
「うん。私の側近なのに留学して、中々戻って来ないから、私もこちらに来てしまった」
「……そうでしたか。名乗っていませんでした。シャーリー・オールポートと申します」
「おっと、私も失礼なことをしていた。ダレイオスだ。君のお姉さんにも挨拶したいんだ。具合が、姉妹揃って良くないと聞いていたから、街でぶらぶらしていたんだ。いいところだね」
どうやら、この方は留学しに来ていながら、お目当てのシャーリーがいないとわかってサボっていたようだ。
ジェレマイアは、それを聞きながら何とも言えない顔をして苦笑していた。こういう方のようだ。
78
あなたにおすすめの小説
【短編】誰も幸せになんかなれない~悪役令嬢の終末~
真辺わ人
恋愛
私は前世の記憶を持つ悪役令嬢。
自分が愛する人に裏切られて殺される未来を知っている。
回避したいけれど回避できなかったらどうしたらいいの?
*後編投稿済み。これにて完結です。
*ハピエンではないので注意。
悪役令嬢は断罪されない
竜鳴躍
恋愛
卒業パーティの日。
王太子マクシミリアン=フォン=レッドキングダムは、婚約者である公爵令嬢のミレニア=ブルー=メロディア公爵令嬢の前に立つ。
私は、ミレニア様とお友達の地味で平凡な伯爵令嬢。ミレニアさまが悪役令嬢ですって?ひどいわ、ミレニアさまはそんな方ではないのに!!
だが彼は、悪役令嬢を断罪ーーーーーーーーーーしなかった。
おや?王太子と悪役令嬢の様子がおかしいようです。
2021.8.14 順位が上がってきて驚いでいます。うれしいです。ありがとうございます!
→続編作りました。ミレニアと騎士団長の娘と王太子とマリーの息子のお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/114529751
→王太子とマリーの息子とミレニアと騎士団長の娘の話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/449536459
姉の八つ当たりの対象の持ち主となっていましたが、その理由まで深く考えていなかったせいで、色々な誤解が起こっていたようです
珠宮さくら
恋愛
オルテンシア・バロワンは、幼い頃から迷惑していることがあった。それは、姉がオルテンシアが持っているものに何かあると八つ当たりすることだった。
そんなことをするのは、いつも妹であるオルテンシアの持ちものにだけで、そこまで嫌われているのかと思っていたのだが……。
皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~
桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」
ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言?
◆本編◆
婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。
物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。
そして攻略者達の後日談の三部作です。
◆番外編◆
番外編を随時更新しています。
全てタイトルの人物が主役となっています。
ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。
なろう様にも掲載中です。
悪役令嬢が行方不明!?
mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。
※初めての悪役令嬢物です。
私の感情が行方不明になったのは、母を亡くした悲しみと別け隔てない婚約者の優しさからだと思っていましたが、ある人の殺意が強かったようです
珠宮さくら
恋愛
ヴィルジ国に生まれたアデライードは、行き交う街の人たちの笑顔を見て元気になるような王女だったが、そんな彼女が笑わなくなったのは、大切な人を亡くしてからだった。
そんな彼女と婚約したのは、この国で将来を有望視されている子息で誰にでも優しくて別け隔てのない人だったのだが、彼の想い人は別にいたのをアデライードは知っていた。
でも、どうにも何もする気が起きずにいた。その原因が、他にちゃんとあったこアデライードが知るまでが大変だった。
愛に死に、愛に生きる
玉響なつめ
恋愛
とある王国で、国王の側室が一人、下賜された。
その側室は嫁ぐ前から国王に恋い焦がれ、苛烈なまでの一途な愛を捧げていた。
下賜された男は、そんな彼女を国王の傍らで見てきた。
そんな夫婦の物語。
※夫視点・妻視点となりますが温度差が激しいです。
※小説家になろうとカクヨムにも掲載しています。
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる