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第15話 プール合宿開始!
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プールには予め連絡していたのか既に水が張ってあり、いつでも入れる状態となっていた。
「プールなんて小学校の時以来かも。言っとくけど俺、泳げないからな」
「俺も正直言ってそんなに経験はねえが、お前よりは泳げる」
二人してひょうたん型の縁にしゃがみ込んで、だだっ広い水色の底を見つめる。太陽光を反射して輝く水面は綺麗だが、何だか想像していたよりも……
「な、なぁ。やたら深くないか、このプール?」
「2メートル半、本番のステージに近い深さだ。兄貴のよく分からん趣味で造ったらしいが……今回の訓練に兄貴の家を選んだのはこれが理由だ」
2メートル半──。俺はもちろん、頼寿も足が付かない深さということだ。
「………」
楽しみだったプールが途端に怖くなってきて、俺はおずおずと後退りしプールから離れた。子供の遊び的なものを想像していただけに、このガチ感は恐ろしすぎる。せめて浮き輪がないと、とてもじゃないがこの中には入りたくない。
「本番は砂糖水だから体が浮くんだろ? だったら砂糖水で練習しないと」
「いきなり浮いたらパニックになるだろ、お前は。まずは深い水に慣れるところからだ。浮くといってもプールの壁は全面ガラスだ。横から見る客のために潜ることもあるしな」
「イルカショーかよ!」
「そんな華やかなモンじゃねえが」
とにかく今日は水に慣れる。深く潜れるようになる。スイミングスクール初心者みたいな課題だが、俺達は最終的に水の中でセックスもしくはそれと同等のエロいことをしなければならないのだ。
……無理なんじゃなかろうか。
「な、なあ。この仕事、断った方が良くない? 本番で俺が溺れたら会長が発狂するし頼寿もクビになるよ」
「そうならないための訓練だろうが」
「そうですけど! お、俺怖い……」
尻込みする俺を横目に、頼寿が足からプールの中へ入って行く。ゆっくりと水中をかきながら中心まで泳ぎ、そこから俺に向かって「お前も来い」と無茶な命令を出してきた。
「何言ってんだよ! 浮き輪もないのにそこまで行けるわけないだろっ!」
「犬かきもできねえのか。いいから早く来い」
「浮き輪! せめてビート板!」
「贅沢言うな」
「これのどこが贅沢なんだよっ!」
頼寿の命令でもこればかりは無理だ。頑としてプールサイドから動こうとしない俺に、頼寿が立ち泳ぎをしながら舌打ちした。
その時──
「玉雪、良かったらこれを使うといいぞ」
二人分のスポーツドリンクをプールサイドに置いた頼政さんが、俺にライフジャケットを渡してくれた。
「あ、……頼政さん、これ……」
「このプールは深いからな。慣れるまで、俺のシュノーケル用ジャケットで良ければ使ってくれ」
「いいんですかっ? ありがとうございます!」
「兄貴、余計なことをするなよ」
頼寿が叫んだが、俺は既にライフジャケットを装着していた。これなら全然大丈夫。邪魔にもならないし、快適。
「まあまあ、いきなりこの深さは危険だろう。慣れたらジャケットを外せばいいだけのことだ。頼寿、玉雪が溺れないようにしっかり見てろよ」
「……言われるまでもねえ……」
頼政さん。なんて優しいんだ。そして頼寿を黙らせるとは、流石お兄さん。
「よっしゃ! 行くぞ頼寿!」
俺はプールサイドから思い切りジャンプして、豪快な飛沫をあげながら水の中へ飛び込んだ。
「プールなんて小学校の時以来かも。言っとくけど俺、泳げないからな」
「俺も正直言ってそんなに経験はねえが、お前よりは泳げる」
二人してひょうたん型の縁にしゃがみ込んで、だだっ広い水色の底を見つめる。太陽光を反射して輝く水面は綺麗だが、何だか想像していたよりも……
「な、なぁ。やたら深くないか、このプール?」
「2メートル半、本番のステージに近い深さだ。兄貴のよく分からん趣味で造ったらしいが……今回の訓練に兄貴の家を選んだのはこれが理由だ」
2メートル半──。俺はもちろん、頼寿も足が付かない深さということだ。
「………」
楽しみだったプールが途端に怖くなってきて、俺はおずおずと後退りしプールから離れた。子供の遊び的なものを想像していただけに、このガチ感は恐ろしすぎる。せめて浮き輪がないと、とてもじゃないがこの中には入りたくない。
「本番は砂糖水だから体が浮くんだろ? だったら砂糖水で練習しないと」
「いきなり浮いたらパニックになるだろ、お前は。まずは深い水に慣れるところからだ。浮くといってもプールの壁は全面ガラスだ。横から見る客のために潜ることもあるしな」
「イルカショーかよ!」
「そんな華やかなモンじゃねえが」
とにかく今日は水に慣れる。深く潜れるようになる。スイミングスクール初心者みたいな課題だが、俺達は最終的に水の中でセックスもしくはそれと同等のエロいことをしなければならないのだ。
……無理なんじゃなかろうか。
「な、なあ。この仕事、断った方が良くない? 本番で俺が溺れたら会長が発狂するし頼寿もクビになるよ」
「そうならないための訓練だろうが」
「そうですけど! お、俺怖い……」
尻込みする俺を横目に、頼寿が足からプールの中へ入って行く。ゆっくりと水中をかきながら中心まで泳ぎ、そこから俺に向かって「お前も来い」と無茶な命令を出してきた。
「何言ってんだよ! 浮き輪もないのにそこまで行けるわけないだろっ!」
「犬かきもできねえのか。いいから早く来い」
「浮き輪! せめてビート板!」
「贅沢言うな」
「これのどこが贅沢なんだよっ!」
頼寿の命令でもこればかりは無理だ。頑としてプールサイドから動こうとしない俺に、頼寿が立ち泳ぎをしながら舌打ちした。
その時──
「玉雪、良かったらこれを使うといいぞ」
二人分のスポーツドリンクをプールサイドに置いた頼政さんが、俺にライフジャケットを渡してくれた。
「あ、……頼政さん、これ……」
「このプールは深いからな。慣れるまで、俺のシュノーケル用ジャケットで良ければ使ってくれ」
「いいんですかっ? ありがとうございます!」
「兄貴、余計なことをするなよ」
頼寿が叫んだが、俺は既にライフジャケットを装着していた。これなら全然大丈夫。邪魔にもならないし、快適。
「まあまあ、いきなりこの深さは危険だろう。慣れたらジャケットを外せばいいだけのことだ。頼寿、玉雪が溺れないようにしっかり見てろよ」
「……言われるまでもねえ……」
頼政さん。なんて優しいんだ。そして頼寿を黙らせるとは、流石お兄さん。
「よっしゃ! 行くぞ頼寿!」
俺はプールサイドから思い切りジャンプして、豪快な飛沫をあげながら水の中へ飛び込んだ。
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