他人の婚約者を誘惑せずにはいられない令嬢に目をつけられましたが、私の婚約者を馬鹿にし過ぎだと思います

珠宮さくら

文字の大きさ
10 / 10

10

しおりを挟む

ニヴェスは、ショックから立ち直れずにいた。ニヴェスにとって小説は宝物だった。切っても切り離せないものとなっていた。

だが、アミールカレは妹に大事にしている婚約者のプレゼントを台無しにされたから元気がないままだと思っていた。

そのため、出かける度に何かとプレゼントしてくれようとしたりしたが、ニヴェスはそれに困った顔をすることが多かった。

それをアミールカレは、申し訳なく思っていると解釈していたようだが、ニヴェスとしてはそう言う物より、本を買い揃えたくなっていた。

確かに妹に取り上げられていて、アミールカレからの物も返すのだが、癪だからと捨てた物も多かった。その辺のことはショックではあるが、割合はほぼ小説の方に傾いている。ただ、捨てるならわかるが、ボロボロにしたことがショックでならなかったのだ。

その辺を察したマルチェッリーナとアデーレとベアトリーチェが、前にニヴェスが持っていたものではなくて、自分たちのお気に入りの本をプレゼントしてくれた。


「ありがとう」
「いいのよ」
「それを読んだら、語り合いましょうね」


ベアトリーチェからも、これでもかと本が届いた。ベアトリーチェからもあるだろうが、彼女の父親が娘とのわだかまりを解消してくれた恩人とでも思っているようで、奮発してくれたようだ。

それがまた凄かった。色んな国の言葉で翻訳されたもので揃えられていたのだ。それを読みたいがために語学にめっきり強くなった。

それに感心したのが、アミールカレだ。


「ニヴェスは、本が本当に好きなんだな」


どんなジャンルの本を読んでいるかをアミールカレは知らずに独学で語学を学ぶきっかけが本だったことにニヴェスを尊敬するような眼差しで見ていた。

それにニヴェスは、苦笑するしかなかった。色んな誤解しかなかったが、その誤解をニヴェスが解くことはなかった。

幼なじみたちも、そうだ。婚約者たちには、ひた隠しにしていた。何ならバレそうな時にお互いが庇い合うまでになっていた。

更にアデーレとアミールカレの妹も加わるようになり、次第に同じような本を愛読している女性は増えていった。


「新刊、読みました?」
「もちろん。読んだわ」


お茶会をしては、小説の話でもちきりになるほどだった。ニヴェスが、ずっとほしかった語りの場が出来上がっていた。

アミールカレの方は、相変わらずニヴェスを溺愛していて、結婚してからも変わることはなかった。

ニヴェスは、結婚してから小説より家族が大事になっていった。

どこで見かけてもニヴェスは仲睦まじい姿を見かけたと言われるようになり、格好いい旦那で羨ましいと言う夫人たちの殆どに言ってやりたかった。

ざまぁみろと。

羨ましがられるたび、ニヴェスは妹に心の中で感謝していた。誰もが、自分より可愛い子息と婚約したくないと言っていたが、月日が経った今、そんなことを誰も言っていなかったみたいに羨ましがる面々にニヴェスはそんなことを思っていたが、素知らぬ顔をしていた。

こうして、ニヴェスは幸せいっぱいの人生を謳歌することができたのだった。



しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

婚約者の家に行ったら幼馴染がいた。彼と親密すぎて婚約破棄したい。

佐藤 美奈
恋愛
クロエ子爵令嬢は婚約者のジャック伯爵令息の実家に食事に招かれお泊りすることになる。 彼とその妹と両親に穏やかな笑顔で迎え入れられて心の中で純粋に喜ぶクロエ。 しかし彼の妹だと思っていたエリザベスが実は家族ではなく幼馴染だった。彼の家族とエリザベスの家族は家も近所で昔から気を許した間柄だと言う。 クロエは彼とエリザベスの恋人のようなあまりの親密な態度に不安な気持ちになり婚約を思いとどまる。

【完結】私に可愛げが無くなったから、離縁して使用人として雇いたい? 王妃修行で自立した私は離縁だけさせてもらいます。

西東友一
恋愛
私も始めは世間知らずの無垢な少女でした。 それをレオナード王子は可愛いと言って大層可愛がってくださいました。 大した家柄でもない貴族の私を娶っていただいた時には天にも昇る想いでした。 だから、貴方様をお慕いしていた私は王妃としてこの国をよくしようと礼儀作法から始まり、国政に関わることまで勉強し、全てを把握するよう努めてまいりました。それも、貴方様と私の未来のため。 ・・・なのに。 貴方様は、愛人と床を一緒にするようになりました。 貴方様に理由を聞いたら、「可愛げが無くなったのが悪い」ですって? 愛がない結婚生活などいりませんので、離縁させていただきます。 そう、申し上げたら貴方様は―――

【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…

西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。 最初は私もムカつきました。 でも、この頃私は、なんでもあげるんです。 だって・・・ね

【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。

西東友一
恋愛
両親が亡くなった途端、私の家の資産を奪った挙句、婚約破棄をしたエドワード王子。 路頭に迷う中、以前から懇意にしていた隣国のリチャード王子に拾われた私。 実はリチャード王子は私のことが好きだったらしく――― ※※ 皆様に助けられ、応援され、読んでいただき、令和3年7月17日に完結することができました。 本当にありがとうございました。

王子が親友を好きになり婚約破棄「僕は本当の恋に出会えた。君とは結婚できない」王子に付きまとわれて迷惑してる?衝撃の真実がわかった。

佐藤 美奈
恋愛
セシリア公爵令嬢とヘンリー王子の婚約披露パーティーが開かれて以来、彼の様子が変わった。ある日ヘンリーから大事な話があると呼び出された。 「僕は本当の恋に出会ってしまった。もう君とは結婚できない」 もうすっかり驚いてしまったセシリアは、どうしていいか分からなかった。とりあえず詳しく話を聞いてみようと思い尋ねる。 先日の婚約披露パーティーの時にいた令嬢に、一目惚れしてしまったと答えたのです。その令嬢はセシリアの無二の親友で伯爵令嬢のシャロンだったというのも困惑を隠せない様子だった。 結局はヘンリーの強い意志で一方的に婚約破棄したいと宣言した。誠実な人柄の親友が裏切るような真似はするはずがないと思いシャロンの家に会いに行った。 するとヘンリーがシャロンにしつこく言い寄っている現場を目撃する。事の真実がわかるとセシリアは言葉を失う。 ヘンリーは勝手な思い込みでシャロンを好きになって、つきまとい行為を繰り返していたのだ。

婚約してる彼が幼馴染と一緒に生活していた「僕は二人とも愛してる。今の関係を続けたい」今は許してと泣いて頼みこむ。

佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢アリーナは、ダンスパーティの会場で恋人のカミュと出会う。友人から紹介されて付き合うように煽られて、まずはお試しで付き合うことになる。 だが思いのほか相性が良く二人の仲は進行して婚約までしてしまった。 カミュにはユリウスという親友がいて、アリーナとも一緒に三人で遊ぶようになり、青春真っ盛りの彼らは楽しい学園生活を過ごしていた。 そんな時、とても仲の良かったカミュとユリウスが、喧嘩してるような素振りを見せ始める。カミュに繰り返し聞いても冷たい受け答えをするばかりで教えてくれない。 三人で遊んでも気まずい雰囲気に変わり、アリーナは二人の無愛想な態度に耐えられなくなってしまい、勇気を出してユリウスに真実を尋ねたのです。

幸せな結婚生活に妻が幼馴染と不倫関係、夫は許すことができるか悩み人生を閉じて妻は後悔と罪の意識に苦しむ

佐藤 美奈
恋愛
王太子ハリー・アレクサンディア・テオドール殿下と公爵令嬢オリビア・フランソワ・シルフォードはお互い惹かれ合うように恋に落ちて結婚した。 夫ハリー殿下と妻オリビア夫人と一人娘のカミ-ユは人生の幸福を満たしている家庭。 ささいな夫婦喧嘩からハリー殿下がただただ愛している妻オリビア夫人が不倫関係を結んでいる男性がいることを察する。 歳の差があり溺愛している年下の妻は最初に相手の名前を問いただしてもはぐらかそうとして教えてくれない。夫は胸に湧き上がるものすごい違和感を感じた。 ある日、子供と遊んでいると想像の域を遥かに超えた出来事を次々に教えられて今までの幸せな家族の日々が崩れていく。 自然な安らぎのある家庭があるのに禁断の恋愛をしているオリビア夫人をハリー殿下は許すことができるのか日々胸を痛めてぼんやり考える。 長い期間積み重ねた愛情を深めた夫婦は元の関係に戻れるのか頭を悩ませる。オリビア夫人は道ならぬ恋の相手と男女の関係にピリオドを打つことができるのか。

母が病気で亡くなり父と継母と義姉に虐げられる。幼馴染の王子に溺愛され結婚相手に選ばれたら家族の態度が変わった。

佐藤 美奈
恋愛
最愛の母モニカかが病気で生涯を終える。娘の公爵令嬢アイシャは母との約束を守り、あたたかい思いやりの心を持つ子に育った。 そんな中、父ジェラールが再婚する。継母のバーバラは美しい顔をしていますが性格は悪く、娘のルージュも見た目は可愛いですが性格はひどいものでした。 バーバラと義姉は意地のわるそうな薄笑いを浮かべて、アイシャを虐げるようになる。肉親の父も助けてくれなくて実子のアイシャに冷たい視線を向け始める。 逆に継母の連れ子には甘い顔を見せて溺愛ぶりは常軌を逸していた。

処理中です...