32 / 50
『隠された皇女』
8
しおりを挟む何とも平和だが、そこに誰もが聞きたがっていたが聞けずにいたことを聞く者が現れた。
「それより、お母さんの具合は、どうなんだい?」
その話題に店中の初めて来たもの以外が、耳をそばだてた。
「働きすぎたみたい。家で休んでれば、大丈夫だって本人は言ってるんだけど。お医者様に診てもらってほしいんだけど……」
医者にかかるとそれなりのお金が必要になる。その分を別のことに使ってほしいのだ。それが痛いほどわかってしまい、無理に診せるべきだとは言えなかった。
(医者嫌いには見えないけど、やっぱりお金のことだよね。そんなお金あるなら、本が読みたいって煩いんだよね)
そんな程度の元気はある。
「働きすぎちまったんだね。リーシーちゃんも、気をつけないと駄目だよ」
それにリーシーは頷いた。
少し前から、リーシーの母の具合がよくなかった。そのため、学び舎にも、毎日通えずにここの手伝いをしていたが、成績はいいままだ。それこそ、幼い頃からの英才教育の賜物だ。
今更なものばかりだった。でも、庶民はそれではまずいから、必死に勉強している風にしている。
(まずったのよね。試験で、一番になっちゃったんだもの)
そんな大した試験でなかったから、サラッと回答したら一番になってしまったのだ。
そこから、貴族の令嬢や庶民の娘と仲良くなるのに時間を費やしたからこそ、どちらとも仲良くなれた。
(流石に学び舎に通っている理由が、勉強でなくて同年代の同性の友達作りとは思わないものね)
そんなこんなで、毎日通えていないから、皇女にも会えていない。
どんな方なんだろうとは思っているが、信じられないくらいのすれ違いをしていた。
リーシーは、そのことを学び舎で友達になった女子たちに聞いてみるも……。
「あー、なんか、近寄りにくい感じで、話しかけられる雰囲気じゃなかったわ」
(オーラってやつかしら? やっぱり、皇女というだけあって、凄い方なのでしょうね)
「リーシー。会わなくて正解よ」
「?」
その意味するところが未だにわからないが、最近は男子の方ばかりで、女子の方に現れないのでホッとしているようだ。
やはり皇女がいると緊張してしまうのだろう。なんてことをリーシーは考えていたが、実際は……。
「リーシーの方が、美少女だったわ」
「そうよね。化粧をしたリーシーが、凄かったもの」
何気に素材がいいとわかって化粧をしたら、化けたのだ。いや、リーシーからしたら、元々知ってると言うところだが、女子たちは自分たちが見つけた逸材に興奮していた。
仲良くなる前にそれがバレていたら、こんな感じにはなっていなかったはずだ。
「あれを見たら、世の男の子たちは、リーシーに恋しちゃうわよね」
「えぇ、あんなお化粧して、料理屋を手伝ってたら、もっと大変なことになっているわよ」
なんてことをリーシーが学び舎に行けない時に話題にされているとは思いもしなかった。
みんなリーシーのことを気に入っていた。困っていると助けてくれるのだ。他の友達だと思っていた者が、そそくさといなくなろうとも、大して知らなくとも、困っていると近づいて来てくれるのだ。
その辺に、染み付いたものがあるとは思いもしなかった。
「今日は、誰がリーシーの分を書く?」
「私が書いて届けるわ」
その日の授業を分担して、彼女の分を書いて、お店まで届けていた。
「このまとめたのを見て、成績が一番なのにはびっくりよね」
「本当よね。……あの子が、貴族だったら、兄弟を紹介しているところよ」
「私もよ」
貴族たちは、そんなことを言っていた。
「あら、お料理屋さんには身なりのよい若い男性が何人か、通っているって聞いたけど?」
「え? そうなの!?」
「リーシーのお母さんが、元貴族らしいわ」
「あら、私はお父様が元武官と聞いたわ」
「「「「「「……」」」」」」
そこまで話していた女性たちは、それにこんなことを思った。
「……もしかして、駆け落ちしたのかしら?」
「ありえるわ! だって、リーシーもだけど、お母様も凄い気品がある方だったわ」
そんな感じで、リーシーのいないところで、おかしな誤解されていた。
確かに母は、元後宮の側妃だ。
義父もまた元貴族だが、この2人の間に生まれた子供ではない。
駆け落ちしたいほど、想い合っていたが、リーシーの母のジンリーが皇帝の側妃になると決まって別れたのだ。
それをリーシーは、知らなかった。義父が、ジンリーの子供は自分の娘だと言ってくれたのを覚えていて、それが嬉しかった。
30
あなたにおすすめの小説
アクアリネアへようこそ
みるくてぃー
恋愛
突如両親を亡くしたショックで前世の記憶を取り戻した私、リネア・アージェント。
家では叔母からの嫌味に耐え、学園では悪役令嬢の妹して蔑まれ、おまけに齢(よわい)70歳のお爺ちゃんと婚約ですって!?
可愛い妹を残してお嫁になんて行けないわけないでしょ!
やがて流れ着いた先で小さな定食屋をはじめるも、いつしか村全体を巻き込む一大観光事業に駆り出される。
私はただ可愛い妹と暖かな暮らしがしたいだけなのよ!
働く女の子が頑張る物語。お仕事シリーズの第三弾、食と観光の町アクアリネアへようこそ。
【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。
里海慧
恋愛
わたくしが愛してやまない婚約者ライオネル様は、どうやらわたくしを嫌っているようだ。
でもそんなクールなライオネル様も素敵ですわ——!!
超前向きすぎる伯爵令嬢ハーミリアには、ハイスペイケメンの婚約者ライオネルがいる。
しかしライオネルはいつもハーミリアにはそっけなく冷たい態度だった。
ところがある日、突然ハーミリアの歯が強烈に痛み口も聞けなくなってしまった。
いつもなら一方的に話しかけるのに、無言のまま過ごしていると婚約者の様子がおかしくなり——?
明るく楽しいラブコメ風です!
頭を空っぽにして、ゆるい感じで読んでいただけると嬉しいです★
※激甘注意 お砂糖吐きたい人だけ呼んでください。
※2022.12.13 女性向けHOTランキング1位になりました!!
みなさまの応援のおかげです。本当にありがとうございます(*´꒳`*)
※タイトル変更しました。
旧タイトル『歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件』
置き去りにされた恋をもう一度
ともどーも
恋愛
「好きです。付き合ってください!」
大きな桜の木に花が咲き始めた頃、その木の下で、彼は真っ赤な顔をして告げてきた。
嬉しさに胸が熱くなり、なかなか返事ができなかった。その間、彼はまっすぐ緊張した面持ちで私を見ていた。そして、私が「はい」と答えると、お互い花が咲いたような笑顔で笑い合った。
中学校の卒業式の日だった……。
あ~……。くだらない。
脳味噌花畑の学生の恋愛ごっこだったわ。
全ての情熱を学生時代に置いてきた立花美咲(24)の前に、突然音信不通になった元カレ橘蓮(24)が現れた。
なぜ何も言わずに姿を消したのか。
蓮に起こったことを知り、美咲はあの頃に置き去りにした心を徐々に取り戻していく。
────────────────────
現時点でプロローグ+20話まで執筆ができていますが、まだ完結していません。
20話以降は不定期になると思います。
初の現代版の恋愛ストーリーなので、遅い執筆がさらに遅くなっていますが、必ず最後まで書き上げます!
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
【完結】赤い薔薇なんて、いらない。
花草青依
恋愛
婚約者であるニコラスに婚約の解消を促されたレイチェル。彼女はニコラスを愛しているがゆえに、それを拒否した。自己嫌悪に苛まれながらもレイチェルは、彼に想いを伝えようとするが・・・・・・。 ■《夢見る乙女のメモリアルシリーズ》1作目の外伝 ■拙作『捨てられた悪役令嬢は大公殿下との新たな恋に夢を見る』のスピンオフ作品。続編ではありません。
■「第18回恋愛小説大賞」の参加作品です ■画像は生成AI(ChatGPT)
【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!
Rohdea
恋愛
──私は、何故か触れた人の心の声が聞こえる。
見た目だけは可愛い姉と比べられて来た伯爵家の次女、セシリナは、
幼い頃に自分が素手で触れた人の心の声が聞こえる事に気付く。
心の声を聞きたくなくて、常に手袋を装着し、最小限の人としか付き合ってこなかったセシリナは、
いつしか“薄気味悪い令嬢”と世間では呼ばれるようになっていた。
そんなある日、セシリナは渋々参加していたお茶会で、
この国の王子様……悪い噂が絶えない第二王子エリオスと偶然出会い、
つい彼の心の声を聞いてしまう。
偶然聞いてしまったエリオスの噂とは違う心の声に戸惑いつつも、
その場はどうにかやり過ごしたはずだったのに……
「うん。だからね、君に僕の恋人のフリをして欲しいんだよ」
なぜか後日、セシリナを訪ねて来たエリオスは、そんなとんでもないお願い事をして来た!
何やら色々と目的があるらしい王子様とそうして始まった仮の恋人関係だったけれど、
あれ? 何かがおかしい……
出ていってください!~結婚相手に裏切られた令嬢はなぜか騎士様に溺愛される~
白井
恋愛
イヴェット・オーダム男爵令嬢の幸せな結婚生活が始まる……はずだった。
父の死後、急に態度が変わった結婚相手にイヴェットは振り回されていた。
財産を食いつぶす義母、継いだ仕事を放棄して不貞を続ける夫。
それでも家族の形を維持しようと努力するイヴェットは、ついに殺されかける。
「もう我慢の限界。あなたたちにはこの家から出ていってもらいます」
覚悟を決めたら、なぜか騎士団長様が執着してきたけれど困ります!
【完結】精霊姫は魔王陛下のかごの中~実家から独立して生きてこうと思ったら就職先の王子様にとろとろに甘やかされています~
吉武 止少
恋愛
ソフィアは小さい頃から孤独な生活を送ってきた。どれほど努力をしても妹ばかりが溺愛され、ないがしろにされる毎日。
ある日「修道院に入れ」と言われたソフィアはついに我慢の限界を迎え、実家を逃げ出す決意を固める。
幼い頃から精霊に愛されてきたソフィアは、祖母のような“精霊の御子”として監視下に置かれないよう身許を隠して王都へ向かう。
仕事を探す中で彼女が出会ったのは、卓越した剣技と鋭利な美貌によって『魔王』と恐れられる第二王子エルネストだった。
精霊に悪戯される体質のエルネストはそれが原因の不調に苦しんでいた。見かねたソフィアは自分がやったとバレないようこっそり精霊を追い払ってあげる。
ソフィアの正体に違和感を覚えたエルネストは監視の意味もかねて彼女に仕事を持ち掛ける。
侍女として雇われると思っていたのに、エルネストが意中の女性を射止めるための『練習相手』にされてしまう。
当て馬扱いかと思っていたが、恋人ごっこをしていくうちにお互いの距離がどんどん縮まっていってーー!?
本編は全42話。執筆を終えており、投稿予約も済ませています。完結保証。
+番外編があります。
11/17 HOTランキング女性向け第2位達成。
11/18~20 HOTランキング女性向け第1位達成。応援ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる