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しおりを挟む髪をバッサリ切ったせいか。髪に魅力があったかのように人があまり寄って来なくなった。それは、子息だけでなくて、令嬢たちも一線引いて遠巻きに私を見るようになっていたが、気にならなかった。
元より自分のことは自分でやらねばならない環境で生きてきたのもあり、私は学園で浮いていようとも平然としていた。悪口が聞こえてこないだけ、マシで私にはどうってことはなかった。
むしろ、清々しい気分になっていた。
「随分とスッキリしたな」
「っ、王太子殿下」
私は、突然話しかけられて不思議に思えば、そこにイネス国の王太子がいて、慌ててカーテシーをした。ちょっと不格好になったかも知れないが、驚いて固まるなんてことがなくてよかった。
「突然、話しかけてすまない。その髪型、とても似合っている」
「ありがとうございます」
私は、自分としては満足いっている髪型を褒められて嬉しそうに笑っていたのだが……。
「殿下。それでは、せっかくの黒髪を伸ばしてくれなくなってしまいますよ」
ボソッと側にいた子息が何を言うんだとばかりに王太子に言っていた。
それを私は聞き飽きていた。みんな短いのも似合うが、伸ばした方がもっといいかのように言うのだ。
義姉弟たちが、短いままでいるつもりだと周りに言ったのかもしれない。髪の長さに拘っていて、それにげんなりしていた。私の好きにさせてほしい。
「? それに何の問題があるんだ?」
「え? いや、その……」
「私は、髪を触られるのが好きではないから、短くする気持ちはよくわかるぞ」
「いや、殿下はそうでも……」
「わかります!」
私は、王太子の言葉に思わず賛同した。そこなのだ。そこを誰もわかってくれなかったのだ。
「ラウラ嬢も、苦手なのか? それなら、長くしているのは、大変だったな」
「……そんな、令嬢もいるんですね」
王太子の側近らしい子息は驚いた顔をしていたが、王太子は私の気持ちを物凄く早く理解してくれた。
やっとわかってくれる人が現れたとばかりに私は頷いていた。
「それなら、短いままでいればいい。髪飾りもカチューシャとかにしたら、それだけでも雰囲気が変わると思うぞ」
「カチューシャですか?」
「うん。あとは、イヤーカフのところに花飾りをつけたりするのも、似合うはずだ」
王太子が、ポンポンと似合いそうだと言うので私はびっくりしてしまった。
私はセンスが微妙なところがあるが、王太子はそういうのが得意なようだ。
「殿下。そういうのは、婚約者になってからなさった方が……」
「ん? お互い婚約者がいないからしてもまずくはないだろ?」
「え?」
私は、その言葉を聞いて、驚かずにはいられなかった。
「どうした?」
「いえ、殿下に婚約者がいないことに驚いておりました」
「ん? そんなに驚くことか? 私は、この通りだから、婚約者ができても長続きしないんだ」
私には、この通りの意味がわからなくて首を傾げた。
王太子は、やれやれと言わんばかりだった。これまで散々な目にあったかのように遠い目をしていたが、ふと私を見て感慨深そうにした。
「うん。令嬢とこれだけ話して怒らせなかったのは、初めてかもしれない」
「……」
どうやら、他の令嬢たちは王太子と話すと怒ることが多いようだ。
でも、私は怒ることなど何もなくて、首を傾げるばかりだった。何を怒る要素があるのかが全くわからなかった。
むしろ、私としては話しやすい男性でしかなかった。
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