【BL】Real Kiss

狗嵜ネムリ

文字の大きさ
103 / 157
第15話 プール合宿開始!

6

しおりを挟む
「ああ、疲れた……」
 その日の夜九時頃になって、夕食後の食器洗いをしていたらダイニングに頼政さんがフラフラ入ってきた。

「頼政さんお疲れ様です。すいません俺達だけご飯を……」
「ああ、気にしないでくれ。俺はいつも食事の時間は決まってないんだ。……こいつは決まった時間に食べてるがな」

 そう言って、頼政さんが抱いていたハーレーを床に下ろす。シンクの前に立つ俺の脚にまとわりついてくるハーレー……可愛い。

「だが、今日は腹が減ったな。俺も夕飯を食べるとしよう」
「あ、それならビーフシチューが残ってますから良かったら食べてください」
「凄いな、玉雪が作ったのか?」
「いえ、頼寿が」
「そうか……頼寿が」

 まだ温かさの残っているシチューの鍋を覗き込みながら、頼政さんが口元を弛めて嬉しそうに笑った。よほど空腹なのだろうか。肉も野菜もたっぷりの美味いビーフシチューだ、無理もない。

「座っててくださいね。いま用意しますから」
「ありがとう、玉雪」
 ここぞとばかりに気の利く男を装いながら、俺は新しい皿にシチューをよそった。ちなみに頼寿は俺のすぐ隣にいる。が、さっきから一言も話そうとしない。

「どうぞ」
「美味そうだ、頂くぞ頼寿」
「ん」
 ……愛想が悪い。まあそれでも頼政さんの分も余るほど多めに作ったということは、頼寿だって兄貴に食べてもらいたかったに違いない。

「うん、美味い。頼寿は子供の頃から料理が得意だったな」
「そうなんですかっ?」
「ああ。母親が料理下手だったもので、料理は父親と頼寿が担当していたんだ」

 へえぇ、と思わず感心してしまう。子供の頃の頼寿なんて想像できなくて、何だか新鮮な気分だ。

「余計なこと言うなよ兄貴」
「料理もできて成績も優秀、女子からも大人気だった。俺の自慢の弟だったよ」
「そっかぁ……頼政さんと頼寿って、美男子兄弟で有名だったんだろうなぁ」

 うっとりしながら妄想していると、頼政さんが突然真剣な顔になって「違うぞ」と俺に視線を向けた。

「俺なんかは頼寿の足元にも及ばない。外見も内面も……。俺も以前はステージに立つ身だったから分かるが、頼寿のプレイは他の追随を許さぬ完璧なショーだった。溶けるほど妖しく、恐ろしいほど美しい……俺がステージを降りたのは、弟に全てを託せると思ったからなんだ」
「……えっと」
「絵を描くようになったのも頼寿に刺激を受けたからなんだ。写真では表現できない頼寿の美しさを──」
「兄貴っ!」

 頼寿がテーブルを拳で叩いた瞬間、頼政さんがビクリと体を震わせた。

「自重しろ」
「す、すまない頼寿。久しぶりに会えて嬉しくて、つい……」

 溜息をつく頼寿に、スプーンを握ったまま慌てる頼政さん。

 俺は何となく理解した。
 頼寿がなぜ頼政さんに素っ気ないのか、なぜ頼政さんに構うなと言ったのか、なぜ俺を頼政さんから遠ざけたかったのか。

「……ああ、しかし相変わらず美しいな俺の弟は」
「まだ言うかてめえ」
「すまない、お前の顔を見て今日は昼間からインスピレーションが止まらないんだ。今夜は徹夜になるぞ、気合いを入れなければ!」

 堂島頼政さん。

 彼はきっと、極度のブラコンお兄さんなのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

処理中です...