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第12話:決戦ダンノウラ
Act-14 戦う理由(わけ)
しおりを挟むカラスに向かい、降下しながらキャノン砲を放つシャナオウ。
それに気付いたアントクは、すぐに神鏡によるシールドを展開して、いとも簡単にそれを弾き返した。
「無駄だよ、この蚊トンボが!」
すかさずアントクが、魔導砲を撃ち返す。
だがそれは六枚の神鏡の半分だけの攻撃であり、残り半分では引き続き、源氏艦隊への砲撃を継続していた。
「やめろ、お前の狙いは私だろ!」
「何を今さら! 私の敵は、源氏すべてだ!」
感応した意識による、ウシワカとアントクの問答。
「こんな戦い方はやめろ!」
「狂犬が、何を言う!」
「お前のやり方だと――人がたくさん死ぬんだよ!」
「ほざけ、私とお前の何が違う⁉︎」
アントクの答えに、ウシワカは心底怒りを覚えた。
――こいつは何も分かっちゃいない。
確かにウシワカも、残忍な戦闘狂の側面を持っている。
だが、いつも彼女の根底にあるのは、最大効率を目指す合理性であった。
弱点を的確に突く華麗なる奇襲。主将を討つためなら手段を選ばないそのやり口。敵軍全体の戦意を喪失させる演出性。
そのすべてが、戦闘の早期終結に繋がる事を、この天才戦術家である少女は計算していたのであった。
それが世間に対してどう映るかという政治感覚の欠如と、生理的嫌悪を抱いたアントクへの加虐心を抑えきれなかったという幼さはあれど――源ウシワカという少女は、戦争に対して確固たる『信念』を持って戦っていた。
だからウシワカは問う。
「お前は何のために戦っているんだ⁉︎」
「美しき世のため!」
アントクは即答した。そしてまた魔導砲を放つ。
「それがこんな事で実現できるのか⁉︎」
攻撃をかわしながら、ウシワカは目に映る阿鼻叫喚の戦場を指して叫んだ。
「そんな事は、お前ら源氏の知った事ではない!」
アントクもまた己の信じる、幼き正義を振りかざし絶叫する。
「平氏はいつもそうだ! 高い所からみんなを見下ろして――何もしてくれなかったくせに!」
叫び返すウシワカの脳裏に蘇る記憶たち――
まだ平氏がキョウトにいた頃、困窮にあえぐ民に金品を配ろうと、その軍事基地であるロクハラベースに忍び込んだ、すべての始まり。
そこでガシアル強奪に失敗し、その翌日に見た路傍で息絶えた貧しき男の姿。
そして己の身代わりに理不尽に殺された育ての親、鎌田マサキヨの最期。
それらが源氏の血脈に目覚めたウシワカに、平氏討滅を決意させたのだ。
その平氏の血を引く、皇女アントクが問い返す。
「ならば源氏に何ができると言うのだ⁉︎」
「源氏は平氏とは違う! ヨリトモお姉ちゃんは、きっとみんなが笑顔で暮らせる世の中を作ってくれる!」
みんなが笑顔で暮らせる世の中――それはウシワカが、木曽ヨシナカから託された『夢』であった。
「ヨリトモお姉ちゃんには、すべてを背負う覚悟がある!」
「覚悟だと⁉︎」
「そうだ、覚悟だ!」
感情を表に出さず粛清を重ねるヨリトモが、その裏で良心の呵責に耐えかね泣き崩れる姿を見てしまった時――ウシワカは、世を正すためにすべての泥をかぶろうとしている、姉の覚悟を知ったのだ。
「私にも覚悟がある! だがお前にはなんの覚悟もない!」
ウシワカが口にした覚悟。
それは母ゴシラカワ帝が示した、修羅の道を歩むという決意であった。
姉の天下平定のために、重ねていく鬼畜の所業。
それにより、いずれ自分は戦の中で果てるであろう事を、ウシワカは心のどこかで悟っていたのだった。
だが、姉が新しき世を――みんなが笑顔で暮らせる世の中を作ってくれるのなら、それで本望だ。
そう考えるウシワカの信念には、いささかの迷いもなかった。
その決意の差が、形として表れた。
「黙れ……黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れーっ!」
ウシワカの気迫にあてられたのか、アントクは言葉に窮し絶叫する。
「トキタダ、アントクを止めて! シズカはこんな決着、望んでいない!」
そこに、二人の問答を聞いていたそれぞれのツクモ神から、ベンケイが先手を打って論戦に加わってきた。
「くっ!」
トキタダもまた言葉に窮し、呻く。
惑星ヒノモトの地神シズカゴゼンに、マサコと共に召喚されたベンケイとトキタダ。
そこで示された『人としての決着』。
それは異性の天使タマモノマエを、人間が討つ唯一の方法――三種の神器の発動のために、源平がこれまでの旧怨を越えるための決着であり、どちらかが滅びる殲滅戦であってはならないはずであった。
だが今、自分が加護を与えるアントクは、源氏を一人残らず殺し尽くすために、神造兵器を暴走させている。
その事に迷いが生じたのか、トキタダがカラスに送る神通力が弱まった。
結果、アントクの操る神鏡の動きが鈍り、その攻撃をかわすだけで精一杯だったシャナオウに反撃の好機が訪れる。
「ウシワカ、今よ!」
「当たれーっ!」
ベンケイの声に合わせ、ウシワカがシャナオウから放ったキャノン砲が神鏡を撃ち抜いた。
「な、なぜ⁉︎」
これまで相手を圧倒していたアントクは、事態が理解できず戸惑いの声を上げる。
それを見逃さずウシワカは、二つ、三つと立て続けに神鏡を砕いていった。
「もらったーっ!」
そして六つの神鏡すべてを粉砕したシャナオウが、ウシワカの気合と共に、大上段からセイバーで斬りかかると、
「覚悟だと……そんなものは、私にもある。それは――お前を殺したいという覚悟だーっ!」
アントクは逆上ともいえる感情の爆発を起こし、その強大なる魔導力は失った神鏡を一瞬で再び顕現させた。
カラスの前面に並ぶ六枚の神鏡――そのすべてが、飛び込んでくるシャナオウに向けられていた。
「しまった!」
顔面蒼白になるウシワカ。
次の瞬間、魔導砲の直撃を食らったシャナオウが、真っ逆さまにダンノウラの海へと墜落していった。
Act-14 戦う理由(わけ) END
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