推しを擁護したくて何が悪い!

人生2929回血迷った人

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「知晴くん、副会長にあんなことして大丈夫?めっちゃ恨み買ってそうだったけど。僕の為に言ってくれるのは嬉しいけどそれで知晴くんが僕みたいな目にあうのはおかしいよ。」

 転校生と副会長が部屋から出ていくとおずおずと凛が話しかけてくる。しかしその言葉に知晴は不機嫌になる。

「それは自分だったらいじめられてもいいってこと?」

 優しくしたくても自分を大事にしない発言に言葉がキツくなる。

「うん…というか僕が虐められるのは自業自得みたいな所あるし……。」
「そんなところないよ……すーはー。り、凛の何が……あんな目にあう理由になるっていうの?」

 怒りに声が震える。深呼吸をして何とか落ち着けた。凛を怖がらせたいわけじゃないのだから。

「……僕がぶりっ子だから。」

  凛は俯いて言い淀みながらも一言答えた。その声は震えていた。それは怒りなからのか、悲しみからなのかもしくはそのどちらもなのか……判断はつかなかった。
 知晴はその凛の様子を見て怒りが急激に萎む。凛だって自分なら虐められても大丈夫だなんて本心から思っているわけない。でも、そうして自分の心に嘘をつかないと耐えられなかったのだろう。

 知晴は俯いている凛を正面から抱き留めた。凛の顔を肩に埋めて頭から項にかけてを撫でる。

「全部を自分のせいにしなくったっていいんだよ。あそこにいるバ会長のせいに全部していい。」

 今迄傍観していた会長は突然指を刺されて一瞬戸惑っていたが「あ、ああ。」と頼りない返答をした。

「あれ?クズじゃなくなってる!」

知晴の呼び方の変化に感動しているようだった。



「別に凛がぶりっ子だったっていいけど、本当は違うのは分かってる。家の為にだとか考えて自分を偽らなくたっていいし、もっと自由に生きてよ。俺は自由に生きてる凛を見ていたい。」

 凛はその言葉を聞くと泣き出したようだった。凛の顔がある知晴の肩が濡れる。顔をあげようとするが知晴の手がそれを許さない。

 凛のぶりっ子は演技だ。家の跡目を凛の兄に継がせたがっている両親や親戚を慮ってのことだった。凛の兄も優秀だが凛はそれ以上に優秀過ぎた。凛に後を継がせた方がいいという声が少しずつ上がり始めた頃、凛はそれに気づいてわがままお坊ちゃんを演じ始めたのだった。そしてこの学園でそれを演じるにはぶりっ子が最適だった。ただそれだけだったのだ。

 たしかにぶりっ子は周りに敵を作る。でも、それは虐めに発展する程のものじゃなかった。副会長の明確な悪意と生徒会長の振る舞いによって凛の立場が軽んじられた結果だった。

「なんならこのまま家出よう?卒業したら俺の家来ればいいし。まあそれが難しいって言うなら俺を傍に置いてよ。守りたい。いや、でも副会長の恨みを買ったのは俺だから近づかない方がいいのか?」

 凛はそれを聞いて少しの間沈黙したあと話し出す。

「……な、なんでそこまでしてくれるの?」

 凛にとってこれは純粋な疑問だった。

「憧れたから。」
「え?」
「凛のその優しい心根に憧れたんだ。凛みたいになりたいわけじゃない。でもその優しさに魅入られた俺は君に幸せになって欲しいってそう思ったんだ。初めは手の届かない存在で自分が手を差し伸べることは出来ないと思っていたけれど、今は目の前にいるんだから。………意味わからないこと言っちゃったね、ごめん。それで、こんな理由じゃ駄目…かな?」
「ううん…駄目じゃない、ありがとう。」
「うん、どういたしまして。」

 知晴は凛の瞳を真っ直ぐに見つめ笑顔で言葉を受けいれた。
 その時、先程までジト目で知晴と凛を凝視していた澄晴が抱き合う二人に割って入った。

「はいはい、くっつきすぎだ。離れろー!」
「うるさい、澄晴。」

 それにイラついた知晴は澄晴の手を叩く。

「それよりも副会長に喧嘩売って大丈夫なのか?」

 叩かれた手を嬉しそうに見つめながら知晴に聞く。知晴は凛をソファに座らせ落ち着いてそうだったので澄晴に視線を戻す。

「別に、大丈夫。」
「まあ、いざとなれば俺が守る。」
「うざい、いらない、臭い。」
「え!?俺臭う!?え?え?え?おい、そこのバ会長!俺、臭うか?」

 知晴が鼻をつまむのを見て澄晴は焦った。そして部屋にいる生徒会長に近寄り自分の体臭を確認する。

「いや、別に…臭くはないが。」

 会長はいつも自分達と対立している風紀委員の二人の関係が思っていたのと全く違くてまたもや目を見張る。
 この学園で風紀委員以外で知晴の方が澄晴を振り回してそれを澄晴が楽しそうに受け入れているだなんて誰が知っているだろうか。

 俺は余りにも人を見なさすぎる。しかし、大抵の周りの人間もそうなのだ。人の中身など到底簡単に推し量れるものでは無い。
 大事なのは知る努力をすること。それ以上に自分は目の前の人物のことを殆ど知らないという無知を自覚すること、受け入れること。

 会長は一人黙り込みながら反省した。



 ガタッと凛が立ち上がる。ソファに知晴に座らされてから一人沈黙を保っていたが何かを決意したような顔で知晴のいる方向を見た。

「僕、ぶりっ子辞める。」

 

 



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