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しおりを挟む(マクシミリアン視点)
くそっ、忌々しい!
異母妹であるデルフィーヌが、あからさまに現れることはあれど、あんな風に自分の方が上だと言わんばかりの現れ方は、これまで一度もなかった。
側近の目をくぐって、どうやって近づいたんだ? しかも、護衛を付けろって、何の嫌味だ?
あいつ自身で、簡単にどうにかできるみたいに言われたのに腹が立って仕方がなかった。
それは、まるで……。
“そんなんだから、ユルシュルお姉様を任せられないのよ”
そう、言われているようで腹が立って仕方がなかった。
つまりは、母上や側妃であるデルフィーヌの母親が、ユルシュルとの仲を認めようとしないのは、そういうことなのか……?
そこまで行き着いて、ストンとパズルのピースがハマった気がした。思わず拳を握りしめずにいられなかった。
母上とデルフィーヌの母親は、ずっとそうだった。喧嘩ばかりしているのにユルシュルのことになると途端に仲良くなって結託する。デルフィーヌも一緒になって、私の邪魔をしていたのだ。
くそっ! 全然気づいていなかった。問題はユルシュルの妹とその両親だけだと思っていたのに。私に問題があるから、身内からも認められずにこんな風になっていたなんて思わなかった。
そこに行き着いてしまったことで、思わず側近に八つ当たりをしてしまった。
もしかするとユルシュルの妹も、同じように認められないから、あんな風にあからさまにおかしな邪魔をしているのではなかろうか。
そうか。そうでなければ、あんな目立つことはしない。そうなると私はあまりにも分が悪すぎる。なんで、そんなに私の邪魔をしたがるとは、もう言えない。いざとなったらユルシュルを守れないような男に任せられないと女性陣に見られていただけなのだ。
そこまで、嫌われるようなことをした覚えはないと思っていたが、そこに行き着かなかった時点で、ユルシュルの婚約者には認めてやらないと言葉にされずに行動でされていたのに全く気づかなかったということだ。
さらには、ユルシュルにまさか全く伝わっていないとは思わなかった。あそこまで鈍いとは思わなかった。いや、ここまで来ると鈍かったから良かったのかもしれない。
それによって、王太子は色んなことで凹むことになった。
「あ、あの、殿下。申し訳ありません。本当に何の気配もしなくて……」
「……もういい」
「ですが」
「すまなかった」
「え?」
「今のは、ただの八つ当たりだ」
「……」
そこから、今の自分ではユルシュルを守りきれないことを痛感したこともあり、言葉にしなくとも伝わっていると思っていたのが伝わっていないことと色んなことがいっぺんに見えてしまったことで、そこから自分がさらにやらかすとは思っていなかった。
誰からも文句を言われないように認めさせる!
そう思って、ユルシュルにではなく、外堀から埋めて想いは後から伝えればいい。ユルシュルの両親からなら、簡単なはずだ。
文句を言わせないようにして、強引に婚約してしまえばいいのだと思うようになったことで、とんでもないことになることをこの時の本人が一番わかっていなかった。
そこが一番直すべきところだったということがわからなかったのだ。
更にいうと認めていないというより、デルフィーヌと2人の母親たちは、それでマクシミリアンを構って遊んでいたに過ぎなかった。そこを勘違いしていた。
多少なことをしても、ユルシュルとマクシミリアンは婚約して幸せになるのを彼女たち3人は知っていたから、もっと上手くいくためにちょっかいをかけていたのだが、その思惑とは違う方向に向かうことを知らなかった。
そもそも、この3人がいる時点で、この世界が彼女たちの知っている世界と違うことに気づいていなかったせいだ。
そして、ユルシュルの妹のことをこの3人は、予定調和な行動をしていると思って見過ごしていたが、それを遥かに逸脱したことをしている原因が、この3人にあることにも気づいていなかったことで、彼女たちの望む結末は訪れることはなかった。
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