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『隠された皇女』
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しおりを挟む年頃となり、街で働き者の娘として評判の看板娘となっていた。
その料理屋は、いつも賑わっていた。
(今日も繁盛してるわ)
店が賑わうのを見るのが、リーシーは嬉しくて仕方がなかった。義父の料理は街一番だとすら思っていた。
だが、ここではリーシーの話題が多い。
「リーシーちゃん、学び舎で、また一番になったんだって?」
「私、勉強が好きだから」
リーシーは気さくで、愛想よく、着飾らなくとも、滲み出るような気品がありながら、それを鼻にもかけはしなかった。
少なくとも、それを悟られるようなことはなかった。上手く隠せとリーシーの母が教え込んだからだ。
(ここで生きていくのには、あまり必要ではないと思っていたけど。どこに住んでいても、相手は人だものね)
リーシーは、そんなことを考えているような顔をせずにはたらいていた。
母親が元貴族なこともあり、素朴な格好をしていても、リーシーはその辺の町娘よりも人目をひいた。
でも、本人にそんな自覚は欠片もないように見えて、物凄く気を使っている。
なにせ、母がわざとそうではない化粧をして器量を落としていたくらいだ。
リーシーも、この料理屋で必要な器量におさえて化粧をしている。そんなことしているようには見えはしないだろう。
それでも、年頃だから、それなりに化粧っ気を出し始めた風にはしている。これが中々大変だ。
「それにまた綺麗になって、こりゃ貴族の坊っちゃんがこぞって求婚しに来そうだ」
「あ゛? そうなのか?」
強面の男が、凄い顔をした。この男は前に料理にいちゃもんを付けた事がある男で、そうやって飯をタダで提供させて、たかっていたが、もうしていない。ここだけでなく、他所でもしてはいない。
以前、ここでそれをやって、リーシーがあまりにも申し訳なさそうに謝罪したからだ。義父が料理して、運ぶ途中にそうなったのだろうと誠心誠意、謝罪した。
そんなわけないだろと腹の中で、罵詈雑言を浴びせかけていても、顔や態度には決して出しはしなかった。使い分けはバッチリだ。
母も、そこまでになるとは思っていなかったようだが、やり過ぎだとは言われていない。
義父の料理は職人として確かなものだから、そんな粗相をするのは、リーシーしかいないと言ったのだ。
「本当に申し訳ありません!」
「っ、」
この強面は、そこまで謝罪されたことがなかった。面倒そうにされたり、怖がられたりして、新しい料理はすぐに運ばれて来た。
でも、リーシーはあまりにも丁寧に嘘をついているのは明らかなのに自分1人が悪いからと代金はタダでいいと言い、その分は自分が他所で、働いて来るとまで言ったのだ。
義父の料理を台無しにしたのは、自分だからと今にも泣きそうになりながら、そんなことを言われれば、強面にも欠片の良心が粉々になる。
まぁ、そこが狙いだったのだが。
「だぁ!! 悪かった!」
「?」
きょとんとした顔をリーシーはした。
「俺が、嘘ついたんだ!」
「え?」
「だから、そんなことしなくていい!」
「嘘……?」
リーシーは、嘘と聞いて傷ついた顔をした。強面は、ぐっと言葉につまり、こう言った。
「あぁ、嘘だ。も、持ち合わせなくてな」
(そう来たわけね)
リーシーは、それに乗ることにした。この店に二度と来なくなっては困る。
(私に謝ってくれたから、このくらいにしてあげようかな)
謝らずにグダグダ言うなら、泣いていた。
「なんだ。お兄さん、お財布の中身を忘れて来ちゃったのね。それなら、そうと言ってくれたら、よかったのに」
「お、怒ってねぇのか?」
「? 困ってるだけでしょ? 大丈夫。中身が忘れずに入っている時に払いに来てくれればいいのよ」
「っ、!?」
「お兄さん、いくら恥ずかしかったからって、そんなことしちゃ駄目よ」
そんなこんなで、きちんと説教をして、他にもうっかりしたところがあるなら、一緒に謝りに行ってあげると言えば、自分でできると言って改心した。
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