10 / 11
十
しおりを挟む数日後の放課後。他の風紀委員が見回りで出払っている中、知晴と澄晴は風紀室で書類と作成をしていた。知晴が先日の制裁現場を一部始終見ていたので風紀の一存で処理することになったのだ。初めは澄晴が資料作成をしていたがそれ以上のスピードで作業を終えられる自信のある知晴は澄晴をパソコンから剥がし作業を変わった。ちなみに澄晴の現在位置は知晴の椅子だ。
コンコン、ガラッ。
「帰りました~。」
扉から入ってきたのは昨日風紀委員に入った新人、鈴谷凛と転校生こと東條陽太だ。陽太は凛の隣に満足そうに居座っている。かなり懐いたようだ。
数日前、副会長に追われてここ風紀室を出て行った陽太はその後ずっと逃げ回っていたようだ。しかし昨日から副会長が外出届けを提出し、学園には居ない状態続いている為現在自由の身らしい。
そして昨日風紀室の前で入室しようか悩んでいる凛を連れて風紀委員に入りたいと希望してきた。
「凛と陽太、おかえり。」
知晴は書類作成を一旦辞め、二人のもとに行く。
「で、どうだった?」
「バッチリ許可貰ってきたぜ!」
「そっか。」
二人は今日、凛の親衛隊長と風紀委員の掛け持ちの許可を生徒会長に求めに行ったのだ。まあ会長が許可を出さずとももう既に風紀には入っているのだが、無事に許可を貰ってきたらしい。
「では改めて風紀にようこそ、凛、陽太。」
「うん!」
「おう!」
「逃亡生活がいつまた始まるか怖い。」
ソファに座った陽太は脚を腕で抱え込んで震えてる。
「陽太くん、大変そうだよね。ごめん、僕のせいで。」
「ちーがーうー、凛のせいじゃないっ!全部あの野郎のせいだろ!馬鹿なこといってんじゃねぇー!」
陽太は縮こまっていた身体を解いて隣にいた凛の肩を掴むとガタガタと揺さぶる。
「ご、ごめんって。」
「謝ってんじゃねぇー!」
揺さぶりが強くなる。
「あわわわわわわ!」
「ストップ。」
知晴が陽太の肩をポンッと手で叩くと揺さぶりが止まる。
「あ、ごめん。やりすぎた。」
陽太はパッと手を離す。
「それよりも、知晴は大丈夫なのかよ。それこそ俺のせいであいつに恨まれたって聞いたけど本当か?」
陽太はあの日走り去って副会長の最後残していった言葉を聞いてはいなかったが、凛に教えられたらしい。知晴の心配をしてくれている。
「あっ!僕一回ガタイのいい男達数人に囲まれる知晴くんに庇われたんだった!あれ大丈夫だったの?」
「は?俺そんなこと聞いてねぇぞ、知晴!」
凛の言葉に今迄知晴が中断した書類作成をしていた澄晴が反応する。立ち上がりこっちに寄ると凛に詳しく聞かせろと迫った。凛は澄晴が知らないことに驚いたのか目を見張り、こちらを見てくる。
「え?これ、言ってもいいの?」
「…別に。」
「ほら、言ってもいいってよ。」
知晴の一言では言っていいのか判断がつかず、凛はどうしようと悩む。
「あー、今のは隠してるわけじゃないから別に言ってもいいって意味の別にだ。この間のあの感情のままに喋る知晴が珍しいだけで普段はこんなんだから。」
澄晴が知晴の足りない部分の説明をしてくれる。凛が視線を向けてくるので知晴はこくりと頷く。
それを見て凛は話し出した。一昨日の午前中の休憩時間にトイレに行ったら人影のない場所に知晴が連れて行かれてるのを見たこと。慌てて追っていったらそこでは既に喧嘩が始まっていたこと。そして、知晴を助けようと参戦したものの男達が強すぎて逆に足でまといになってしまったこと。最後には逃げることしか出来なかったことを凛は話した。
「あれ絶対ここの生徒じゃないよね?知晴くんが余りにもいつも通りだったから忘れちゃってたけど、怪我ないの?」
「うん。」
澄晴は知晴に無言で近寄ると「見せろ。」と一言言って知晴の制服を脱がそうと手でボタンを触る。
その瞬間澄晴の身体が空中に浮いたと思ったら地面に叩きつけられた。
「いったっ、何が起こった?」
瞬間的に瞑った目を開けると澄晴は自分を投げ飛ばした格好でこちらを見る知晴と目が合った。その時澄晴は知晴が昔義理の母親に虐待を受けていた話をしてくれたことを思い出す。そしてその話題を話すきっかけに至ったのが知晴が何故年中長袖を来ているのかという話からだということも。
「ご、ごめ」
「信じ…られない。」
澄晴の口から出た謝罪の言葉に被せられた。知晴は瞳に涙をためながら言葉を絞り出したようだった。そして風紀室から走り出してしまう。その後ろ姿を呆然と見ていた澄晴は陽太の「おい、委員長!」という言葉にハッと覚醒し、後を追った。
「知晴!知晴!ごめん!ごめんなさい!止まってくれ!」
十数メートル先を走る知晴を必死に追いかける。知晴の足はかなり速いが根性で追い続け、走り続ける気力の無くなり座り込んだ知晴にやっとのことで追いついた。
96
あなたにおすすめの小説
僕はただの平民なのに、やたら敵視されています
カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。
平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。
真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
腐男子ですが何か?
みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。
ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。
そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。
幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。
そしてついに高校入試の試験。
見事特待生と首席をもぎとったのだ。
「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ!
って。え?
首席って…めっちゃ目立つくねぇ?!
やっちまったぁ!!」
この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる