見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら

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フェリーネは、ベールのせいもあるのとアンネリースと同じく顔を見ないようにしていて、気づいていなかった。

エデュアルドたちが必死になって探し出してくれ、侍医は身内感覚で2人を気遣ってくれた。


「このたびのことは、私の落ち度です。お2人を危険な目にあわせてしまいました。すぐにでも死んで詫びねばならないところですが……」
「やめて」


アンネリースは、すぐに止めていた。でも、最後まで聞いておくべきだった。エデュアルドは、死ぬつもりはなかったのだ。

ただ、部下の手前、失態をそのままにできずに詫びる気はあるのだが、護衛長として王宮につくまでは死ねないと言うつもりでいた。

だが、アンネリースはすぐにでも死ぬ気だとばかりに止めていた。

この時、エデュアルドは心優しいアンネリースなら、そうしてくれると思う気持ちが大きくなっていた。


「私にも落ち度がありました。ですから、詫びねばならないというなら、言葉と態度のみにして。……私のせいで、人が死ぬのは嫌です」
「アンネリース様」
「お願いです。私のためというのなら、生きて」
「っ、」


そんなことを言うのにエデュアルドが、どう思っているかなんて見ていなかった。

アンネリースは、護衛たちが簡単に命を扱うことに腹が立ちつつ、こんなことを思っていた。


(どうせ死ぬなら、美人のために死んで。詫びねばならないような人間ではないのよ。大事な命を私のせいで、無駄にしないで)


アンネリースの心の内を聞く者がいたなら、フェリーネだったろう。

美人のためはともかくとして、王女のために死ぬのならわかるが、それがそもそも間違えているのだ。

存在するのを認められたことのない王女でしかない。死んで喜ばれても、悲しむ者は殆どいない。

そんな存在だとわかったら、その後が怖いことになるとしてフェリーネも気が気ではなかった。

オリフィエルは、アンネリースたちが誘拐されてから、益々側にいるようになった。


「姫さんが、こう言ってんだ。グロテスクなもん見せんな。トラウマになったら、どうすんだ」
「……」


エデュアルドは、護衛長として不甲斐ないと思っていた。でも、同時にこの王女のことを何気なく見くびり始めていることに気づいていなかった。

フェリーネが毒見に慎重になるのも、よくわかった。

宿屋の主人に酒を飲み放題にしてもらって、それに眠り薬も混じっていたらしく、それを飲んだのは寝ている間に誘拐されていたのだ。

エデュアルドや他の護衛も、不寝番は飲まなかったが、料理にも入っていたようだ。

アンネリースたちは、眠り薬で寝落ちすることはなかった。そんなものは効いていなかったが、気づく者はいなかった。

オリフィエルは、今回のことで酒を飲みすぎないと心に決めたようだが、酒を断つことをしないところが、オリフィエルらしいと思えてアンネリースは楽しそうに笑っていた。

それにホッとする者もいれば、厳しい顔をする者やらがいたが、アンネリースが気づくことはなかった。


「姫さんは、笑ってる方がいいな」
「そう?」
「あぁ」


怖い思いをしたアンネリースが、明るく努めようとしていると思っていたようだが、アンネリースは誤解されて拐われたことに益々変な誤解をして、侍女と顔を隠すことに必死になったことに誰も気づくことはなかった。

この時、笑うアンネリースの顔を直に見てみたいとオリフィエルは思っていたが、それを口にすることはなかった。

絶世の美少女に興味を持つ日が来ようとは思わなかったのだ。

拐った連中を一番ボコボコにしたのは、オリフィエルだ。それこそ、眠り薬で寝かされたとわかって、眠気を吹き飛ばすのに己の足を刺して目を覚ましたくらいに激怒していた。

トラウマになっていたら、ボコボコではなく、頭と胴体を離していた。

でも、アンネリースがオリフィエルを見て……。


「来てくれたのね」
「っ、」


そんなことを言ったのに怒り狂っていたのが、ちょっと落ち着いた。安心した声を出したのだ。オリフィエルが来たなら、もう大丈夫と言わんばかりの声にグッときた。

だが、それほどまでにアンネリースのことを気にかけている自分にオリフィエルは気づきながらも、そんな素振りを見せることはなかった。


「ちゃんと手当てしろよ」
「……」


その怪我に気づいたのは、エデュアルドだけだった。


「そっちもな」


護衛たちも、目を覚ますのに似たりよったりなことをしていふ面々が多かった。それは、エデュアルドも例外ではなかった。

オリフィエルも、エデュアルドの心の内を見余っていたことに気づいていなかった。


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