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陰謀
信頼されているカリーナ
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「有難うございます、ヴェンデル。彼女はあなたの魔法のお陰で薬物の効果もなくなったでしょう。流石に疲労は残っているようなので、起きるまで休ませておきます。もしかしたらまたあなたにお願いに参る時があるかもしれませんが――体調が良くない時は、遠慮なく断ってくださいね」
目のやり場に困る下着姿の彼女にシーツをかけると、ジークハルトのマントを脇に抱えてギルベルトは申し訳なさそうに頭を下げた。
「いいえ、いつでも呼んで下さい。私、力になりますから!」
ギルベルトの手を取って、ヴェンデルガルトは力強くそう言った。その言葉に、ギルベルトは微笑んだ。
「あなたは、いつでも女神のように優しい――有難うございます。あ、あとお願いが一つあります」
「何でしょう?」
「この事は秘密で調査をしますので、彼女の世話をする口の堅いメイドが必要です。カリーナを暫く彼女につけさせたいのです」
確かに、女性の世話をするにはメイドが必要だろう。ビルギットはヴェンデルガルトを護る魔法を使う事が出来るので、彼女から離せない。そうなると、カリーナしかいない。カリーナはまだ若いが、ビルギットが褒めるほどよく出来たメイドだ。ただ、少し賑やかなのが難点だ。
「分かりました、カリーナにお願いをしておきます。ギルベルト様、ご無理なさらずに」
「あなたに心配して頂いたので、私は無事頑張りますよ。有難う、私の天使。この可哀想な人を、必ず助けます」
ギルベルトはヴェンデルガルトの額にキスをすると、愛おしそうに瞳を細めた。
「カリーナには、私からも説明します。ヴェンデルガルト様たちと、ご一緒に部屋に戻ります。そうして、カリーナを連れてきますね」
エルマーがそう言って、ロルフと共に目立たないようにヴェンデルガルトの部屋に戻った。エルマーはさっきの少女の様子にまだ動揺していて、深い呼吸を繰り返していた。
ヴェンデルガルトから離れるのは嫌だとカリーナは駄々をこねていたが、ヴェンデルガルトからお願いをされたのと薔薇騎士団からの命令という事で、仕方なくエルマーに連れられて医務室に向かった。
「昔、同じような事がありましたね」
ビルギットの言葉に、ヴェンデルガルトが頷く。その顔は、ひどく憐れみを含んでいた。
「二百年前にですか?」
ロルフの言葉に、ビルギットが口を開いた。
「まだ西に王国が沢山ある時――今は、バルシュミーデ皇国の植民地になっているんですよね? その王国があった時に、貴族のお嬢様を攫ってマッサという中毒性がある植物を利用して、薬漬けにして自我を無くして貴族相手の娼婦にさせていたんです。礼儀作法や一般教育を受けた娼婦は、高く買われたそうです。バッハシュタイン王国はそれを嫌い、西とはほとんど交流がありませんでした」
「身体の傷は癒えたけど――大丈夫かしら? 精神的な治療も、明日行って魔法かけてみようかしら」
ヴェンデルガルトは、沈んだ顔をしたままだ。
「そうしましょう。ヴェンデルガルト様は、今日は医務室まで行って戻ってこられました。随分体力が戻っています。歩く練習がてら、行きましょう。疲れたら、俺が抱えて帰ってきますから」
ロルフの、ヴェンデルガルトを気遣った言葉に、ようやく彼女は小さく微笑んだ。
「では、今日は完食出来るように頑張りましょう。今日のメインは、ゲルンの腸詰です――ああ、勿論血は入っていません。ヴェンデルガルト様は苦手ですものね」
ゲルンは、豚と猪に似た動物だ。この時期に、よく狩りで捕らえられる。腸詰にその血を入れる料理法もあるが、ヴェンデルガルトは血の味が苦手だった。それを聞いてほっとする。
「カリーナがいないと、寂しいですね」
ふと、料理を運びながらビルギットが呟いた。ヴェンデルガルトが南にいた時、泣いていたビルギットを一番励ましてくれたのは、カリーナだ。カリーナは騒がしいが優しく、我慢強い性格だ。ビルギットはカリーナを信頼していて、ヴェンデルガルトの世話を一緒にする相手は彼女しかいないと思っていた。
「カリーナにも、差し入れして励ましましょう」
「良いですね、俺朝一番に買ってきますよ!」
ヴェンデルガルトの担当は、皆に憧れられていた。ビルギットもカリーナも他のメイドには羨ましがられて、ロルフは同じ赤薔薇騎士団員から毎日のヴェンデルガルトの様子を教えてくれとねだられる。騎士団の中には、本気で彼女に憧れている人も多いとの事だ。
医務室は大変な事になっていたが、ヴェンデルガルトの部屋はいつも通り和やかな雰囲気だった。
「まずは、身体を拭いて服を着替えさせて欲しい」
ギルベルトはカリーナにそう頼むと、医務室にお湯を運ばせた。そうして男たちが部屋を出る。
「お可哀想に……」
簡単に話を聞いたカリーナは、治癒魔法をかけて貰った少女を優しくお湯で綺麗に拭いていく。身体を清めて綺麗な服を着せるまで、カリーナは黙ったまま丁寧に彼女を起こさないように作業をした。
目のやり場に困る下着姿の彼女にシーツをかけると、ジークハルトのマントを脇に抱えてギルベルトは申し訳なさそうに頭を下げた。
「いいえ、いつでも呼んで下さい。私、力になりますから!」
ギルベルトの手を取って、ヴェンデルガルトは力強くそう言った。その言葉に、ギルベルトは微笑んだ。
「あなたは、いつでも女神のように優しい――有難うございます。あ、あとお願いが一つあります」
「何でしょう?」
「この事は秘密で調査をしますので、彼女の世話をする口の堅いメイドが必要です。カリーナを暫く彼女につけさせたいのです」
確かに、女性の世話をするにはメイドが必要だろう。ビルギットはヴェンデルガルトを護る魔法を使う事が出来るので、彼女から離せない。そうなると、カリーナしかいない。カリーナはまだ若いが、ビルギットが褒めるほどよく出来たメイドだ。ただ、少し賑やかなのが難点だ。
「分かりました、カリーナにお願いをしておきます。ギルベルト様、ご無理なさらずに」
「あなたに心配して頂いたので、私は無事頑張りますよ。有難う、私の天使。この可哀想な人を、必ず助けます」
ギルベルトはヴェンデルガルトの額にキスをすると、愛おしそうに瞳を細めた。
「カリーナには、私からも説明します。ヴェンデルガルト様たちと、ご一緒に部屋に戻ります。そうして、カリーナを連れてきますね」
エルマーがそう言って、ロルフと共に目立たないようにヴェンデルガルトの部屋に戻った。エルマーはさっきの少女の様子にまだ動揺していて、深い呼吸を繰り返していた。
ヴェンデルガルトから離れるのは嫌だとカリーナは駄々をこねていたが、ヴェンデルガルトからお願いをされたのと薔薇騎士団からの命令という事で、仕方なくエルマーに連れられて医務室に向かった。
「昔、同じような事がありましたね」
ビルギットの言葉に、ヴェンデルガルトが頷く。その顔は、ひどく憐れみを含んでいた。
「二百年前にですか?」
ロルフの言葉に、ビルギットが口を開いた。
「まだ西に王国が沢山ある時――今は、バルシュミーデ皇国の植民地になっているんですよね? その王国があった時に、貴族のお嬢様を攫ってマッサという中毒性がある植物を利用して、薬漬けにして自我を無くして貴族相手の娼婦にさせていたんです。礼儀作法や一般教育を受けた娼婦は、高く買われたそうです。バッハシュタイン王国はそれを嫌い、西とはほとんど交流がありませんでした」
「身体の傷は癒えたけど――大丈夫かしら? 精神的な治療も、明日行って魔法かけてみようかしら」
ヴェンデルガルトは、沈んだ顔をしたままだ。
「そうしましょう。ヴェンデルガルト様は、今日は医務室まで行って戻ってこられました。随分体力が戻っています。歩く練習がてら、行きましょう。疲れたら、俺が抱えて帰ってきますから」
ロルフの、ヴェンデルガルトを気遣った言葉に、ようやく彼女は小さく微笑んだ。
「では、今日は完食出来るように頑張りましょう。今日のメインは、ゲルンの腸詰です――ああ、勿論血は入っていません。ヴェンデルガルト様は苦手ですものね」
ゲルンは、豚と猪に似た動物だ。この時期に、よく狩りで捕らえられる。腸詰にその血を入れる料理法もあるが、ヴェンデルガルトは血の味が苦手だった。それを聞いてほっとする。
「カリーナがいないと、寂しいですね」
ふと、料理を運びながらビルギットが呟いた。ヴェンデルガルトが南にいた時、泣いていたビルギットを一番励ましてくれたのは、カリーナだ。カリーナは騒がしいが優しく、我慢強い性格だ。ビルギットはカリーナを信頼していて、ヴェンデルガルトの世話を一緒にする相手は彼女しかいないと思っていた。
「カリーナにも、差し入れして励ましましょう」
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ヴェンデルガルトの担当は、皆に憧れられていた。ビルギットもカリーナも他のメイドには羨ましがられて、ロルフは同じ赤薔薇騎士団員から毎日のヴェンデルガルトの様子を教えてくれとねだられる。騎士団の中には、本気で彼女に憧れている人も多いとの事だ。
医務室は大変な事になっていたが、ヴェンデルガルトの部屋はいつも通り和やかな雰囲気だった。
「まずは、身体を拭いて服を着替えさせて欲しい」
ギルベルトはカリーナにそう頼むと、医務室にお湯を運ばせた。そうして男たちが部屋を出る。
「お可哀想に……」
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