見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら

文字の大きさ
20 / 61

19

しおりを挟む

するとそれを狙った賊が現れた。身なりからして山賊のようだ。

ゆっくりとアンネリースが王宮に向かっていると言うのは、知れ渡っているようだ。無理もない。悪目立ちしすぎているのだ。

その上、大層な荷物を持っている。金になる物を持っていると思われたのだ。

だが、アンネリースはいつかそうなるだろうなと思っていて、別のことを思っていた。


(山賊。初めて見た)


もう二度と失態をおかさないと気合いの入っている護衛が、負けるわけがない。

特にアンネリースとしては、荷物が減る方を期待してしまっていたから、見るところがおかしなことになっていた。


(やっぱり、身ぐるみ剥がされた護衛は、油断していたか。一服盛られたのね。いい動きをしているわ。それに比べて、雑談してばかりの護衛は、あんまりね。鍛錬を怠っている動きをしている。服を盗むなら、あの人たちの方が簡単だったでしょうに)


まだ、制服を奪われたとアンネリースは思っていた。よくしてくれているが、明らかな態度の差が現れていた。

でも、それよりも目の前のことだ。曲がりなりにも国王が遣わした護衛が、山賊に負けるはずがなかった。

あっさりと捕まることになった山賊を殺そうとするのをアンネリースがとめた。


「待ってください!」
「アンネリース様」


捕まえられていた山賊たちは、護衛たちに取り押さえられながら、アンネリースを一目最後に見ようと藻掻いていた。

どうせ死ぬのなら、アンネリースを見たかったようだが、護衛たちはそれを許すことはなかった。


(これは、チャンスなのよ。荷物を持って行ってもらわなくては)


そう思って、アンネリースはこう言った。全くそんなこと考えてもいない雰囲気で、別のことを言った。

フェリーネなら、長い付き合いだから、すぐにわかってくれることだが、それ以外は優しいと思うことだろう。


「それが、お役に立つのなら、どうぞ貰ってください。ですが、それが争いの火種になるのならば、燃やしてください」


そんなことを言うアンネリースに山賊の中でも、頭領をしている者が声を発した。身なりからして、着ているものが違っていた。


(彼のセンスいいわ。好きだな)


これまた場違いなことをアンネリースは考えていた。護衛の服も素敵だが、着こなし方が様になっている。山賊にそんなことを思うのだから、アンネリースも肝が据わっている。


「はぁ? これがいくらするか知ってるのか?」
「知りません。でも、あなたたちの命に比べれば大したことはないはずです」
「っ、あんた、俺らの命が、これより高いって言うのか?!」
「もちろん。命は一つきりです。ですが、もう、これきりにしてください」


賊はみんなそれにポカーンとしていた。

護衛をしている者たちも、何ともアンネリースらしいと思いつつ、困った顔をしていた。

あの2人は、アンネリースのしたことに目を丸くしていた。そんなことを言うと思わなかったようだが、そのうちアンネリースなら、そう言うなと変な納得をしていたが、誰も見てはいなかった。


「アンネリース様、それでは示しがつきません」
「示しなど、必要ですか?」


エデュアルドの言葉にアンネリースは、そんなことを言った。本心だ。


(元よりないのに。私は、王族であって、認められたことのない者でしかない)


そんなことを心の中でアンネリースは思った。何より……。


(荷物がなくなるチャンスなのよ! これがなくなれば、もっと早く移動できるはず。そうでなければ、他の目的が見える)


アンネリースは、そういう性格をしていた。

そんなアンネリースを正しく理解していたのは、フェリーネだけだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。

バナナマヨネーズ
恋愛
山田華火は、妹と共に異世界に召喚されたが、妹の浅はかな企みの所為で追放されそうになる。 そんな華火を救ったのは、若くしてシグルド公爵となったウェインだった。 ウェインに保護された華火だったが、この世界の言葉を一切理解できないでいた。 言葉が分からない華火と、華火に一目で心を奪われたウェインのじりじりするほどゆっくりと進む関係性に、二人の周囲の人間はやきもきするばかり。 この物語は、理不尽に異世界に召喚された少女とその少女を保護した青年の呆れるくらいゆっくりと進む恋の物語である。 3/4 タイトルを変更しました。 旧タイトル「どうして異世界に召喚されたのかがわかりません。だけど、わたしを保護してくれたイケメンが超過保護っぽいことはわかります。」 3/10 翻訳版を公開しました。本編では異世界語で進んでいた会話を日本語表記にしています。なお、翻訳箇所がない話数には、タイトルに 〃 をつけてますので、本編既読の場合は飛ばしてもらって大丈夫です ※小説家になろう様にも掲載しています。

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

婚約者を妹に奪われた私は、呪われた忌子王子様の元へ

秋月乃衣
恋愛
幼くして母を亡くしたティアリーゼの元に、父公爵が新しい家族を連れて来た。 自分とは二つしか歳の変わらない異母妹、マリータの存在を知り父には別の家庭があったのだと悟る。 忙しい公爵の代わりに屋敷を任された継母ミランダに疎まれ、ティアリーゼは日々疎外感を感じるようになっていった。 ある日ティアリーゼの婚約者である王子と、マリータが思い合っているのではと言った噂が広まってしまう。そして国から王子の婚約者を妹に変更すると告げられ……。 ※他サイト様でも掲載しております。

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻

白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。 幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。 家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、 いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。 ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。 庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。 レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。 だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。 喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…  異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

【完結】妹に存在を奪われた令嬢は知らない 〜彼女が刺繍に託した「たすけて」に、彼が気付いてくれていたことを〜

桜野なつみ
恋愛
存在を消された伯爵家の長女・ビオラ。声を失った彼女が、唯一想いを託せたのは針と糸だった。 白いビオラの刺繍に縫い込まれた「たすけて」の影文字。 それを見つけたのは、彼女の母の刺繍に人生を変えられた青年だった──。 言葉を失った少女と、針の声を聴く男が紡ぐ、静かな愛の物語。

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

秘密の多い令嬢は幸せになりたい

完菜
恋愛
前髪で瞳を隠して暮らす少女は、子爵家の長女でキャスティナ・クラーク・エジャートンと言う。少女の実の母は、7歳の時に亡くなり、父親が再婚すると生活が一変する。義母に存在を否定され貴族令嬢としての生活をさせてもらえない。そんなある日、ある夜会で素敵な出逢いを果たす。そこで出会った侯爵家の子息に、新しい生活を与えられる。新しい生活で出会った人々に導かれながら、努力と前向きな性格で、自分の居場所を作り上げて行く。そして、少女には秘密がある。幻の魔法と呼ばれる、癒し系魔法が使えるのだ。その魔法を使ってしまう事で、国を揺るがす事件に巻き込まれて行く。 完結が確定しています。全105話。

処理中です...