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『隠された皇女』
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しおりを挟むハオランは兄のことが嫌いなのではない。だが、ここに来ていることを知らなかった。
「凄くいい人ですね」
「っ、」
兄のことを思いながら、そんなことをリーシーが言うのにイラッとした。
「あの人が、何をしたんだ?」
「……忙しいでしょうに今のままじゃ、私まで母のように倒れるって言って、色々の案を持って来てくれるんです」
「案……?」
ハオランは、あの兄がそんなことをしているとは思わなかった。
「私1人でどうこうできるようなら、自分がとっくにできてるって言われてしまいました」
「は?」
あの兄は一体、何の話を彼女としているんだと眉を顰めずにはいられなかった。そんなことしているなんて聞いてもいなかったのだ。
「全く、その通りですよね。私みたいな小娘にできることを城仕えの文官の方が思いつかないわけないのに」
「リーシー」
悲しそうにするのを見て、兄に殺意がわいた。家に帰ったら一発殴らないと気が済まない。彼女にこんな顔をさせるなんて、ハオランは許せなかった。
「それで、私、いい案を思いついたんです。なので、お兄様に答え合わせをしたいとお伝えください」
「……」
リーシーに頼まれたことは何でもやる気でいたが、ハオランはこの頼みほど聞きたくないと断りたかったことはなかった。
「駄目、ですか?」
「っ、いや、構わない」
「ありがとうございます!」
「……」
そんなこんなで、断りきれなかったハオランは、兄に伝言を伝えれば……。
「そうか。それは、楽しみだ」
「……」
それだけで伝わる間柄なことにこれまたイラッとした。
リーシーとそんなに仲が良いとは知らなかったのだ。
「どうした?」
「好みなのか?」
思わず、兄にそう聞いていた。きょとんとした兄にしまったと思ったが、兄は……。
「そんな顔するな。私の好みじゃない」
「……」
「なんだ? 詳しく聞きたいのか?」
「……なら、何で、立ち寄ってるんだ?」
「あの娘のしていることは、私が考えたものに似ているんだ。だから、困っていることがあればと思っているんだが、関わらせてくれないんだ」
「?」
「城仕えは仕事が忙しいだろうとまで言われた。あぁまで言われると是が非でも関わりたくなる」
「……」
そう言っている兄は、とても楽しそうにしていてハオランは好みではないにしても、そんな顔をする兄を見たことがなかった。
「大体、忙しいだろうからと関わっても無駄みたいに他の能なしの文官と同じように思われているのが、癪でな」
「……」
そうだった。兄はこういう人だったと思ってしまった。
だからといって、2人っきりにさせられないと一緒にくっついて行ったら、とんでもない案を見せられた。
「窮困している子供の1食分を支払って、支援していくのか?」
「そうです。そして、払えるようになったら、食べられない子供のために支援していくんです。支払いでなくとも、子供でもできる仕事を任せて、それができたら、1食分を提供してもらえるとか。そんな感じの食事処ができたら、いいなって。もちろん、街の人たちだけだと難しくなると思うので」
「国からの補助金があてがわれたら、違うだろうな。子供が、大国のどこに住んでいても、その支援を受けられると違うな」
そんな壮大な話だとは思わなくて、ハオランは居心地悪くて仕方がなかった。
たった1食。されど、成長期の子供たちには大事な食事だ。子供にもできるもので働いたら、1食は食べられる。それは、励みになるし、自分も大人になって余裕ができたら、子供を支援できる。
「そうか。そんなこと思いつかなかった」
「答え合わせになりましたか?」
「あぁ、お前がしたいことが、ようやくわかった。お前は、国がどうなろうとも、人々がいる限り覆らないものを好むんだな」
「っ、」
リーシーは、それに初めて動揺した。でも、花が咲き誇るかのような満面の笑顔を見せたのだ。
「「っ!?」」
その笑顔は、凄まじい破壊力だった。何をしても頭から離れなくなるほどだった。
その瞬間だった。
「ハオラン。悪い。好みじゃないと言ったが、気に入った」
「は?」
「嫁にほしい」
「はぁ!?」
「え?」
リーシーは、よく聞こえてなかったようだ。兄弟喧嘩が始まったのかとオロオロしていた。それは、いつもの彼女だった。
「お客さん。何の話ですかね?」
「「っ!?」」
店の厨房から、鬼神のようなのが出て来て兄弟でビビり倒した。
何ならガラの悪い連中よりも、厳つい。存在感が凄まじいものが現れた。本来なら、厨房なんかで気配を消して入られないような何かが出て来た。
「義父さん、珍しいね。厨房から出てくるの」
「あー、このなりだから、いいとこの坊っちゃんを怖がらせるといけないからな」
「「……」」
リーシーと全く似ていない姿に絶対に母親に似たんだと思いつつ、この人似てなくてよかったと兄弟揃って心の内で、神に感謝したのは内緒だ。
そして、いいとこの坊っちゃんが、義娘に何の用だと出て来たのだ。
「で?」
「素晴らしい娘さんですね」
「えぇ、自慢の義娘です。妻によく似てるんで、どこの馬の骨にくれてやる気はありません」
「「……」」
何の話も何もない。バッチリ聞かれていたのだ。兄弟は、顔色が悪くなっていたが投げ出すことはなかった。ここで逃げたら、リーシーを諦めることになる。
「義父さん?」
「お前、どっちが気に入ったんだ?」
「え?」
(それを今、聞くの?)
リーシーは、本気できょとんとした。
そう言いながら、指をボキボキさせている。兄弟の顔色が悪くなっていく一方となっている。
「どっちって、何で選ばなきゃいけないの?」
「「「……」」」
リーシーは、どっちもじゃ、駄目なの?と言うのに義父の方のみならず、ハオランたちも固まった。
(今、聞かれても、両方を選ぶと思うのだけど)
そんなことをリーシーは本気で思っていた。
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