ヤンキーDKの献身

ナムラケイ

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Yukito: きっと一生思い出す。

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 夜、金沢駅に着くと、末弟の保と彼女の椿原市子つばはらいちこが車で迎えに来てくれていた。
「行人くーん、こっちこっち!」
 いつも元気な市子はポニーテールを揺らして飛び跳ねている。
「びっくりしたよー、急に夜の新幹線に変更するって言うんだもん」
「ごめん。ちょっと外せない用事ができて」
 初めて空乃とセックスをして。寝たり起きたり愛し合ったりを繰り返しながら、結局昼過ぎまで布団の中にいた。
 脚が地に着いていないようなふわふわした感覚。それに、中にはまだ空乃がいるような気がする。
 嬉しくて、くすぐったい。
 しかし、男子高校生の体力を舐めていた。起きがけは冗談抜きで脚が立たず、回復に夕方までかかってしまった。
 数時間前の情事に想いを馳せる行人を、保が心配気に見た。
行兄ゆきにい、具合悪いん?」
 消防士の保は人の体調に敏感だ。
「いや、久々の新幹線で疲れただけ」
「なら良かった。行人が帰ってくるなら酒盛だわねって、母さんが大量に日本酒買い込んでたから」
 保が運転席に、市子と行人が後部席に乗り込み、車は夜の金沢を走り出す。

「ねえねえ、行人君。もしかして、彼女できた」
 街灯が行き過ぎる暗い車内で、市子が内緒話をするように顔を寄せてくる。
「いや、なんで?」
 ポーカーフェイスは得意だ。
 変わらぬ声で返したが、自分は何か悟られるようなことをしただろうかと焦ってしまう。
「えー、だって」
 市子はにんまりと笑い、ジェスチャーで自分の首筋を指差した。
「え、首?」
「あと、ついてる。虫刺されじゃないよね」
 保に聞こえないように市子の声は密やかだ。
 自分では見えないが、行人は反射的に首元を押さえた。
「…あいつ…」
 見えるところはやめろって言ったのに。
 押し黙る行人の横で、市子が冗談めかして言う。
「愛されてるんだね」
 愛されている、のだろうか。
 愛なんて無くても、男は勃つし、誰かを抱ける。
 でも気持ちがなかったら、あんな丁寧な、尽くすみたいな抱き方、きっとできない。
 男は初めてだから痛かったり変だったらすぐに言って。
 緊張した面持ちでそう前置いた17歳の空乃の指や舌や肌や視線。
 もうあの瞬間に死んでもいいとすら思ってしまった。
 思い出す度に泣きたくなる。
 俺は、この幸福感を、きっと一生思い出す。
「市子ちゃん」
「なあに?」
 市子は子供のように首を傾げた。過ぎ行く街灯に照らされる度に頬のソバカスが浮き上がる。
「みんなには、内緒にして」
 人差し指を立てると、市子はこくりと頷いて、絆創膏を渡してくれた。
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