ペンと羅針盤

ナムラケイ

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35:甘く重く★

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 羽田空港第2ターミナルに直結する羽田エクセルホテル東急。飛び込みで部屋を押さえた有馬は、部屋に入るなり航平をベッドに押し倒した。
 ホテルの売りである、窓の外に広がる空港と航空機のきらめきを楽しむ余裕も与えてくれない。

「そんなしたかったのかよ」

 航平が苦笑すると、有馬は言い返した。

「セックスしたくて仕方がないって顔してたのは、航平の方でしょ」
「そんな顔してない」
「してたよ。なに、さっきの「ぞわぞわする」とか。可愛すぎるんだけど」
「可愛いとか言うな」
「言うよ。これからも、何度でも」

 頬に唇に胸元に、キスの雨が降ってくる。
 よくこんな照れ臭い台詞が言えるものだと思う。
 有馬は手際よく先に全裸になり、航平の服を脱がせる。スラックスを抜き取ると、嬉しそうに笑った。
 航平の股間は、ハグとキスだけで固くなっていた。見下ろすと、グレーのボクサーパンツの中心は濡れて色を濃くしている。

「航平。そんなにしたかった?」
「…したかったよ! 悪いか」

 自棄になって開き直ると、有馬は体勢を変えて、航平のものを口に含んだ。
 あたたかくて柔らかくて、唾液のぬるぬるが気持ちいい。

「…っ、ふっ」

 呼吸が乱れる。すぐに達してしまいそうで、航平は腰を引いた。

「こら、逃げない」
「だって、すぐイきそう」
「イっていいよ。1回出した方が楽だし。こんなにぱんぱんだったら、我慢できないでしょ」
「……んんっ!」

 手でしごきながら舌で先っぽをぐりりと責められて、あっけなく果てた。一気に脱力感が襲ってくる。なのにまだ、全然足りない。
 有馬は身を起こすと、指に垂れる白濁をぺろりと舐めた。口にするなよ、そんなもん。

「早いね。多いし濃いし。もしかして、してなかった?」
「そういうこと訊くか、普通」
「訊くよ。一人でしてなかったの?」

 セックスの時の有馬はいつもより少し意地悪だ。
 航平の性生活を追及しながら、指先で後ろをほぐし始める。柔らかくなった睾丸を同時に揉まれるのが気持ちよくて、航平は息を漏らした。

「…してなかったよ」
「どうして? 僕を思い出してしてくれなかったの? 僕は航平のこと考えながら何度もしたのに」
「あんたをオカズにするとか、なんか申し訳なくてできなかったんだよ」
「申し訳ない?」
「あんた、キラキラしてるだろ。それを、汚すみたいで」

 分かっているのかいないのか、有馬は曖昧に首を傾げた。

「全く申し訳なくないから、今後は存分に使ってくれていいよ」
「それはどうも。…あ、そこ、いいっ」
「うん、ここでしょ。あ、前、また元気になってきたね」
「…ん、ふ。も、そこばっかやめろって」
「ここがいいって言ったの、航平でしょ。ああ、そうだ、次の出張の時は、僕の写真を持って行ってよ」

 喋るか責めるかどっちかにしてほしい。

「断る。ん、あっ…、他の奴に見つかったらどうすんだよ。なあ、もう、いいから」
「いいから、なに?」
「…挿れろよ」

 ねだると、有馬はふふっと笑って、コンドームのパッケージを破いた。
 装着して位置を合わせる。秘部にあたる怒張の感触に、航平は唾を飲み込んだ。
 リラックスさせるように、有馬は会話を続ける。

「じゃあ、僕の服とかパンツとかを持っていく? 見つかっても、自分のだって言えばいいし」
「俺を変態にしようとするな。っ、あ! や、いきなり奥っ…ん!」
「んっ…久しぶりだし、まだきついね」

 見上げると、有馬はすごくやらしい顔をしながら、額に汗を浮かせている。
 航平は優越感に笑う。
 どこが有馬サマだ。
 いつもは品良く微笑んでいる王子様のこんな姿を、女どもは知らない。

「なに笑ってるの」
「別に」
「余裕だね」
「全然。すげえきついし、熱い」
「動いていい? ゆっくりするから」
「うん」

 全然ゆっくりなんかじゃなかった。2回目の久しぶりのセックスは激しくて濃くて。
 途中から何回達したのか分からなくなった。


 喉の渇きで目が醒めて、時計を見ると午前2時半だった。
 何時に寝たのか記憶がない。隣では有馬が寝息を立てている。ツインルームのもう一つのベッドは、見事にシーツが乱れている。
 水を飲もうと起き上がろうとして、下半身の重さに呻いた。
 やっぱり明日は午前休をもらおう。
 そろそろと身体を動かしていると、有馬が寝返りを打った。

「航平?」
「悪い、起こした」

 そういった声は掠れていて、思わず喉を押さえた。
 何も言っていないのに、有馬はベッドから出ると、備え付けの水を取ってきてくれる。気が利く奴だ。

「さんきゅ」

 ぬるい水は染み入るように美味かった。
 半分を飲み干して、もう一度ベッドにもぐりこんだ。

「身体、大丈夫?」
「じゃない。痛いし重い」
「ごめんね」

 乾きが癒えたらまた眠くなってきた。
 仰向けのまま、謝る有馬の手を握った。

「別に。このだるさ、嫌いじゃねえし」

 愛し愛された証の甘いだるさだ。
 航平は瞳を閉じる。有馬の存在を感じながら、深く眠った。
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