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第11話 木曜日のウサギ
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「待たせて済まない、玉雪!」
「会長! お話はもう済んだんですか?」
二時間くらい経ってようやく三上会長と合流したものの、既に俺は今すぐ帰りたくなっていた。
何しろこの格好で二時間だ。頼寿が常にいるから変なことをされたりはしないが、近くから遠くから……右から左から男達の色々な視線を向けられて、もはや全身が恥ずかしさに悲鳴をあげている。
「か、会長。パーティーは何時まででしたっけ」
「午前三時と聞いているぞ。眠くなったか?」
「いえ眠くはないんですけど……」
まだあと三時間近くあるのか。眠いと言っても良かったが、ゲスト用の寝室なんかに寝かせられてしまったら何をされるか分からない。恐らく頼寿が付いていてくれるだろうけれど、知らない奴の家で無防備に眠りこけるほど俺は馬鹿じゃないんだ。
「頼寿、ちょっと空いてる?」
そこへどこからかロッソ君が現れて、俺は危うく飛び上がりそうになった。
何故ならロッソ君の足元に、ボンデージ姿で四つん這いになったマッチョがいたからだ。
「ロロロッソ君、そちらは?」
「あ、玉くんは初めてだね。彼は俺の店のオーナーだよ。──ほらオーナー、挨拶して」
「お初にお目にかかります。サルベージのオーナー、ローゼオと申します」
「た、玉雪です。どうも」
ボンデージといっても肌の露出は少ないけれど、筋肉隆々だから全身ぱつぱつで妙にエロい。ローゼオさんはロッソ君が言っていた「オッサン」ではなく、彼や頼寿より少し年上のただの超絶男前だった。
「頼寿。オーナーがちょっと仕事のこと話したいんだって。今って大丈夫?」
「会長」
頼寿が三上会長に目を向けると、にこやかに笑って会長が俺の肩に腕を回した。
「行ってくるといい。玉雪の護衛なら気にするな、俺が傍にいる」
「すみません、すぐ戻ります」
そうして三人が俺達から離れ、壁際のソファの方へと歩いて行った。驚いたことにロッソ君は、四つん這いになったローゼオさんの背中に腰を下ろしている。
「玉雪。どうだ、調子は」
ふいに会長に言われて、俺は慌てて三人から視線を外し会長を見上げた。
「パーティーは美味しいものたくさんで楽しいですけど、良若さんのリクエストとかいうこの衣装は好きになれません」
「ははは、済まないな。俺は似合うと思うが、次からはちゃんと玉雪の許可を取ってから衣装の用意をさせるよ」
久しぶりに会長と二人きり。年齢の割に若くて渋くて、めちゃくちゃカッコいいのは出会った時から変わってない。
大好きで、何を捧げても良いと思っていた俺の三上会長。
……それなのに俺、頼寿が傍にいないだけで何だかそわそわしてる。せっかく会長と過ごせるのに、頼寿の方ばかりチラ見してしまっている。
「三上さん、可愛いウサギ君ですね」
「三上会長、彼が噂の?」
「ほほお、これはこれは……!」
会長の友人達は皆、俺を褒めてくれる。中には視姦目的の奴もいるけれど、さっきの良若みたいに触れてくることは決してない。
俺の存在が会長にとってプラスになるならそれで良いと思った。着飾って会長の隣に立っているだけで何かが上手く行くなら、それでも全然構わない。会長は俺の命の恩人だ。会長のためなら何だってする。
……でも、この会長への気持ちの根底にあるものって何なんだろう。
「っ……」
壁際のソファに座ってローゼオさんと話している頼寿が、口の動きはそのままで俺の方へ視線を向けた。
──お前の「これから」は全部俺がもらう。
いつか風呂場で言われたあの言葉は、頼寿の本心なんだろうか。それなら言葉の元となっている頼寿の気持ちは、一体何なんだろう。
ただの独占欲。調教師としての血。それとも、……
「会長! お話はもう済んだんですか?」
二時間くらい経ってようやく三上会長と合流したものの、既に俺は今すぐ帰りたくなっていた。
何しろこの格好で二時間だ。頼寿が常にいるから変なことをされたりはしないが、近くから遠くから……右から左から男達の色々な視線を向けられて、もはや全身が恥ずかしさに悲鳴をあげている。
「か、会長。パーティーは何時まででしたっけ」
「午前三時と聞いているぞ。眠くなったか?」
「いえ眠くはないんですけど……」
まだあと三時間近くあるのか。眠いと言っても良かったが、ゲスト用の寝室なんかに寝かせられてしまったら何をされるか分からない。恐らく頼寿が付いていてくれるだろうけれど、知らない奴の家で無防備に眠りこけるほど俺は馬鹿じゃないんだ。
「頼寿、ちょっと空いてる?」
そこへどこからかロッソ君が現れて、俺は危うく飛び上がりそうになった。
何故ならロッソ君の足元に、ボンデージ姿で四つん這いになったマッチョがいたからだ。
「ロロロッソ君、そちらは?」
「あ、玉くんは初めてだね。彼は俺の店のオーナーだよ。──ほらオーナー、挨拶して」
「お初にお目にかかります。サルベージのオーナー、ローゼオと申します」
「た、玉雪です。どうも」
ボンデージといっても肌の露出は少ないけれど、筋肉隆々だから全身ぱつぱつで妙にエロい。ローゼオさんはロッソ君が言っていた「オッサン」ではなく、彼や頼寿より少し年上のただの超絶男前だった。
「頼寿。オーナーがちょっと仕事のこと話したいんだって。今って大丈夫?」
「会長」
頼寿が三上会長に目を向けると、にこやかに笑って会長が俺の肩に腕を回した。
「行ってくるといい。玉雪の護衛なら気にするな、俺が傍にいる」
「すみません、すぐ戻ります」
そうして三人が俺達から離れ、壁際のソファの方へと歩いて行った。驚いたことにロッソ君は、四つん這いになったローゼオさんの背中に腰を下ろしている。
「玉雪。どうだ、調子は」
ふいに会長に言われて、俺は慌てて三人から視線を外し会長を見上げた。
「パーティーは美味しいものたくさんで楽しいですけど、良若さんのリクエストとかいうこの衣装は好きになれません」
「ははは、済まないな。俺は似合うと思うが、次からはちゃんと玉雪の許可を取ってから衣装の用意をさせるよ」
久しぶりに会長と二人きり。年齢の割に若くて渋くて、めちゃくちゃカッコいいのは出会った時から変わってない。
大好きで、何を捧げても良いと思っていた俺の三上会長。
……それなのに俺、頼寿が傍にいないだけで何だかそわそわしてる。せっかく会長と過ごせるのに、頼寿の方ばかりチラ見してしまっている。
「三上さん、可愛いウサギ君ですね」
「三上会長、彼が噂の?」
「ほほお、これはこれは……!」
会長の友人達は皆、俺を褒めてくれる。中には視姦目的の奴もいるけれど、さっきの良若みたいに触れてくることは決してない。
俺の存在が会長にとってプラスになるならそれで良いと思った。着飾って会長の隣に立っているだけで何かが上手く行くなら、それでも全然構わない。会長は俺の命の恩人だ。会長のためなら何だってする。
……でも、この会長への気持ちの根底にあるものって何なんだろう。
「っ……」
壁際のソファに座ってローゼオさんと話している頼寿が、口の動きはそのままで俺の方へ視線を向けた。
──お前の「これから」は全部俺がもらう。
いつか風呂場で言われたあの言葉は、頼寿の本心なんだろうか。それなら言葉の元となっている頼寿の気持ちは、一体何なんだろう。
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