見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら

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そんなことがあり、王宮に着いた時には王太子は例の令嬢を婚約者にしてしまっていた。

その辺のことをアンネリースは聞いていなかったため、ただ普通に驚いてしまった。

 
(王太子が、婚約している……? 私、婚約者になりに来たのではなかったっけ?)


アンネリースは混乱したが、出迎えに現れたはずの王太子は……。


「全く、どれだけ美人なのかは知らないが、こんなにゆっくりとお越しになるとは、何をしても許されると思っているようだな。そんな王女が、この国の王太子妃になれると本気で思っているのか?」
「……」


王太子が嫌味を言いたくなるのも無理はない。だが、それを聞いて多くの者が眉を顰めていた。

そもそも、まだ名乗りあってもいないのにこんなことを言う王太子にアンネリースは……。


(これじゃ、私は自己紹介すらできないわ。よほど、不満が蓄積されていたのは、よくわかったけど。それは、それで、王太子として挨拶してくれなきゃ、私にどうしろっていうのよ)


ここには、王太子以外もいた。ズラーッと並ばれて、外でどれだけ待っていたんだろうとアンネリースは変な心配をしていた。この王太子とここで待っているのは、拷問だったに違いない。

でも、だからといって、自己紹介すらしないでこんなことを言う王太子にもの申してくれても良さそうだが、誰もしてはくれなかった。

後ろに控えているフェリーネも、居心地悪そうにしていた。慣れていないのだ。アンネリースもそうだが、でも挙動不審にしてはいられない。

すると護衛をしていた面々が、あからさまに顔にだしていたが、それに王太子は気づいていないようだ。


「王太子殿下。アンネリース様は、国王陛下に呼ばれて、留学しにはるばるお越しなのですぞ。それにあの厄介な海流から、はるばる船に乗って来られた。具合を悪くして療養し、更には山賊に施したのが、気に入らないと売り飛ばされそうにまでなられたというのに。お身体を労らずにそのようなことをおっしゃるとは、アンネリース様。この国の者が皆、あぁではありませんぞ」
「っ、」
「そうですとも。アンネリース様、お身体は大丈夫ですかな?」
「えぇ、お気遣いいただきましたので」


その声に出迎えた者たちは、驚いていた。涼やかな声とは、まさにそれだった。最初の頃、エデュアルドたちもびっくりしたようだが、あからさまではなかった。


(まずい。私の声が不快なのかも……)


アンネリースは、そんな風に思った。これまた誤解でしかない。

だが、王太子は海流や誘拐うんねんのことをどうやら知らなかったようだ。

その横にいる彼の婚約者らしき令嬢も、これまた自己紹介もされていないまま、何か言おうとしていたが、すぐにやめた。仮面に見慣れないせいか。ずっと睨まれている気がする。


(年齢からしても、さっさと婚約してお妃教育をしてほしかったのかしらね。……私は、王太子妃になんてなりたくないから、正直ホッとしたわ。私は、学園で勉強をしたいだけだし)


王太子がそうしたのであって、アンネリースはフェイル国の王命に従っただけだ。彼に何を言われても、先に反故にしたのは、この王太子だからアンネリースが無下にされはしないはずだ。


(それも、バレなきゃだろうけど)


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