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しおりを挟む私は、色々義弟がすっかり様変わりしたのに呆然としていた。
「ラウラ。どうした?」
「……人って、難しいですね」
「ん? そうか?」
「殿下は、そう思ったことはないのですか?」
「ない」
王太子は、考える素振りもなく即答した。
「難しいとは思わないが、面倒だと思うことはずっと続いている」
「?」
「ラウラ。美味しい茶葉を手に入れたのよ」
王妃がにこにことしたまま現れた。その横に国王もいて、髭を撫でながら……。
「ふむ、王妃よ。私も、まぜてくれぬか?」
「お仕事が終わったら、構いませんわ」
「終わるのを待っていたら、お茶には間に合わん」
「あの、お茶の時間の間なら、スケジュールが空いておりますので」
お付きの人が、王妃にではなくて、私の方にすがるように見つめながら言ってきた。何なら国王からの視線も感じる。そちらを見なくともわかるくらい、まぜてくれと訴えているのを感じた。
「王妃様。美味しい茶葉なら、みんなで飲んだ方がより美味しくなるかと」
「そう、ラウラが美味しくなると言うなら。陛下、その後はきちんと仕事をなさってくださいね」
「わかっている」
国王とお付きの人は、私に微笑んでいた。どうにも王妃は、私と2人っきりで過ごそうとしている。
「母上」
「あなたも、きちんと執務をこなせるなら、参加すればいいわ」
「言われなくともラウラがいるのなら、参加します」
結局、その後、王太子が面倒だと思っていることを聞けないまま、義弟が跡継ぎでなくなったことに驚いたり、アデル国の令嬢と婚約してあちらに婿入りすると聞いて、驚きの連続になるとは思いもしなかった。
養父母や義姉は、ずっと義弟のエドゥアールと何かと口論していた。その内容が、私のことだったようだが、私が義弟に同じような話ならしなくていいと言ったのも気に入らなかったようだ。
義姉は、私のせいではなくて、義弟の本性があぁだったのだと言ってくれていた。更には学園でも、義弟のような考え方に賛同した者はアデル国に嫁いで行ったりしているようだ。
明るい髪色が好まれるのにどうするのだろうかと思っていれば、みんなあちらでは髪色を魔法で変えて、それをひた隠しにして過ごしているようだ。
「ラウラ。君が気に病むことではない」
「ですが」
「あの国が、ずっとあぁなのは溜まり場なままだからだ。気に病んでいても仕方がないさ。不満をわかってくれる人たちといた方が幸せなんだろ」
「……そういうものでしょうか?」
「私も、よくわからないが、理解できない人間のことで悩むより、楽しんだ方がいいに決まっている。なにせ、私はずっと変わり者と言われてきているからな。同じように自分を隠していても、虚しいだけだ」
「確かにそうですね」
ラウラが、王太子の言葉にそう思ったのは確かだった。
「でも、人の悪口ばかりを言って幸せになるって、おかしな人たちですね」
「それ以外に何もないんじゃないか?」
「え?」
「何もないから、当たり散らして誤魔化しているんだろ」
「……」
王太子の言葉の中で、それが一番私はしっくりきた。血の繋がった家族が、私にしてきたことも、それで納得してしまった。
だから、許せることではないが、自分が標的になって妹や兄がどう思ったのだろうかと思わずにはいられなかった。
「でも、色のことでとやかく受け取りすぎなのは、どっちもどっちだと私は思うがな」
「私も、そう思います。そもそも、魔法で髪色を変えられるなら、黒髪にすればいいのに」
「ラウラ。魔法で、黒を生み出すのが一番難しいんだ」
「え? まさか、それだけのことで?」
「多分、それだけのことだ」
私は真実を知った気がして、しばらく遠い目をしてしまったが、王太子と婚約してから言いたいことや考えたことを口にできるようになり、王太子もあけすけなく答えてくれるので、笑顔が曇ることも減っていった。
まぁ、時折、おかしなことに突っかかれることになったりするが、それで動じることはなくなった。
こうして、私は運命の人と呼べる人との出会いによって幸せいっぱいの人生を謳歌することができたのだった。
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