【BL】Real Kiss

狗嵜ネムリ

文字の大きさ
27 / 157
第5話 絶対服従ゲーム

2

しおりを挟む
 素早くプレートを洗ってから、頼寿が俺を振り返って言った。
「まあ……今回旦那と交わした契約には『玉雪の体に傷や痣を付けない』っていうのがあったから、セーフワードは必要ねえけどな」
「……よ、良かった。お前にぶたれたら俺マジで泣くと思うから。頼むよ!」

 椅子から降りて冷蔵庫の前へ行き、早速カフェオレを取り出してストローをさす。頼寿はシンクに寄りかかり、そんな俺を横目で見ていた。

「大体、俺SMとか全然興味ないし。マゾの気持ちなんて分からないよ。どっちかって言えば、俺はSだと思うけど」
「は」
 馬鹿にしたように笑って、頼寿が腕組みをした。
「Mの気持ちが分からねえSなんていねえよ。それとも、ワガママで単に口が悪いことをSだと思ってるのか?」

 そういう頼寿の言葉にいちいち腹が立つということは、やっぱり俺はマゾじゃないということだと思う。
 基本的に見下されたり馬鹿にされるのは大嫌いだ。冷たくされるとこちらも冷めるし、殴られれば殴り返す。
 痛いのが良いなんて俺には分からない。頼寿は分かると言うのだろうか。

「それにお前は、典型的なMだと思うがな」
「っ……!」
 言われて、思わず飲んでいたカフェオレが変な所に入ってしまった。

「ぶはっ──は、はぁっ? 俺がM? 何でよ、その根拠はっ?」
「お前、昨日のこと覚えてねえのか」
「あ、あれは……頼寿が言うから、仕方なく……!」
「本気で嫌なら幾らでも逃げられただろ。それこそ俺をぶん殴ってでもな」
「今ぶん殴っていいか……」
「そこで、だ」

 頼寿が腕組みを解き、体ごと俺の方へと向き直る。

「一つゲームをしねえか。今日一日、お前が俺の言うことに従うゲームだ」
「やだ」
「全部俺の言うことを聞けたら、お前の勝ちだ。明日一日何でもしてやる。欲しい物があるなら何でも買ってきてやるし、して欲しいことも全部してやる」
「………」

 どういうことだろう。頼寿のことだからえげつない指示を出してくるに違いないが、その「対価」に何でも要求していいとは。

「本当に何でも? 出てって一人にしてくれる?」
「それは旦那との契約があるから無理だが、お前が気にならねえように一日一切の接触を断つことはできる」
 待てよ。俺はカフェオレを啜りながら冷静に頭を働かせた。
 頼寿からの接触が断たれるのは良いけど、そうなると食事も出なくなるということだ。頼寿の料理の腕だけは認めてる俺だからそれは困る。

 となると、要求というよりは「仕返し」の方が面白いかもしれない。今までの怨みを全部注ぎ込んで、頼寿に一生消えない黒歴史を刻んでやれば──

「じゃあ俺が勝ったら、明日一日お前、ウサギちゃんになりきれよ。語尾に『ピョン』て付けて、頭にもウサ耳付けて、一人称は『ボクちん』な!」
「……構わねえけど、そんなくだらねえモノでいいのか?」
「もちろん! 当然仕草も言葉遣いも全部ウサギちゃんだからな!」
「ウサギちゃんの言葉遣いがよく分からねえが……まあいいだろう」

 俺は鼻息を荒くさせて拳を握った。
 今日一日我慢すればいいだけだ、簡単だ。

 最高の「ご褒美」が待ってるなら、何だって耐えてやる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

処理中です...