見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら

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アンネリースが寝込んでいる間、色々あった。フェリーネは、アンネリースにつきっきりだったとはいえ、遭遇しなかったのは偶然だったようで、彼女も知らないことがあった。


「エデュアルド様。姫君のお顔を見ましたか?」
「見ていない」
「ならば、侍女殿は?」
「見ていない」


護衛たちの中に浮足立った者が現れ出したのだ。何より見目麗しく評判もよい王女の素顔を見たがったが、それが駄目なら侍女の方も美人だろうとしつこくし始めたのだ。それにエデュアルドは激怒した。


「そんなことを気にするなら、護衛に集中しろ!!」
「っ、すみません!」


その時にしまったと思って浮足立つ者たちは小さくなってエデュアルドの前から逃げた。そう、1人ではなかったのだ。そんなのが、護衛をしに来たのだと思うとエデュアルドは腹ただしくて仕方がなかった。

だが、エデュアルドのいないとのろで、顔を見ようとうろちょろする者がいなくなることはなかった。


「何をしているんですか?」
「っ、侍医殿。何か、ご用は?」
「ありません」
「っ、失礼しました!」
「……」


そんなことを侍医は日に何度も繰り返すようになり、それをエデュアルドに伝えたことで、アンネリースたちがいる部屋の側をうろちょろする者がいるとわかって、激怒した。


「あいつらは、何をしているんだ!」
「美人だって聞いて、護衛になれたのを自慢してる連中ですよ」
「……そんなことしてるのか?」


エデュアルドは、そんな連中が護衛していることに不安しかなかった。

それだけでは収まらず、金に目がくらんでアンネリースたちを人攫いにさらわせて、見返りをもらおうとしたのまで現れてしまったのは、ようやくアンネリースの船酔いが良くなって、港町から出発して数日のことだった。

そう思ったのも、その護衛はあまりにもゆっくりとした動きで、王宮に進む速度に苛ついたのもあったようだ。

こんな速度で、いつ着くんだと愚痴っていたのを聞いていたアンネリースは、フェリーネと同じように遅いなと思っていた。

2人共、馬車の中にいた。物凄く快適だった。


(歩くことになると思っていたけど、歩かせてはもらえないとは思わなかったわ)


アンネリースとフェリーネは、自分のことは大体は自分でやらねばならなかった。王宮では、フェリーネが世話してくれたが、王宮の外ではアンネリースは自分でしていた。だから、かなりの距離を歩いても平然としていられる自信はあった。


(まぁ、馬には乗ったことがないから、1人では無理そうだけど)


「この速度は、流石に護衛の人たちには遅すぎよね」
「アンネリース様が病み上がりなので、気にかけてくださっているのかもしれません」
「……気遣いすぎでしょ」


アンネリースは、そんなことをぼやいてしまった。

拐おうとなったのも、アンネリースからしたら無理はないように思えたが、護衛が手引きしたことにエデュアルドや他の護衛たちが凄い顔をしていた。

呑気なことを考えていたら、拐われたのだ。それにはアンネリースは怖いというより、びっくりし過ぎてしまった。


(私を拐おうとするなんて、変わってるわ)


そんなことを思っていた。怖いなんて思ってすらいなかった。


「アンネリース様! お怪我は?」
「平気」


フェリーネは、少しの隙にさらわれたことにショックを受けていて泣いていた。


「申し訳ありません。お側にいたのに」
「フェリーネのせいじゃないわ。ほら、護衛の服装だから、騙されてしまっただけよ、護衛の服を盗むなんて、思わないもの」


アンネリースは、護衛が寝返ったなんて思っていなかった。そのため、エデュアルドたちが血眼になって探して助けてくれたのも、護衛に扮していたのもあってだと思っていた。

王女として扱われたことがあまりないアンネリースは、自分の価値がわからなかった。


「アンネリース様、あの者は……」
「皆様、お怪我は? 服を盗まれた方は、大丈夫ですか?」
「……」
「護衛の方から身ぐるみはぐなんて、怖いもの知らずの方もいるのですね」
「っ、」


アンネリースは、本気でそう思っていたから、そう言った。エデュアルドや他の騎士が、何とも言えない顔をしているのに気づいていなかった。だって、顔を見るなんてしたことがないからだ。

何なら、横でフェリーネが言い出せなくなって困った顔をしているのも見えていなかった。

それをエデュアルドたちは、こう勘違いした。


「エデュアルド様。先ほどのアンネリース様は……」
「……護衛ではないということにしてくださったんだ」
「っ、自分が拐われたのに」
「お前たち、今後は二心なんて持つなら、私が問答無用でたたっ斬る!」
「「二度としません!」」


アンネリースが、変な勘違いをしていたのを護衛たちは、そうまでして信用してくれていることに感激した。

拐われて怖かったはずなのに。それでも、あんなことをするのが、本物の護衛ではないと言ってくれているのだとエデュアルドたちは思った。

フェリーネも、アンネリースは知っていて、そう言ったと思っていて、その話をすることはなかった。

これまた、誤解が生まれていた。


(でも、護衛で身ぐるみ剥がれるなんて、大丈夫なのかしら?)


アンネリースは、そんなことを思っていたことを誰も知らない。

王女がこんなんで大丈夫なのかと誰も言わないのは、みんな誤解していたからにほかならない。

そもそも、身ぐるみ剥がされる以前にそんなのに拐われるのも、護衛としてありえないのもなかったことにしたことで、エデュアルドや他の護衛たちも一層、アンネリースのことを気にかけるようになった。

それに金に目がくらんだと思われていたが、実のところ、そこから違っていた。


「それにしても、あいつらが金で動くとはな」
「お前も、気になるか?」
「あぁ、顔を見たがってた連中がしていたって方が納得いく」


だが、アンネリースが不問にしたことで本当のところ、どうだったのかを詳しく聞かずにいたことで、長く誤解が解けなかった。

解けたら、別の面でアンネリースが、この2人のことを気に入ることをこの時の誰もわからなかった。


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