見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら

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アンネリースは、ゆっくりすぎる移動に飽きていた。何なら馬術を習って移動したいくらいだ。でも、そんなことをしたらイメージが崩れるだろうと我慢していた。

それは、フェリーネも似たような思考をしていた。でも、アンネリースが我慢しているならと黙っていた。


「姫さん、悪ぃがタダでもらえねぇ」
「義理堅い方なのですね。それは、私が失礼なことを言いました。……そうですね。なら、みなさんのお話を聞かせてください」
「あ? 俺らの話?」


エデュアルドより若いだろう。年齢的にはバーレントくらいのような気がする。

頭領らしい人は、長髪で黒髪をしていて、青い目をしていた。エデュアルドと同じくフェイル国では美形で女性にキャーキャーと騒がれる分類に属する彼だが、アンネリースはそこを見てはいなかった。

元より好みの顔なんて、アンネリースにはない。


「えぇ、特技のお話が良いです。聞かせてくれますか?」
「……姫さん、変わってんな。賊の特技なんて聞いて、どうすんだ?」


頭領は、すっかりわけがわからないとばかりにしていた。それでも、アンネリースが何をしたいのかを見逃すまいとじっと目をそらすことなく見ていた。


「知りたいのです」


(ローザンネ国には、山賊なんていなかったもの)


仮面を付けていた者たちの中には腕っぷしで者を取ろうとする者はいなかった。そんなことをすれば、連帯責任のように仮面を付けている者たちが酷い目に合う。

この国には、そういうものがないようだ。


「そうか。そんなに言うなら……」


それから、賊の1人1人に特技を聞いて、これに向いている。こういうのを仕事や生業にしては?とアンネリースは、賊たちに話した。


「俺、特技なんてねぇよ」
「馬鹿言え、お前、馬鹿力だろ」
「頭領。あれは、特技じゃねぇよ」
「あら、特技よ」
「っ、そうなのか?」
「そうよ」
「でもよ、それでよくもの壊しちまうんだ」
「なら、壊れにくいもので、重たいものを運ぶ仕事は?」


それを聞いて頭領が、こんなのがあると話をしてくれた。何気に色んなことをよく知っているようだ。

フェリーネは、それを止めることなく、お茶を淹れて出していた。


「どうぞ」
「おぅ、ありがとよ」
「いえ」


頭領は、他の山賊たちよりもてなされるのに慣れていた。他の山賊たちは、おどおどしていたが、分け隔てることはなかった。

フェリーネは、護衛たちにもお茶を振る舞っていた。

アンネリースは、その人物を観察していた。


(それに所作が綺麗なのよね。訳ありの元貴族あたりかしらね)


アンネリースは、そんなことを考えながら、山賊たちと話し続けた。

ローザンネ国でも、アンネリースは仮面を付けている者にアドバイスをしていた。それを知っているのは、ここにはフェリーネしかいない。何なら王宮での仕事もこなしていた。国王は、執務なんてしなくなっているし、側にいる連中も、フェリーネ以外の侍女も働いてなんていない。厨房の者も、仮面を付けた者にやらせていたくらいだ。


(今頃、どうしていることやら)


アンネリースがいなくなったことで、それをこなしていた者たちは仕事をしてはいないだろう。だって、そんなことをしても微々たるお金しかもらえないのだ。

そんなことをするなら、自給自足で働いた方がいい。山奥に彼らは移り住もうとしていた。

アンネリースがいたから、成り立っていたとまでは思いたくないが、前のようにスムーズにはいかなくなっているはずだ。そもそも、やらせるだけで、やったことのない人たちの集まりなのだ。


(まぁ、あっちにもう帰らないから、目の前の人たちとあの荷物をどうにかするのに頭を使うだけよ。私と同じく仮面を付けていた人たちは、自給自足で生活できているはず。……私も、そんな暮らしができたらよかったのだけど、利用価値がこんな風にあるとは思わなかったわ)


アンネリースは、ローザンネ国が今後、どうなるかなんて目に見えていたが、考えないようにした。


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