両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら

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残された王太子が何をしているかなんて気にもせず、またどこに行き着いたかなんて考えもせずにユルシュルは、デルフィーヌの話し相手になりながら移動して思っていたことと言えば、こんな妹が昔は欲しかったということのみだった。

そこに幼なじみの彼のことなどなかった。色恋よりも、家族のゴタゴタというか。妹のことが、ユルシュルの中では一番の悩みになっていたからにほかならなかった。

一番直してほしい悪癖が、長所のようになって結果的によかったと言われようとも、それが上手くいかなかったら悪く言われることになるのは、ベアトリスであり、両親であり、ユルシュルなのだ。

家の者みんなが悪く言われ、これまでのことだって手のひらを返したように悪く言われる日が来るに決まっている。

なのにそれを見ようとせず、やめようとせず、ユルシュルがどうにかしようとしているのも周りはわかっているようで、所詮は他人事なのだ。

ユルシュルは、段々と疲れてしまっていた。だからこそ、デルフィーヌのような妹だったらと昔は考えても仕方がないことに憧れていたが、今は違う。

それとこの2人のような母親とそんな王妃と側妃たちが何をしているかを全て把握して、介入すべきところを常にチェックしている国王のような父親がいる。ユルシュルも、そんな両親とは言わずとも、しっかりと正しく見てくれる片親が欲しかった。

だが、所詮はないもの強請りでしかない。それに国王としては、父親としてではなく、政を行うために必要だから把握しているだけで、夫としての行動であって、良い父親ではないのかもしれない。

……そう考えると普通の良い親がどんなものなのかとユルシュルは思わずにはいられない。

そんなことを思っていると……。


「ユルシュルお姉様? どうかなさったの?」
「何でもな……」
「お兄様と何かあったの?」
「いいえ。何もありません」


ないと言い切るのが、とても早かった。デルフィーヌは、兄のことだと思っていた。内心、ニマニマしていたことにもユルシュルは気づいていなかった。

異母兄には、邪魔しているのは頼りないからだと思われているが、デルフィーヌがそれでより一層、2人が婚約した後が、それを乗り越えると凄く甘々になるのを知っていて、それが見たいだけなのだ。

でも、彼らをいい方向へと向かわせるためにデルフィーヌが、母親たちを使って誘導していることも、彼女たちの目的が一緒であり、何なら同じ景色を見たかったからやっていることを知らない。

上手いこと誘導できていると思っているだけで、同じだということに気づいていなかったことで、王太子が受けるべき3倍以上の負荷をかけられて、行き着いた先が頼りないから、認めたくなくて邪魔されていると思い込んで、こじれることになるとは思っていなかった。

それともユルシュルの妹のベアトリスが、その影響なのか。それとも、彼女にも何かしらデルフィーヌたちのようなバグが起こっているのかも知らずに自分の役割以上のことをしたことで、こじれまくっていることに誰も気づいていなかった。

ユルシュルの何もないのも、2人がようやく恋仲になる少し前にこじれるイベントだと思って、深く追求しなかった。

そうデルフィーヌとその母親たちは、そのイベントを楽しみにしていた。

でも、ユルシュルや王太子は、そんなこと知らず、ユルシュルは恋愛なんてする余裕がなくなってしまっていて、はっきりと王太子である幼なじみが言われないことも相まって、やはりからかわれていたのだと思い込むことになろうとは、誰も思いもしなかった。そもそも、助けてほしいことをそのまま婚約したから、何が変わるというのか。

婚約したところで、自分のことは自分でしなくてはならない上に王太子妃となる勉強も増えるのだ。今ですら倒れそうになっているのにそんな余裕があるはずがないことを誰もわかってくれていなかった。

そもそも、ユルシュルは王妃と側妃が血なまぐさくならないようにするのに手を貸すだけで、王太子とデルフィーヌの母親だから必死になっているわけではなかった。

ましてや本当の妹があんなんだから、デルフィーヌに義理でも妹になってほしいとか。母親があんなんだから、王妃に理想の義母になってほしいと思うこともなかった。そんなことを望んではいないのだ。ユルシュルの望みは、そういうことではなかったことに誰も気づいてくれていなかった。

いいように見えているかもしれないが、ここにいる限り、ベアトリスとあの両親がつきまとうのだ。ここに残り続けたいと思う選択肢を消せるなら、それでよかった。もう、とっくに理由などなくなっているのだ。

ユルシュルは、ここから逃げ出したくなっていた。

そんなユルシュルのこの気持ちを誰も正しく理解してくれる人はいなかった。

みんな自分の見たい景色のために必死になりすぎていた。


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