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『認められた皇女』
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しおりを挟むディェリンは気づくとそこで眠っていた。
そこは、見慣れた天井が見えたから、いつも眠っている部屋だったはずだが、何やら違和感があった。
「?」
起き上がるとディェリンの周りは、たくさんの花々が所狭しと飾られていた。それは、庭で咲くものではなかった。
花影がいつも、遠くから取って来てくれている花が、そこにあった。
「綺麗」
「っ、」
「花影?」
「皇女様」
「あなた、話していいの?」
「はい。お許しをいただきました」
「そうなのね。とても、嬉しいわ」
「っ、」
「どうしたの? どこか、痛いの?」
花影が泣いていた。ディェリンは、そんな姿を見たことがなかった。
「いえ、あなたが……」
「?」
「あなたと話せて嬉しくて」
「ふふっ、私もよ。前は返事の代わりに物音をさせて、女官にネズミと間違われていたわね」
「っ、」
「そういえば、みんなは?」
「……それは」
「もしかして、2人っきりにしてくれているのかしら?」
「っ、それは」
「私、あなたとたくさん話したいことがあるのよ」
ディェリンは、花影が話し相手になってくれるのが嬉しくて他のことなんて、どうでも良かった。
年相応に純粋に楽しそうに笑うディェリンを見て、花影は泣きそうになりながらも笑った。
思惑ばかりの現実世界と違い、これが本来のディェリンの良さが全面に出ていた。
「花影。これを私も、取りに行ってみたいわ」
「……たくさん歩くことになりますよ?」
「いいのよ。あなたと色んな景色を見たいわ」
「なら、色んなところにお連れします」
「凄く楽しみだわ」
「皇女様?」
「……たくさん、景色を見て、満足したら、ここから出ましょう」
「っ!?」
「ごめんなさい。私のわがままに付き合わせて」
「そんなことは」
「ずっとは、無理なの」
「皇女様……?」
「今直ぐにでも、やめなきゃいけないのに。私は……」
そこで声がした。とても柔らかな女性の声だった。
「いいのよ。あなたたちの幸せを私は願う。それが、あなたの幸せだもの。私、それを叶えてあげられて、とても嬉しいのよ」
その声を花影は知っていた。もう、会えないと言われていたから驚いてしまった。
「駄目よ。何にでも終わりは必要よ」
「……」
「そうでないと次が始まらないもの。それに私だけが幸せになるのは、嫌よ」
「……」
「あなたの幸せを私がどれだけ夢見てきたことか。私だけが幸せになるなんて、できないわ」
ディェリンは当たり前のように返した。その声の主が、もう1人の皇女だと知っているかのようだった。
その世界には、ディェリンと花影しかいなかった。
眠る必要もなく、食べることも必要のない世界。
2人しかいない世界で、2人は納得いくまで語らい、色んなところに出かけた。
何をしていても飽きることなどなかった。楽しくて仕方がなかった。童心に返ったようにして遊び回ったりもした。
そして、満足いくまで、それをしたら、2人で眠りについた。
「私の愛しい花影。来世で逢いましょう」
「はい。ディェリン様。また、あなたを探してみせます」
「……ありがとう。幸せな時間を過ごせたわ」
「ありがとうございました」
「どういたしまして」
「ねぇ、すぐに追いかけて来ちゃ駄目よ。あなたも、幸せになって。それが、私の願いなのだから」
「……わかっているわ。2人で幸せになりましょう」
「えぇ、来世こそ、2人で叶えましょうね」
声の主に2人は礼を言って眠るように光に包まれた2人は来世に旅立った。
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