見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら

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(あの荷物、凄く邪魔よね)


両親が見栄のために持たせたものがとにかく邪魔くさく思えてならなかった。アンネリースの好みでもない。センスはとにかく悪いものばかりだ。

あまりに暇で、船旅の時に覗いてげんなりした。思っていたより、酷いものしかなかった。手元に残しておきたいものはなかった。


(あんなの持ってたどり着いたら、嫌なこと思い出してしまいそうだわ。そもそも、あれが視界に入るだけでも、腹が立ってくる。初めてもらったものだというのにあれを見るたび、腸が煮えくり返る)


そんなことを何も知らない護衛たちは文句言わずに運んでくれていた。

この間、拐われたことでより優しく気遣われている。残念ながら、アンネリースにトラウマなんてない。

ただ、身ぐるみ剥がされたはずの人と拐った人が似ている気がしなくもないが、エデュアルド以外とはアンネリースはあまり話したことがないから、気のせいだと思っていた。

あとは、顔で判断していない。制服と雰囲気でアンネリースは覚えている。話をしたら、それで誰なのかを覚える。

だから、この時のアンネリースにとって、護衛の2人がやたらと拐われた後から、アンネリースを誰よりも気にかけてくれているが、話しかけられないから、なぜそんなにも気にかけてくれるかがわかっていなかった。

ただ、護衛たちは結束しつつ、その2人にやたらと厳しい感じだが、それでも何も言わずに護衛をしている姿を度々目撃してはいた。

あんなことをした者をすんなり受け入れられはしなかったのだろう。

でも、金に目がくらんだとされる2人より、自慢して回っていた連中の中身の方が問題だった。


「やっぱり、顔がいいと心まで綺麗って本当なんだな」
「益々、顔が見たいよな」


二心はなくとも、あわよくば顔が見たい。

船員のように声をかけられたい。

あの港で長くいた時のようなことをされたい護衛たちの心の内は、拐った後で誠心誠意尽くす2人と全然違っていた。

そんな見返りを求めている連中の方が多かった。

だが、そんな護衛たちより、アンネリースが気にしていたのは、この速度の原因だと思われる荷物についてだった。


「ねぇ、フェリーネ。あれ、どうにかできない?」
「皆さん、アンネリース様の大事なものと思っておられて、減らす提案が受け入れてもらえないんです」
「……あんなの趣味じゃないのに」


フェリーネは、アンネリースの言葉に苦笑していた。話すのは、馬車の中だった。フェリーネは、あれが側にあるのをアンネリースが嫌がっているのが物凄くよくわかって、あの手この手で視界に入らないようにしたが、運ぶのも鍛錬になると言われてしまえば、お手上げだ。

船旅の時に部屋で缶詰になっていた時より、アンネリースは我慢ならなかった。

フェリーネも、速度について引っかかりがあれど、侍医とエデュアルドがアンネリースを気にしてのことだと言われれば、それまでだ。

この速度は、アンネリースを気にかけてくれている以上に何やら裏がある気がしてならないのだ。


(変よね。みんな、私のことを気遣ってくれているはずなのに)


特に侍医は、アンネリースの体調を誰よりも気にかけてくれていた。王命できているのだ。王宮に着いた時に具合が悪そうに見えたら困るというより、元気に王宮にお連れするのが仕事のようにしていた。

あの侍医に裏はないとアンネリースは見ている。

それにエデュアルドも、護衛長として体調を気にかけてくれているし、フェリーネのことも気にかけてくれている。

若干、フェリーネの方を気にかけてくれている方が大きいと感じる時もあるが、この速度でよほどの自信があるのだろう

護衛たちは、雑談しながら実に楽しそうにしている。


(なんか、あの荷物をダシにされているようにも思えるのよね)


そんなことをあれこれアンネリースは、暇を持て余して考えていた。


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