歴史から消された皇女〜2人の皇女の願いが叶うまで終われない〜

珠宮さくら

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『隠された皇女』

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「旦那。リーシーちゃん、強ぇな」
「おぅ。お前らも、嘘つくなよ。あの、笑顔で説教するぞ」
「……ちょっといいかも」
「あ゛? お前は、こっちで説教するか?」


ボキボキと指を鳴らすのを聞いて、客は震え上がった。


「っ、いや、何でもない、です」


まぁ、そんなこんなで、その時にリーシーがにっこりと笑って何事もなく、たくさん食べて頑張ってね!と言われた強面は本気で頑張って職を見つけて、それ以来、ここに通い詰めている。

何気にリーシーに変な虫がつくどころか。寄り付くのすら、威嚇するほどで、その効力は十分だ。


(ちょっと、十分すぎるかもしれない)


今も、その迫力は確かなもので、見慣れない者が、ひっ!?と悲鳴をあげていた。

それを見聞きしていないかのように別の客にリーシーは答えた。

「そんなことないわ。みんな、皇女様のことで持ちきりだもの」
「なんだ。そうか。……見る目のねぇ奴らばっかだな」


(小さい声でも、バッチリ聞こえてるわよ。そんなのに見初められても迷惑なだけよ) 


ぼそっと強面がそんなことを言って聞こえた面々は頷いた。

だが、リーシーは気づかないふりをした。ここは、やり過ごすのが一番だ。


(噂でしか聞いたことないけど、本当にかすりもしないのよね。私は会わないようにしているわけでもないのに。まるで、何かに会わないようにされているみたい。……まぁ、そんなわけないわよね)


男女の学び舎は本来別々だが、皇女は特例でどちらにも通えることになっている。

それは、数百年前にこの国を命を賭してまで救ったからこそだ。皇女には、幸せになってほしいから、伴侶は自分で選んでいいことになっている。

だからなのか。もっぱら皇女は男子の方にいるとリーシーは聞いていた。どうやら、本気で伴侶を探しているようだ。確かに学び舎くらいしか、皇女には出会いの場がないのだから、仕方がない。


(でも、そんなところで猫被った男なんか、大したことないに決まってるのに。お忍びで、街にでも来ればいいのに)


そんなことをリーシーは考えてしまった。


「タイミングが悪かったね。数年違えば、リーシーちゃんが求婚されて大変だったろうに」
「いや、リーシーが気づいてないだけだと思うぜ」
「あぁ、確かに」


常連たちは、たまたま入って来た若者が顔を赤らめながら、リーシーに注文を聞いてもらって嬉しそうにしているのを見ていた。

それを強面がギロッと睨めば、赤くしていた頬が、真っ青になっていく。


(全く、客が来なくなったら、どうするのよ)


「あの、大丈夫ですか?」
「っ、」


リーシーは、この通り鈍い女の子を演じている。いつもこんな感じだ。強面のやることなすことで、鈍い女の子をやらざるおえない。

気の弱い連中は、それで逃げてくか。話せなくなって今みたいに頷くだけだ。

強面にやんのか!?と喧嘩を売った者をみたことがない。


「おい、やりすぎんな。金づるがいなくなったら、この店が傾くだろ」
「金づる言ってる、あんたが一番まずいだろ」


そんなことを常連はいいから、やるなとは言わなかった。更に店主が、これだ。


(何か。真面目に働いている私が馬鹿みたいよね)


リーシーは、そんなことを思わずにはいられなかった。

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