21 / 61
20
しおりを挟むアンネリースは、ゆっくりすぎる移動に飽きていた。何なら馬術を習って移動したいくらいだ。でも、そんなことをしたらイメージが崩れるだろうと我慢していた。
それは、フェリーネも似たような思考をしていた。でも、アンネリースが我慢しているならと黙っていた。
「姫さん、悪ぃがタダでもらえねぇ」
「義理堅い方なのですね。それは、私が失礼なことを言いました。……そうですね。なら、みなさんのお話を聞かせてください」
「あ? 俺らの話?」
エデュアルドより若いだろう。年齢的にはバーレントくらいのような気がする。
頭領らしい人は、長髪で黒髪をしていて、青い目をしていた。エデュアルドと同じくフェイル国では美形で女性にキャーキャーと騒がれる分類に属する彼だが、アンネリースはそこを見てはいなかった。
元より好みの顔なんて、アンネリースにはない。
「えぇ、特技のお話が良いです。聞かせてくれますか?」
「……姫さん、変わってんな。賊の特技なんて聞いて、どうすんだ?」
頭領は、すっかりわけがわからないとばかりにしていた。それでも、アンネリースが何をしたいのかを見逃すまいとじっと目をそらすことなく見ていた。
「知りたいのです」
(ローザンネ国には、山賊なんていなかったもの)
仮面を付けていた者たちの中には腕っぷしで者を取ろうとする者はいなかった。そんなことをすれば、連帯責任のように仮面を付けている者たちが酷い目に合う。
この国には、そういうものがないようだ。
「そうか。そんなに言うなら……」
それから、賊の1人1人に特技を聞いて、これに向いている。こういうのを仕事や生業にしては?とアンネリースは、賊たちに話した。
「俺、特技なんてねぇよ」
「馬鹿言え、お前、馬鹿力だろ」
「頭領。あれは、特技じゃねぇよ」
「あら、特技よ」
「っ、そうなのか?」
「そうよ」
「でもよ、それでよくもの壊しちまうんだ」
「なら、壊れにくいもので、重たいものを運ぶ仕事は?」
それを聞いて頭領が、こんなのがあると話をしてくれた。何気に色んなことをよく知っているようだ。
フェリーネは、それを止めることなく、お茶を淹れて出していた。
「どうぞ」
「おぅ、ありがとよ」
「いえ」
頭領は、他の山賊たちよりもてなされるのに慣れていた。他の山賊たちは、おどおどしていたが、分け隔てることはなかった。
フェリーネは、護衛たちにもお茶を振る舞っていた。
アンネリースは、その人物を観察していた。
(それに所作が綺麗なのよね。訳ありの元貴族あたりかしらね)
アンネリースは、そんなことを考えながら、山賊たちと話し続けた。
ローザンネ国でも、アンネリースは仮面を付けている者にアドバイスをしていた。それを知っているのは、ここにはフェリーネしかいない。何なら王宮での仕事もこなしていた。国王は、執務なんてしなくなっているし、側にいる連中も、フェリーネ以外の侍女も働いてなんていない。厨房の者も、仮面を付けた者にやらせていたくらいだ。
(今頃、どうしていることやら)
アンネリースがいなくなったことで、それをこなしていた者たちは仕事をしてはいないだろう。だって、そんなことをしても微々たるお金しかもらえないのだ。
そんなことをするなら、自給自足で働いた方がいい。山奥に彼らは移り住もうとしていた。
アンネリースがいたから、成り立っていたとまでは思いたくないが、前のようにスムーズにはいかなくなっているはずだ。そもそも、やらせるだけで、やったことのない人たちの集まりなのだ。
(まぁ、あっちにもう帰らないから、目の前の人たちとあの荷物をどうにかするのに頭を使うだけよ。私と同じく仮面を付けていた人たちは、自給自足で生活できているはず。……私も、そんな暮らしができたらよかったのだけど、利用価値がこんな風にあるとは思わなかったわ)
アンネリースは、ローザンネ国が今後、どうなるかなんて目に見えていたが、考えないようにした。
73
あなたにおすすめの小説
わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。
バナナマヨネーズ
恋愛
山田華火は、妹と共に異世界に召喚されたが、妹の浅はかな企みの所為で追放されそうになる。
そんな華火を救ったのは、若くしてシグルド公爵となったウェインだった。
ウェインに保護された華火だったが、この世界の言葉を一切理解できないでいた。
言葉が分からない華火と、華火に一目で心を奪われたウェインのじりじりするほどゆっくりと進む関係性に、二人の周囲の人間はやきもきするばかり。
この物語は、理不尽に異世界に召喚された少女とその少女を保護した青年の呆れるくらいゆっくりと進む恋の物語である。
3/4 タイトルを変更しました。
旧タイトル「どうして異世界に召喚されたのかがわかりません。だけど、わたしを保護してくれたイケメンが超過保護っぽいことはわかります。」
3/10 翻訳版を公開しました。本編では異世界語で進んでいた会話を日本語表記にしています。なお、翻訳箇所がない話数には、タイトルに 〃 をつけてますので、本編既読の場合は飛ばしてもらって大丈夫です
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】妹に存在を奪われた令嬢は知らない 〜彼女が刺繍に託した「たすけて」に、彼が気付いてくれていたことを〜
桜野なつみ
恋愛
存在を消された伯爵家の長女・ビオラ。声を失った彼女が、唯一想いを託せたのは針と糸だった。
白いビオラの刺繍に縫い込まれた「たすけて」の影文字。
それを見つけたのは、彼女の母の刺繍に人生を変えられた青年だった──。
言葉を失った少女と、針の声を聴く男が紡ぐ、静かな愛の物語。
完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
婚約者を妹に奪われた私は、呪われた忌子王子様の元へ
秋月乃衣
恋愛
幼くして母を亡くしたティアリーゼの元に、父公爵が新しい家族を連れて来た。
自分とは二つしか歳の変わらない異母妹、マリータの存在を知り父には別の家庭があったのだと悟る。
忙しい公爵の代わりに屋敷を任された継母ミランダに疎まれ、ティアリーゼは日々疎外感を感じるようになっていった。
ある日ティアリーゼの婚約者である王子と、マリータが思い合っているのではと言った噂が広まってしまう。そして国から王子の婚約者を妹に変更すると告げられ……。
※他サイト様でも掲載しております。
治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです
ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?
【完結】異世界からおかえりなさいって言われました。私は長い夢を見ていただけですけれど…でもそう言われるから得た知識で楽しく生きますわ。
まりぃべる
恋愛
私は、アイネル=ツェルテッティンと申します。お父様は、伯爵領の領主でございます。
十歳の、王宮でのガーデンパーティーで、私はどうやら〝お神の戯れ〟に遭ったそうで…。十日ほど意識が戻らなかったみたいです。
私が目覚めると…あれ?私って本当に十歳?何だか長い夢の中でこの世界とは違うものをいろいろと見た気がして…。
伯爵家は、昨年の長雨で経営がギリギリみたいですので、夢の中で見た事を生かそうと思います。
☆全25話です。最後まで出来上がってますので随時更新していきます。読んでもらえると嬉しいです。
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる