19 / 61
18
しおりを挟む(あの荷物、凄く邪魔よね)
両親が見栄のために持たせたものがとにかく邪魔くさく思えてならなかった。アンネリースの好みでもない。センスはとにかく悪いものばかりだ。
あまりに暇で、船旅の時に覗いてげんなりした。思っていたより、酷いものしかなかった。手元に残しておきたいものはなかった。
(あんなの持ってたどり着いたら、嫌なこと思い出してしまいそうだわ。そもそも、あれが視界に入るだけでも、腹が立ってくる。初めてもらったものだというのにあれを見るたび、腸が煮えくり返る)
そんなことを何も知らない護衛たちは文句言わずに運んでくれていた。
この間、拐われたことでより優しく気遣われている。残念ながら、アンネリースにトラウマなんてない。
ただ、身ぐるみ剥がされたはずの人と拐った人が似ている気がしなくもないが、エデュアルド以外とはアンネリースはあまり話したことがないから、気のせいだと思っていた。
あとは、顔で判断していない。制服と雰囲気でアンネリースは覚えている。話をしたら、それで誰なのかを覚える。
だから、この時のアンネリースにとって、護衛の2人がやたらと拐われた後から、アンネリースを誰よりも気にかけてくれているが、話しかけられないから、なぜそんなにも気にかけてくれるかがわかっていなかった。
ただ、護衛たちは結束しつつ、その2人にやたらと厳しい感じだが、それでも何も言わずに護衛をしている姿を度々目撃してはいた。
あんなことをした者をすんなり受け入れられはしなかったのだろう。
でも、金に目がくらんだとされる2人より、自慢して回っていた連中の中身の方が問題だった。
「やっぱり、顔がいいと心まで綺麗って本当なんだな」
「益々、顔が見たいよな」
二心はなくとも、あわよくば顔が見たい。
船員のように声をかけられたい。
あの港で長くいた時のようなことをされたい護衛たちの心の内は、拐った後で誠心誠意尽くす2人と全然違っていた。
そんな見返りを求めている連中の方が多かった。
だが、そんな護衛たちより、アンネリースが気にしていたのは、この速度の原因だと思われる荷物についてだった。
「ねぇ、フェリーネ。あれ、どうにかできない?」
「皆さん、アンネリース様の大事なものと思っておられて、減らす提案が受け入れてもらえないんです」
「……あんなの趣味じゃないのに」
フェリーネは、アンネリースの言葉に苦笑していた。話すのは、馬車の中だった。フェリーネは、あれが側にあるのをアンネリースが嫌がっているのが物凄くよくわかって、あの手この手で視界に入らないようにしたが、運ぶのも鍛錬になると言われてしまえば、お手上げだ。
船旅の時に部屋で缶詰になっていた時より、アンネリースは我慢ならなかった。
フェリーネも、速度について引っかかりがあれど、侍医とエデュアルドがアンネリースを気にしてのことだと言われれば、それまでだ。
この速度は、アンネリースを気にかけてくれている以上に何やら裏がある気がしてならないのだ。
(変よね。みんな、私のことを気遣ってくれているはずなのに)
特に侍医は、アンネリースの体調を誰よりも気にかけてくれていた。王命できているのだ。王宮に着いた時に具合が悪そうに見えたら困るというより、元気に王宮にお連れするのが仕事のようにしていた。
あの侍医に裏はないとアンネリースは見ている。
それにエデュアルドも、護衛長として体調を気にかけてくれているし、フェリーネのことも気にかけてくれている。
若干、フェリーネの方を気にかけてくれている方が大きいと感じる時もあるが、この速度でよほどの自信があるのだろう
護衛たちは、雑談しながら実に楽しそうにしている。
(なんか、あの荷物をダシにされているようにも思えるのよね)
そんなことをあれこれアンネリースは、暇を持て余して考えていた。
64
あなたにおすすめの小説
わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。
バナナマヨネーズ
恋愛
山田華火は、妹と共に異世界に召喚されたが、妹の浅はかな企みの所為で追放されそうになる。
そんな華火を救ったのは、若くしてシグルド公爵となったウェインだった。
ウェインに保護された華火だったが、この世界の言葉を一切理解できないでいた。
言葉が分からない華火と、華火に一目で心を奪われたウェインのじりじりするほどゆっくりと進む関係性に、二人の周囲の人間はやきもきするばかり。
この物語は、理不尽に異世界に召喚された少女とその少女を保護した青年の呆れるくらいゆっくりと進む恋の物語である。
3/4 タイトルを変更しました。
旧タイトル「どうして異世界に召喚されたのかがわかりません。だけど、わたしを保護してくれたイケメンが超過保護っぽいことはわかります。」
3/10 翻訳版を公開しました。本編では異世界語で進んでいた会話を日本語表記にしています。なお、翻訳箇所がない話数には、タイトルに 〃 をつけてますので、本編既読の場合は飛ばしてもらって大丈夫です
※小説家になろう様にも掲載しています。
治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです!
文月
恋愛
私の理想の容姿は「人形の様な整った顔」。
クールビューティーっていうの? 華やかで目を引くタイプじゃなくて、ちょっと近寄りがたい感じの正統派美人。
皆の人気者でいつも人に囲まれて‥ってのじゃなくて、「高嶺の花だ‥」って遠巻きに憧れられる‥そういうのに憧れる。
そりゃね、モテたいって願望はあるよ? 自分の(密かな)願望にまで嘘は言いません。だけど、チヤホヤ持ち上げられて「あの子、天狗になってない? 」とか陰口叩かれるのはヤなんだよ。「そんなんやっかみだろ」っていやあ、それまでだよ? 自分がホントに天狗になってないんなら。‥そういうことじゃなくて、どうせなら「お高く留まってるのよね」「綺麗な人は一般人とは違う‥って思ってんじゃない? 」って風に‥やっかまれたい。
‥とこれは、密かな願望。
生まれ変わる度に自分の容姿に落胆していた『死んで、生まれ変わって‥前世の記憶が残る特殊なタイプの魂(限定10)』のハヅキは、次第に「ままならない転生」に見切りをつけて、「現実的に」「少しでも幸せになれる生き方を送る」に目標をシフトチェンジして頑張ってきた。本当の「密かな願望」に蓋をして‥。
そして、ラスト10回目。最後の転生。
生まれ落ちるハヅキの魂に神様は「今世は貴女の理想を叶えて上げる」と言った。歓喜して神様に祈りをささげたところで暗転。生まれ変わったハヅキは「前世の記憶が思い出される」3歳の誕生日に期待と祈りを込めて鏡を覗き込む。そこに映っていたのは‥
今まで散々見て来た、地味顔の自分だった。
は? 神様‥あんだけ期待させといて‥これはないんじゃない?!
落胆するハヅキは知らない。
この世界は、今までの世界と美醜の感覚が全然違う世界だということに‥
この世界で、ハヅキは「(この世界的に)理想的で、人形のように美しい」「絶世の美女」で「恐れ多くて容易に近づけない高嶺の花」の存在だということに‥。
神様が叶えたのは「ハヅキの理想の容姿」ではなく、「高嶺の花的存在になりたい」という願望だったのだ!
この話は、無自覚(この世界的に)美人・ハヅキが「最後の人生だし! 」ってぶっちゃけて(ハヅキ的に)理想の男性にアプローチしていくお話しです。
裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです
ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?
【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
【完結】妹に存在を奪われた令嬢は知らない 〜彼女が刺繍に託した「たすけて」に、彼が気付いてくれていたことを〜
桜野なつみ
恋愛
存在を消された伯爵家の長女・ビオラ。声を失った彼女が、唯一想いを託せたのは針と糸だった。
白いビオラの刺繍に縫い込まれた「たすけて」の影文字。
それを見つけたのは、彼女の母の刺繍に人生を変えられた青年だった──。
言葉を失った少女と、針の声を聴く男が紡ぐ、静かな愛の物語。
【完結】異世界からおかえりなさいって言われました。私は長い夢を見ていただけですけれど…でもそう言われるから得た知識で楽しく生きますわ。
まりぃべる
恋愛
私は、アイネル=ツェルテッティンと申します。お父様は、伯爵領の領主でございます。
十歳の、王宮でのガーデンパーティーで、私はどうやら〝お神の戯れ〟に遭ったそうで…。十日ほど意識が戻らなかったみたいです。
私が目覚めると…あれ?私って本当に十歳?何だか長い夢の中でこの世界とは違うものをいろいろと見た気がして…。
伯爵家は、昨年の長雨で経営がギリギリみたいですので、夢の中で見た事を生かそうと思います。
☆全25話です。最後まで出来上がってますので随時更新していきます。読んでもらえると嬉しいです。
秘密の多い令嬢は幸せになりたい
完菜
恋愛
前髪で瞳を隠して暮らす少女は、子爵家の長女でキャスティナ・クラーク・エジャートンと言う。少女の実の母は、7歳の時に亡くなり、父親が再婚すると生活が一変する。義母に存在を否定され貴族令嬢としての生活をさせてもらえない。そんなある日、ある夜会で素敵な出逢いを果たす。そこで出会った侯爵家の子息に、新しい生活を与えられる。新しい生活で出会った人々に導かれながら、努力と前向きな性格で、自分の居場所を作り上げて行く。そして、少女には秘密がある。幻の魔法と呼ばれる、癒し系魔法が使えるのだ。その魔法を使ってしまう事で、国を揺るがす事件に巻き込まれて行く。
完結が確定しています。全105話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる