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しおりを挟むマクシミリアンは、ベアトリスがおかしなことを繰り返していて、ユルシュルが多大な迷惑を被っているのを知っていた。
学園でも有名になっているが、ユルシュルが本当に困っていることをよく知っていた。……というか、王太子として、そういう配慮が必要なのだろうが、年頃のもっと相応しい人に存分にそれを活かしてほしい。
今のユルシュルには、家族のゴタゴタと一緒に王太子のわがままにも付き合わされているかのようになってきていた。
そもそも、ユルシュルにちょっかいをかけず、さっさと見た目もいいのだから、すぐにでも婚約者が作れるはずなのだ。
そう、ユルシュルに構わなければ今頃、素敵な婚約者といるはずなのにこれまた、幼なじみに構いすぎているというか。ユルシュルとしては、構わないでくれた方がいいように思うことも増えてきていた。
ユルシュルは、妹のことで手一杯なのだ。両親のことでもそうだ。妹のみならず、両親もおかしい。ちゃんと娘を見てくれてはいないのだ。周りに褒めちぎられるまま、ベアトリスの方が自慢の娘になってしまっていた。
両親が、ベアトリスのこともユルシュルのこともちゃんと見てくれていないから、こうなっているのだ。
学園で、色々やらかしているベアトリスの後始末のようなことをユルシュルが1人でいつもしていた。両親には、謝ることもできないと言われて馬鹿にされているが、それをして回っているのは、ユルシュルだけだった。
最初にベアトリスが学園で、姉と同じことをした時から咎められたことは何度もあった。でも、ずっとではなかった。
なぜか、妹は婚約しようとしている子息が、婚約者のために選んだ物を自分の物だと言ったことで、おかしな方に矛先が向かうことになってしまい、それにユルシュルは眉を顰めずにはいられなかった。妹が、中身を知っていたことに“もしや?”と思ったのは。すぐのことだった。
心当たりがあったのは、そこにはユルシュルしかいなかったからだ。まだ、姉にしかしていなかったし、ユルシュルもそんなことをする妹だと触れ回るようなことをしてはいなかった。
しかも、ベアトリスは、こう言ったのだ。
「彼が私のために選んだものよ」
「え?」
婚約者に喜んでもらおうと渡していた時にベアトリスは、わざわざ近づいてぶち壊すかのようにそう言ったのだ。
ユルシュルは、ぎょっとせずにはいられなかった。そんなことをしている本人は、婚約者からもらった物を持って固まる令嬢を本来はあなたの物じゃないのだと言わんばかりにしていた。
あまりにも堂々とし過ぎていた。それにユルシュルは、何を言い出すんだと割って入れなかった。
「はぁ?! 何を言うんだ! それは、彼女のために選んだものだ。おかしなことを言わないでくれ!」
まぁ、そうなる。必死に選んだであろう子息が、激怒した。当たり前のことだ。
だが、どんな中身なのかを漁って見ているため、まだ開けてもいない中身をベアトリスがべらべらと話した。
それに子息は顔を青くし、令嬢は恐る恐るそれを開けた。最初に受け取った時の笑顔はどこへやら。恐怖の箱を開けるかのようにしていた。
あんな風に婚約者からの贈り物を開ける者はますいないし、周りも見たことがなかったことだろう。ユルシュルだけは、見ていられなくなっていた。
ただ、ひたすら妹が見たものと違う物が入っていることを願わずにはいられなかった。でも、それには無理があった。
ベアトリスが言い当てた物が入っていて、それをもらった令嬢は、まさかそんなはずはないと思いつつ、疑心暗鬼に陥ってしまった。無理もない。
もらったはずの婚約者の令嬢が中身を知らないのにベアトリスが知っていたら、怪しく見えて疑いたくもなる。
一緒に買う時にいたのか。中身の話をする仲なのか。途端にそのプレゼントが見たくもないものに変わりそうになっていた。
「っ、違う! 私は、君のためを思って選んだんだ。こんな女、知らない。信じてくれ」
「……」
学園でも、羨ましがられるほどとても仲の良かった2人は、そこから亀裂が生じることになった。
「嘘、信じられない」
「あの子息が、二股かけてたの?」
ひそひそと見ていた者たちが、そんなことを言っていて、益々いたたまれない気持ちになってしまったのは、ユルシュルだった。
ベアトリスは、それに対して何の罪悪感もないようにしていて、子息に怒鳴り散らされようとも、本当のことなのにとあんまりだと泣き真似をした。
「そりゃ、中身を知ってるくらいなら、あぁしたくもなるな」
「まぁ、あの令嬢に中身の話をしてるのが悪いよな」
「っ、」
子息は、そんなことしていない!と言えば言うほど怪しく見えてしまっていた。
だが、こんなところで渡さずに別のところで渡していたら野次馬も少なく済んだし、ベアトリスも乱入しなかったと言う者もいた。
「確かに。わざわざ、あんなところで渡すって、変だよな」
「大勢にアピールしたくて、逆に失敗したのも、あぁしてほしかったのかもな」
「うわぁ、最悪だな。仲良くしたおいて、本当はそうではなかったのをどうにかするのに本命と見せかけていた方にあんな仕打ちして、別れたいってことだよな?」
「そうじゃないとおかしいだろ」
「確かに」
そんなこんなで、面白おかしく憶測が飛び交うことになった。
まぁ、確かにおかしいところは多々あるが、でもベアトリスがしたことが一番の元凶なのだ。
ユルシュルは、ベアトリスを怒ったが、これまた同じようなことを言うばかりで、2人に謝罪する気はないため、仕方がないとばかりにユルシュルが、謝罪した。
でも、2人共、姉のユルシュルが謝罪するより、本人が謝罪すべきだと最初はユルシュルに物凄く怒っていた。
特に子息の方が、大恥をかいたとばかりにユルシュルを怒鳴り散らしていた。
「あいつ、まだ怒ってんのか?」
「しかも、あれ、姉の方だろ?」
「浮気相手に怒れないんだろ。事実だから」
ユルシュルに怒りをぶつけたかっただけなのに。子息は、怒鳴れば怒鳴るほどに周りからどんどん誤解をされていった。
「くそっ、もういい! 関わらないでくれ!」
「っ、」
そう言われてしまっては、子息の方には謝れなくなってしまった。ならばとユルシュルは、令嬢の方に謝りにいった。
妹のしたことを許してほしかったのは、散々自分がされてきて、注意してもやめさせられなかった自責の念からだ。
どれほどまで令嬢のもとに通い詰めたことか。
「もういいのよ」
「ですが」
「もう、婚約解消することになったわ」
「っ!?」
あまりのことにユルシュルは言葉を失った。令嬢は疲れた顔をしていた。
2人は結局、仲違いして終わってしまった。必死にフォローし続けていたが、ユルシュルがしていたことで更に追い込んでしまったようだ。2人の家のご両親は、どちらも子息がしていたことを責め立てた。
「彼、浮気してたの」
「っ、」
「その証拠がたくさん出て来たから、もういいのよ」
「え?」
それを聞いて、ユルシュルの頭の中は、たくさん??って何のことだろうと思ってしまったが、彼は本当に浮気していた。
相手はベアトリスではない。別の令嬢として、自分より爵位が上の令嬢と結婚するために周りに好印象を残そうと必死になっていたようだ。
その癖、本命はそっちの浮気相手の方で、結婚しても浮気を続ける気でいることまで分かったらしい。
「もう、謝らないで。むしろ、あなたの妹さんには感謝しているの。あんな嫌な役を買って出てくれたんだもの」
「……」
「あなたも、彼のところに通いつめて追いつめてくれたからよ。余裕のなくなった彼が、どんな人なのかが解消する時によくわかったわ」
「……」
「あなたにも、お礼を言うわ。姉妹揃っていい方々ね」
そんなことないとは言えなかった。なぜか、物凄く感謝されてしまったのだ。何なら彼女の両親にも。
本来、謝罪すべき妹は、そんなことしていないの一点張りで、両親もベアトリスの言い分を信じ切っているせいで、謝罪の必要は全くないと思っている。
そして、結果がこれだったせいで、ユルシュルは益々、妹のことを貶めようとする姉にしか見えなくなって両親からは……。
「全く、妹がいいことをしてるのにそれを謝罪させろだなんて、本当に何を考えているんだか」
「ふん。妹の方ができると思われたくないのだろう」
そんなようなことを言われて、両親からすっかり信用を失くしてしまっていた。
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