125 / 157
第18話 会長と頼寿と覚悟の夜
7
しおりを挟む
その日は会長と二人だけで朝を過ごし、それから外に出てショッピングを楽しんだ。何の目的もない「デート」だ。アイスを食べて、色んな店を見て、映画を観て──この感じ、とても久しぶりだ。前は歩いていても会長のことしか考えてなくて、しかも腕に引っ付いて全身で甘えていたけれど、今は心に余裕があるお陰で節度ある振る舞いができている。
会長は大人だ。俺も大人になって、会長の隣に立つのに相応しい完璧な「愛人」になるんだ。
「さて、もうこんな時間だ。頼寿と合流しようか」
午後七時に早めのディナーを済ませて、夏の空が薄暗くなった頃。会長が車を呼んで、俺は行き先も知らされないまま後部座席に乗り込んだ。
「会長、そろそろどこに行くのか教えてください。頼寿はどこに?」
隣に座った会長に訊ねると、俺の期待する答えどころか全く予想もしていなかったことを言われた。
「玉雪は、頼寿のどこに惚れたんだい」
「ええっ! な、何ですか急に……」
「いいじゃないか! あの通り頼寿はいい男だが、玉雪は外見で惚れるタイプではないからな。頼寿のことは俺も息子のように思っている。大事な息子のどこに、大事な玉雪が惚れたのか知りたいのさ」
「う、……」
俺は縮こまって、膝の上で両手を組み合わせた。
頼寿のどこが好き。訊かれると返答に詰まる。
どこが嫌いか、なら山ほど答えられたはずなのに。
だけどそれは頼寿の良いところが分からないのではなく、単純に恥ずかしくて言いにくいだけだ。今までそんなこと、口にしたことなかったから。
「い、言わなきゃダメですか」
「目的地まで時間はたっぷりある。沈黙が気にならないなら秘密のままでいいが」
イタズラっぽく笑う会長。その笑顔からは本当に頼寿も俺のことも愛しているというのが伝わってくる。
「えっと……」
俺は頬をカッカと熱くさせながら、少しずつ会長に白状した。
「頼寿の好きなところは、……強いところ。自分を持ってて、曲げないところ。たまにそれが腹立つこともあるけど……頼寿はいつも間違ってないし、何か言ってもらえるだけで安心できる。厳しいけど、厳しくするのは俺のためになってて──」
恥ずかしくてそこで止めてしまったが、会長は満足げだった。俺の手を握り、何度も力強く頷いている。
「やはり、俺にはできないことをしてくれている。頼寿をお前に会わせて本当に良かった……」
「でも、俺を『人間』にしてくれたのは会長です。俺が今ここにいるのは、全部会長のお陰です」
「お前のことは本当に大事に想っているよ。いつでもお前の味方だ。頼寿に任せれば安心だが、お前にも覚悟を持ってもらいたいんだ」
覚悟。
会長が俺の頬に触れ、真剣な目で言った。
「本来ならセックスを他人に見せるなんて考えられない行為だろう。ましてや、それで儲けるなど。常軌を逸していると言われても──」
「違います、会長!」
会長の言葉を遮り、その手を握って胸にあてる。
「確かに恥ずかしくて緊張するけど……常軌を逸しているなんて思いません。性風俗は人類に必要不可欠です。セックスがカッコいいショーになるってこともサルベージで知ったし、それに……」
頭の中に頼政さんの顔が浮かび、俺は少しだけ苦笑した。
「それに、セックスは芸術にもなります。絵画に音楽、映画、詩、他にもいっぱい。……ライブステージだって」
会長の手に頭を撫でられ、俺は唇を噛みしめた。普段そんなこと思ってもいなかったのに、スラスラと言葉にできて自分でも驚いてしまう。
──セックスは芸術。この考え方って、おかしいかな。
「そうか。杞憂だったな」
会長が俺の頭を撫で続け、言った。
「とっくに覚悟はできているようだ」
会長は大人だ。俺も大人になって、会長の隣に立つのに相応しい完璧な「愛人」になるんだ。
「さて、もうこんな時間だ。頼寿と合流しようか」
午後七時に早めのディナーを済ませて、夏の空が薄暗くなった頃。会長が車を呼んで、俺は行き先も知らされないまま後部座席に乗り込んだ。
「会長、そろそろどこに行くのか教えてください。頼寿はどこに?」
隣に座った会長に訊ねると、俺の期待する答えどころか全く予想もしていなかったことを言われた。
「玉雪は、頼寿のどこに惚れたんだい」
「ええっ! な、何ですか急に……」
「いいじゃないか! あの通り頼寿はいい男だが、玉雪は外見で惚れるタイプではないからな。頼寿のことは俺も息子のように思っている。大事な息子のどこに、大事な玉雪が惚れたのか知りたいのさ」
「う、……」
俺は縮こまって、膝の上で両手を組み合わせた。
頼寿のどこが好き。訊かれると返答に詰まる。
どこが嫌いか、なら山ほど答えられたはずなのに。
だけどそれは頼寿の良いところが分からないのではなく、単純に恥ずかしくて言いにくいだけだ。今までそんなこと、口にしたことなかったから。
「い、言わなきゃダメですか」
「目的地まで時間はたっぷりある。沈黙が気にならないなら秘密のままでいいが」
イタズラっぽく笑う会長。その笑顔からは本当に頼寿も俺のことも愛しているというのが伝わってくる。
「えっと……」
俺は頬をカッカと熱くさせながら、少しずつ会長に白状した。
「頼寿の好きなところは、……強いところ。自分を持ってて、曲げないところ。たまにそれが腹立つこともあるけど……頼寿はいつも間違ってないし、何か言ってもらえるだけで安心できる。厳しいけど、厳しくするのは俺のためになってて──」
恥ずかしくてそこで止めてしまったが、会長は満足げだった。俺の手を握り、何度も力強く頷いている。
「やはり、俺にはできないことをしてくれている。頼寿をお前に会わせて本当に良かった……」
「でも、俺を『人間』にしてくれたのは会長です。俺が今ここにいるのは、全部会長のお陰です」
「お前のことは本当に大事に想っているよ。いつでもお前の味方だ。頼寿に任せれば安心だが、お前にも覚悟を持ってもらいたいんだ」
覚悟。
会長が俺の頬に触れ、真剣な目で言った。
「本来ならセックスを他人に見せるなんて考えられない行為だろう。ましてや、それで儲けるなど。常軌を逸していると言われても──」
「違います、会長!」
会長の言葉を遮り、その手を握って胸にあてる。
「確かに恥ずかしくて緊張するけど……常軌を逸しているなんて思いません。性風俗は人類に必要不可欠です。セックスがカッコいいショーになるってこともサルベージで知ったし、それに……」
頭の中に頼政さんの顔が浮かび、俺は少しだけ苦笑した。
「それに、セックスは芸術にもなります。絵画に音楽、映画、詩、他にもいっぱい。……ライブステージだって」
会長の手に頭を撫でられ、俺は唇を噛みしめた。普段そんなこと思ってもいなかったのに、スラスラと言葉にできて自分でも驚いてしまう。
──セックスは芸術。この考え方って、おかしいかな。
「そうか。杞憂だったな」
会長が俺の頭を撫で続け、言った。
「とっくに覚悟はできているようだ」
2
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる