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しおりを挟むシャーリーが王太子の婚約者となって、一番色々言って来たのは令嬢たちではなかった。
いや、令嬢たちも中々凄かったが、その程度はアンゼリカが喚き散らしていたのと似たりよったりで、シャーリーには大したダメージはなかった。
それ以上に凄い人物がシャーリーの悩みの種となっていた。
「ちょっと、聞いているの?」
「聞いています」
内容までは頭にいれていないが、シャーリーはそう答えていた。シャーリーにあれこれ言ってきて煩くしていたのは、王妃だった。
婚約させたいお気に入りの令嬢がいたらしく、それと会うこともしたがらない王太子が選んだシャーリーが気に入らなくて仕方がないようだ。
この王妃とアンゼリカとその母親の誰が一番面倒くさいかは悩ましいくらい似たりよったりだが、捕まったら困る相手は王妃がずば抜けている。
アンゼリカは、やり返せてスッキリしたが、王太子の母親にやり返すわけにはいかない。……やり返すにもシャーリーには、その力がない。
だからといって、王太子に助けを求めて、どうにかするのも癪に障っていた。やり返すなら、実力をつけてから、色々やられてきた仕返しをしてやりたい。自分の力でやりたいから、ズルズルと嫌がらせをされていた。
そんなことを考えていたせいで王妃が、お妃教育で忙しくしているシャーリーを呼び付けていても、必ず文句もなくやって来るシャーリーに王妃は勘違いしているようだ。そのせいで、図に乗っていくとは思いもしなかった。
ダレイオスは、ジェレマイアが亡くなってから散々付き合っていたらしく、やっと乗り越えて執務に精を出している王太子に王妃のことを相談する気には、どうしてもなれなかった。
それもあって、呼び付ける頻度は度を越し始めていた。それだけではない。嫌がらせも段々とエスカレートしてきていた。
それは、王妃だけでなく、王妃のお気に入りの夫人や令嬢から学園でも散々な目にあっていて、ストレスは溜め込む一方となっていた。
「こんなところで何をしている」
「っ、陛下」
いつもなら、シャーリーも時間になったら遅くなるとロッドフォード公爵夫妻に心配をかけるからと帰るところだが、この日はその時間までもちそうもなかったところに国王が現れた。
庭でお茶をしていたが、シャーリーのところにだけ日傘もなく、日の当たるところに座らされて、どのくらい経っていたか。
王妃の側にいるメイドたちは、みんな王妃の味方でシャーリーの味方をしてくれるメイドたちは、王宮では立場が弱いようだ。
だが、そもそもそのメイドたちに助けてもらう気もシャーリーにはなかった。王宮でのパワーバランスなんて、どうでもよかった。王妃が、自分にかまけて王太子の邪魔になることをしないのであれば、それが一番だった。
ぼーっとしていたシャーリーは、陛下が現れたことで条件反射でカーテシーをしたが、王妃がしどろもどろになっている間に熱中症になっていたらしく倒れることになった。
それから、数日シャーリーは眠ったままだったようだ。
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