【BL】Real Kiss

狗嵜ネムリ

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第8話 玉雪、オンステージ!

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 客のざわつきが音楽にかき消され、スポットの強烈な光もあって、あっという間に自分がどこに立っているのか分からなくなった。この狭い円形ステージに頼寿と二人──心臓が半端ないスピードで脈動している。

「頼寿、……」
 胸元のピンマイクとインカムで、爆音の中でもお互いの声が聞こえる状態だ。俺が震える声でその名前を呼ぶと、俺の首筋に口付けながらもすぐに頼寿が答えてくれた。
「怖がるな。いつも通り素直に感じてろ」
 頼寿の片手が俺の太ももを這い、短いパンツの内股ギリギリをゆっくりと撫でてゆく。
「ポールから手を離して、胸を張れ。背中を反らして腰を突き出すようなポーズだ」
「あ、あ……」

 背後の頼寿にぴったりとくっつくように背中を反らすと、頼寿が俺の胸元にもう片方の手を添えた。
「わ、っ……」
 薄い革の上から小さな突起を探り当てられ、指先で強く押される。これまで散々頼寿に弄られてきた乳首はこんな単純な刺激でも反応してしまい、俺は喉を反らせて目を瞑った。

 目蓋に感じるスポットの光が熱い。頼寿に触れられている体が熱い。時折音楽に混ざって聞こえる観客の指笛や歓声に、耳の奥まで熱くなる──

「は、あぁっ……!」
 迸った声が頼寿に伝わり、更にいやらしい手付きで内股を撫でられる。その手が少しずつ脚の付け根から上へと移動し、軽く盛り上がった俺の股間を下から持ち上げるように揉みしだいてきた。

「ん、は……頼寿、だめ……」
「駄目じゃねえだろ、タマ」
「あ……」
 低い声がインカムから直接注ぎ込まれ、俺は潤んだ目も拭わずに背後を振り返った。
「いい、──」

 そのまま唇を塞がれ、激しく舌を絡ませ合う。熱くて蕩けてしまいそうだ。スポットで観客が気にならないせいか、思っていたよりずっと恥ずかしくはない。今まで頼寿にされた仕打ちの方がずっと恥ずかしかったし嫌だった。

 どうしよう。これが恥ずかしくないなんて相当価値観を弄られてる。こちらからは見えなくても大勢の客が俺を見ているのに。この中には三上会長だっているのに──

「息が上がってきたな。まだどこにも直接触れてねえが、そろそろ股間がキツくなってきたか」
「頼、寿……。熱い、体が……熱くてヤバいっ……」
 俺の屹立を布越しに撫でながら、頼寿がもう片方の手で宙を切るような動作をした。
 それを合図に、ほんの少しだけBGMのボリュームが落ちる。

「頼寿、お願い──あっ?」
 思わず素に戻ってしまったのは、俺の「声」がピンマイクを通してフロア中に響いたからだ。

「玉雪、欲しい時はどうねだるか教えたな?」
「や、……これ、これって……」
 俺の声だけじゃない。頼寿の低くてエロい声も同時にフロアのスピーカーから流れている。

 つまりここから先の声は、全部観客に聞かれるということで。

 無理──
「っ……」
 喉まで出かかった言葉を何とか飲み込んだのは、インカムを通してロッソ君の声が聞こえたからだ。
〈照明もう少し抑えて、音もっと上げて! 玉くんが怖がっちゃうから──〉
 恐らくその瞬間だけ何かの理由でインカムのスイッチが入り、俺に(恐らくは頼寿にも)スタッフ側の声が聞こえてしまったのだろう。ほんの数秒だけど、ロッソ君の必死さが伝わって「無理」なんて言えなくなってしまった。

「………」
 そうだ。この衣装もステージも、今日という日も。

 俺はこの瞬間に関わってきた色んな人達の思いの上に立っているんだ。
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