見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら

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何とも間抜けなことになっていて、その侍医にすら、そんなことがあるのかと気軽に聞けなかった。

珍しいとか。初めてだと言われたら、立ち直れない。陸に降り立った途端、船酔いになったのだ。恥ずかしすぎる。


「アンネリース様」
「……」


逆に侍女が、すっかり元気にしていて、アンネリースは……。


(薬を飲んでおけばよかったのかも)


そう思いつつ、苦しそうにしていた侍女に全部あげてしまった。それほどまでに酷かったのだ。


(でも、フェリーネがこうなるより良かったかな。きっと船の上での方がきつかったわよね。……これより酷いなんて、しんどすきる)


申し訳ないけれども迎えに来てくれた護衛たちを待たせることになった。アンネリースが平気と言っても、侍医が出発をさせはしなかっただろう。そんな余裕もなかったが。

アンネリースは、久しぶりに寝込んだ。何か食べても吐き気が酷くて食べられなかった。そのため、薬もろくに飲めなかった。

そのせいで、薬で緩和されない分、眠ることが一番いいと言われても、眠るたび、悪夢を見た。陸に辿り着いて船酔いになったのを両親や片割れ、それに見送りに集められた面々に大笑いされる夢だ。あの声で、笑われるのだ。拷問のようだった。それに苦しめられた。


「アンネリース様」
「っ、」
「魘されていましたよ。大丈夫ですか?」


フェリーネは、アンネリースの側に付きっきりでいた。ちょっとでも変化があれば、動いて話しかけてくれた。


「……」
「アンネリース様」
「……」
「何か、飲みますか?」
「……ううん。フェリーネ」
「はい」
「これは、夢じゃないわよね?」
「え……?」
「これは、現実よね?」
「現実ですよ」


フェリーネは、アンネリースがどんな悪夢を見ているのかということを追求することはなかった。

ただ、具合が良くないアンネリースの顔色が更に悪くなっているのに追求なんてできなかった。

したところで、話すとは思えなかったのは、侍女としての勘だ。


「アンネリース様。船酔いでまいっているだけです。侍医が、もう少し辛抱すれば良くなると言っていました」
「……辛抱は、これっきりだといいわ。もう、十分してきたはずだもよ」
「……」


フェリーネには、それがしっかり聞こえていた。とんでもない悪夢なのか。アンネリースをその後も起こすことになったが、どんなのを見ているかと聞けなかった。

その辛さは、これまでのものより断トツの酷さだった。なのに薬を飲めるまでになって、アンネリースは……。


「……これ、飲まなきゃ駄目?」
「吐き気がないなら、飲んだ方が楽になりますよ」
「……」


アンネリースは、具合の悪さの中で吐き気がなくなり、薬と簡単な食事をすることになり、薬を睨みつけることになった。

フェリーネは、そんなアンネリースに苦笑していたが、薬を飲んでからは具合はすぐに良くなった。


(薬って、凄いわね)


アンネリースは、薬なんてものを与えられたことはない。ただ、不味いものと思っていたが、あちらで食べた犬の餌より酷いものと比べれば、そんなに不味くはなかった。

そんなものを食べていたこともあった、アンネリースにとって、大概のものは豪華なものとなっていた。


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