自己中すぎる親友の勘違いに巻き込まれ、姉妹の絆がより一層深まったからこそ、お互いが試練に立ち向かえた気がします

珠宮さくら

文字の大きさ
24 / 24

24

しおりを挟む

「シャーリー。無理することないからな」


ダレイオスは、すっかり過保護になっていた。それこそ、シャーリーでなければ熱中症でも危険な状態になっていたところのようだが、事前に熱中症になりそうだと塩分の多いものを食べてから王妃のところに行ったのがよかったようだ。

まさか、日傘もないところでお茶会をするとは思わなかったが。そうでなければ、後遺症に悩まされていたかも知れないのだ。直感を信じてよかった。


「無理はしていません」


そんなやり取りが定番となっていた。ダレイオスはシャーリーが倒れた姿を見るだけで、己の心臓が止まりそうだと言った。

それを聞いてシャーリーは、かつて自分が姉のことでそうだったことを思い出していた。今では、病弱だったのが嘘のように養子にした子供を養うために家庭教師をして、人気の教師になっている。

シャーリーの両親も、ロッドフォード公爵家のジェレマイアの両親も、エイプリルが元気になっていることを喜んでいて、養子を本当の孫のように溺愛していた。

シャーリーは、王太子妃となるべく奮闘していたが、それでまた倒れるのではないかとダレイオスがうろちょろしていて、教えてくれる方も苦笑していた。


「殿下があんな風になるとは、シャーリー様のことが本当に大事なのですね」


そんな風にしみじみと言われたが、シャーリーはやり返す気でいたなんて口が裂けても言えなかった。

姉は、シャーリーを見て幸せそうだと笑ってくれたのを見て輝かんばかりに微笑んだのは、シャーリーの結婚式の日だった。

エイプリルはすっかり一児の母になっていて、溺愛してくれる最愛の夫と将来を誓うこととなり、その笑顔が曇り続けることはなかった。

王太子妃となったシャーリーは、自力で嫌味な連中にやり返すようになり、出番のもらえないダレイオスが複雑な顔をよくしていたが、気づかないふりをした。

こうして、シャーリーは運命の人と出会うべくして出会うことになり、結ばれるべくして結ばれることになって、仲睦まじい姿を至るところで目撃され、幸せいっぱいの人生を謳歌することができたのだった。






ちなみにジェレマイアの両親は息子の死を色々乗り越えて、養子を迎えた。実の両親を病気で相次いで亡くしたらしく、最初は心を閉ざしていたが、ロッドフォード公爵夫妻はその子に寄り添い続けた。

シャーリーは、最初気が気ではなかった。でも、会うたび親子になっていっている姿に泣きそうになってしまった。





シャーリーの実家であるオールポート侯爵家では、エイプリルが跡継ぎとなり、養子が懐いた男性に父親になってほしいと強く熱望したらしく、姉はその人と結婚した。

その人をシャーリーは知っていた。アンゼリカが婚約破棄した子息だった。

アンゼリカとの婚約が破棄となって新しい婚約者とお似合いだと思っていたが、卒業してすぐに結婚して夫人は病気で亡くなっていたようだ。

突然、妻を亡くした彼は跡継ぎを弟にして仕事人間として生きようとしていたところで、懐いてくれた子供の父親になろうと思ったようだ。


「ジェレマイア様が助けたのは、お姉様とあの子だけでなかったみたいね」


そう思うとシャーリーは、ジェレマイアのことを義兄と呼べなかったことが残念でならなかったが、姉の家族が幸せそうにしているのを見て微笑ましい気持ちになった。



しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【短編】誰も幸せになんかなれない~悪役令嬢の終末~

真辺わ人
恋愛
私は前世の記憶を持つ悪役令嬢。 自分が愛する人に裏切られて殺される未来を知っている。 回避したいけれど回避できなかったらどうしたらいいの? *後編投稿済み。これにて完結です。 *ハピエンではないので注意。

悪役令嬢は断罪されない

竜鳴躍
恋愛
卒業パーティの日。 王太子マクシミリアン=フォン=レッドキングダムは、婚約者である公爵令嬢のミレニア=ブルー=メロディア公爵令嬢の前に立つ。 私は、ミレニア様とお友達の地味で平凡な伯爵令嬢。ミレニアさまが悪役令嬢ですって?ひどいわ、ミレニアさまはそんな方ではないのに!! だが彼は、悪役令嬢を断罪ーーーーーーーーーーしなかった。 おや?王太子と悪役令嬢の様子がおかしいようです。 2021.8.14 順位が上がってきて驚いでいます。うれしいです。ありがとうございます! →続編作りました。ミレニアと騎士団長の娘と王太子とマリーの息子のお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/114529751 →王太子とマリーの息子とミレニアと騎士団長の娘の話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/449536459

姉の八つ当たりの対象の持ち主となっていましたが、その理由まで深く考えていなかったせいで、色々な誤解が起こっていたようです

珠宮さくら
恋愛
オルテンシア・バロワンは、幼い頃から迷惑していることがあった。それは、姉がオルテンシアが持っているものに何かあると八つ当たりすることだった。 そんなことをするのは、いつも妹であるオルテンシアの持ちものにだけで、そこまで嫌われているのかと思っていたのだが……。

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~

桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」 ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言? ◆本編◆ 婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。 物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。 そして攻略者達の後日談の三部作です。 ◆番外編◆ 番外編を随時更新しています。 全てタイトルの人物が主役となっています。 ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。 なろう様にも掲載中です。

悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。 ※初めての悪役令嬢物です。

私の感情が行方不明になったのは、母を亡くした悲しみと別け隔てない婚約者の優しさからだと思っていましたが、ある人の殺意が強かったようです

珠宮さくら
恋愛
ヴィルジ国に生まれたアデライードは、行き交う街の人たちの笑顔を見て元気になるような王女だったが、そんな彼女が笑わなくなったのは、大切な人を亡くしてからだった。 そんな彼女と婚約したのは、この国で将来を有望視されている子息で誰にでも優しくて別け隔てのない人だったのだが、彼の想い人は別にいたのをアデライードは知っていた。 でも、どうにも何もする気が起きずにいた。その原因が、他にちゃんとあったこアデライードが知るまでが大変だった。

愛に死に、愛に生きる

玉響なつめ
恋愛
とある王国で、国王の側室が一人、下賜された。 その側室は嫁ぐ前から国王に恋い焦がれ、苛烈なまでの一途な愛を捧げていた。 下賜された男は、そんな彼女を国王の傍らで見てきた。 そんな夫婦の物語。 ※夫視点・妻視点となりますが温度差が激しいです。 ※小説家になろうとカクヨムにも掲載しています。

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

処理中です...