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しおりを挟むそんな人たちのせいで、結果から見るとベアトリスのやることなすことで、化けの皮が剥がれていっているようになった。
それこそ、なぜ、そんなことがわかるのかと思うところだが、そんな連中ばかりなことに段々と夢も希望もなくなってきたのは、ユルシュルだけではないはずだ。
「なんか、婚約するのが怖くなってきたな」
「そうだな」
「ありえなさそうなのが、怪しく見えてきたわ」
「本当ね」
「仲睦まじくしているとバレたくない何かを誤魔化しているみたいよね」
そんなことを言う者も増えた。
色々とあったが、それでも最低最悪な婚約者だと気づかせてくれる存在として、学園では嫌な役周りをしてくれている令嬢だと思われて感謝されてばかりいる。
暴露される側は真逆なことを思ってベアトリスとその姉のユルシュルのことを恨んでいたが、そんな彼らに味方するのは同じく暴露された面々とそんな彼らと浮気していた者たちだけだった。
そちらは、そんなに大したことはないが、ベアトリスの方が学園では高評価となっていて、ユルシュルより上となっていた。ユルシュルがベアトリスが人様のものを勝手に覗いているのと嘘をついていることについて謝罪をしているのに結果的には……。
「あなたの妹さんのおかげよ」
「中々できることじゃないわ」
「ありがとう。まさか、あんな女だとは思わなかった。君たち姉妹のおかげだ」
「怒ったりして、申し訳なかった。妹さんにも、すまなかったと伝えておいてくれ」
令嬢から子息まで、相手が浮気をしていたり、都合の良い存在だったり思っていたことが次々と露見することになり、最終的にはどちらかから必ずユルシュルは詫びられたり、お礼を言われたり、感謝されたりした。
そのため、ユルシュルはある意味、別の苦労が絶えなくなっているところだった。突き詰めれば、おかしいのだ。勝手に中身を見ているベアトリスを咎めるのは、そのせいで婚約が台無しになったと思う面々だけだった。
それで、ユルシュルが妹のしたことで、謝罪すればするほど、なぜか、そんなことになっていた。その結果、婚約が解消になったり、破棄になったりすることが続いていて、そうでなかったことはこれまでなかった。
そう、ベアトリスが計算し尽くしてやっているのではなければ、運がいいのか。そんな人間しか学園にいないのだ。世の中、どうかしている。
頑張っても、婚約しているのは無理だと言うものばかりとなり、相手の本音やら本性を知ってしまったからだとやり直してくれとは言えなかった。
むしろ、そんな人からのプレゼントをもらわないことが正解だったかのようにされるのだ。全くわけがわからない。
その全てが、妹が人の持ち物を勝手に漁って見ていることが発端なのだが、結果的にそのおかげで良い方向に向いているからと誰も咎めないし、逆に褒めるのだ。
だから、ユルシュルと何も言えなくなってしまった。わけがわからないが、妹はどう見てもそんなつもりでやっているようには見えない。なのに嫌味な役を引き受けて最悪な相手と別れさせてくれていると学園では思われている。
最近では、それが広まってしまって、ベアトリスが漁っていても咎める者はいなくなってしまった。本当におかしな話だが、そうなっている。
それこそ、それを盗むわけではないのだ。中を確認しているだけで、綺麗に元に戻しているのだ。
そのため、ユルシュルの方がどうしたら良いのかがすっかりわからなくなっているのだが、そんなことをしている当の本人のベアトリスは、知らぬ存ぜぬを貫いていた。みんなに色々言われても、そんなことしていないかのようにしていて、変な暗黙の了解が生まれていた。だからこそ、ユルシュルはわけがわからないまま、ベアトリスの代わりにお礼を言われてしまっていて、今日まで過ごしてきた。
実は妹は、計算し尽くしてやっているのではないかとユルシュルも思い始めていた。あまりにも、そういうことばかりで、ハズレたことがないのだ。そうでなかったら、この国自体がどうかしている。
ベアトリスは、人の持ち物を漁って、盗むのでもなく、それの中身を確認して綺麗に戻すのみだ。そんなことをしておいて、していないと言い張るのもいつものことで、そこも妙なのだ。
そして、そんなベアトリスの言うことを信じる両親のせいで、実際に何があったかを知るより、周りから評判がよくなっていく妹を妬んでいるとユルシュルは思われている。
そんなことになっていて、ユルシュルは日々疑心暗鬼気味になっているからこそ、幼なじみの王太子のやることなすことにも、他の人にやればいいのにと思わずにはいられなかった。もう、手一杯すぎるのだ。
それなのに王太子は、ユルシュルの気苦労を正しく理解してくれているのかわからないことを言い始めた。
「ユルシュル。そろそろ、腹を括ったら、どうだ?」
「……」
ユルシュルとそんなことを言ってきた。何を言いたいのだろうかと思った。
側近は、いつの間にか、離れたところに立って、人が来ないかを見張っていた。そこまで離れなくても良さげだが、かなり離れたところにいる。王太子の側近も大変なようだ。
いや、この王太子の側近ともなるとこのくらいの配慮ができなければならないのかも知れない。サポートする側が大変なのは、一目瞭然だ。幼なじみなのだから、よくわかる。
多分、ベアトリスのことだ。だって、ユルシュルがどうにかしなくてはと思っているのは、それしかない。
「……そんなことにあなたを巻き込めないわ」
だって、証拠が何もないのだ。ユルシュルが思っているような妹ではないのかもしれない。そもそも、ユルシュルの物から始まったそれも姉を騙すためにしていたのかもしれない。
そのせいで、ずっと疑い続けている自分がユルシュルは嫌になってきていた。
それに姉だからと関わろうとしてきたが、ほっとけばよかったとすら思い始めていた。損な役回りを求められてもいないのだ。
「私としては、わけのわからない思考回路をしている肉親のせいで、婚約の話を断られ続けていることの方が、堪えるんだがな」
「……」
マクシミリアンの言葉にユルシュルは目をパチクリさせた。本当は、眉を顰めたかったがしなかった。
それを見て怪訝な顔を王太子はしていた。その顔をユルシュルはよく見たことがある。不満なことがある時だ。今のどこに不満があるというのか。ユルシュルには、よくわからなかった。
確かによく考えるとおかしすぎるのだ。もっと別の方法で、暴けばいいのにと思うばかりのことをしている。それが、ベアトリスのやることだからと理解しようとしても無理だと思っていたが、そこに何かあったのかもしれない。
いや、待て。今、王太子は何か重要なことを言った気がするとユルシュルは気のせいだったろうかと首を傾げた。
受け答えでおかしなところがあれば、何を言っていると言われているはずだが、そうなってはいない。でも、明らかにユルシュルは理解しきれていない何かがある気がした。
疲れ切った頭で考えるのは難しかったが、そんなこと言っていられない。
「なんだ?」
「今の言い方だと私のことを好きで、妹と両親のことで断られ続けて辛いと聞こえるんだけど……」
そんなわけがない。気のせいのはずなのに何を確認しているのか。そんなこと確認するほどではないではないこか。ユルシュルが、馬鹿なことをわざわざ聞いたことを詫びようとしたら、王太子の方が早かった。
「その通りだ」
「……え?」
「まだ、何かあるのか?」
「……」
ユルシュルが王太子であり、幼なじみの青年と言葉に心底驚いた顔を見せた。聞き間違えてはいなかったようだ。
それを見てまだ、何かあるのかと今度は、マクシミリアンの方が首を傾げた。いや、首を傾げるのはユルシュルの方のはずだ。本人は、自覚していないようだが、重大なことだと思う。
ただですら、疲れているのにそこからなのかと思わざるおえない。一番肝心なところのはずだ。
これは、もう、ここまで来たのだから、確認しなくてはならない。逃げても、どこまでも追いかけて来そうだ。この幼なじみは、とにかくしつこいのだ。
だから、言葉にすることにした。これまで、妹のことで言葉にされて初めて、そうなのかと思うことばかりだった。
それをここで活かしても良いのかもしれない。いや、活かすと言うのは違うのかも知れない。まずい。頭が既に混乱している状態で、こんな話を振ってくる王太子にこんな時だから、OKをもらおうとしているような気すらしてならなかった。
だって、そもそも、おかしいのだ。だって……。
「初めて聞いたわ」
「ん?」
2人は幼なじみだが、彼が王太子となってから、ユルシュルは敬語で話すようになった。それと名前も最初のように呼ばないようにした。
なのにそれを強引に毎回直されて、さっきのことで頭が大混乱しているせいで、久々に敬語が抜けたことに嬉しそうにしている。
ユルシュルとして、そうではないだろと思っているが、ユルシュルが何を言いたいのかが伝わっていないようで、マクシミリアンの方が不思議そうにしている。
これは、ユルシュルが悪いのだろうか?
身内うんねんと言っているが、今、目の前にいるこの幼なじみも中々だと思うのは無理はないと思う。
そこには、年相応の素の彼がいた。王太子となってからは気が抜けないかのようにしていたが、幼なじみが側にいると大概のことが手に取るようにわかる。この幼なじみは、こういう男だ。気配りなんてできたことがない。ユルシュルがしてほしいことをしてくれたこともない。しようともしてくれない。だから、自力でどうにかしてきた。
今回もまたユルシュルが何を言いたいのかがわからなかったようで、まだ首を傾げていた。それにいつからか、イラッとした。
そういう顔を令嬢たちに見せれば、キャーキャーと騒がれるだろう。見た目だけはイケメンなのだ。長く付き合うと残念っぷりが凄いことになるがなんてことをこれまたユルシュルは考えてしまっていて余計に疲れることになっていることに本人は気づいていなかった。
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