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陰謀
証拠
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「ギルベルト様!」
全員がフロレンツィアに気を取られていたので、執事が部屋に入って来るのに気が付かなかった。ロルフが剣を構える執事のその腕を蹴ると、執事は呆気なく飛ばされて床に倒れた。絵を描くことが好きで、武術をした事が無かったのだろう。素早くロルフに取り押さえられた。
「おい、魔女! フロレンツィア様を治せ! 毒の耐性が弱くなったから、意識を取り戻さない!」
ロルフに腕を押さえられても、執事はフロレンツィアの事を心配していた。ロルフは一度執事の顔を殴った。しかし、執事は言葉とは裏腹に願う様にヴェンデルガルトを見つめていた。
「治します。落ち着いて下さい」
ヴェンデルガルトはそう言うと、部屋の中に入った。壁には、色んな紙が貼られていた。名簿の様な紙の束も見えた。
「治療」
優しくヴェンデルガルトが治癒魔法を唱えると、苦しそうだった息が収まり疲れのせいか眠ったようだ。
「フロレンツィアは――娘は、夫と何をしたのでしょう?」
一連の出来事を見ていたレナータは、動揺したようにヴェンデルガルトに訊ねた。ヴェンデルガルトは少し躊躇ったが、静かに口を開いた。
「ラムブレヒト公爵は、国家反逆罪の容疑。フロレンツィア様は、貴族令嬢の誘拐と……虐待の容疑です」
「まさか! ……まさか、そんな恐ろしい事を! ああ、神よ……」
レナータは、フロレンツィアに駆け寄らなかった。それが、もう決別している証だろうか。室内をざっと見渡したギルベルトが「証拠は、全てここにあるようですね」と言うと、レナータは更に涙を零した。
「私は……私は、何も知りませんでした。知っていれば、止めました! そんな私の所に、こんな恐ろしいものを置いておくなんて!」
「嘘はよくありません、レナータ様」
ヴェンデルガルトは、悲しそうにレナータを見つめた。彼女は金の瞳を見つめて、動揺したように瞳を泳がせた。
「別宅にあんな地下室が最近出来た訳がないですよね。あなたが教会に住むまで、別宅に住んで地下牢を作るのを世間から隠しながら用意していたのではないでしょうか? 夫婦不仲も、嘘。昨夜この執事が来た時、フロレンツィア様をここに匿ったのでしょう? 昨夜から今朝に掛けての短い時間で、あなたがいない時間にフロレンツィア様を隠すなんて無理なんです」
「そんな、私は何も知らない!」
「教会に来る令嬢たちを、あなたが選別していたのではないですか? 令嬢誘拐は、きっと何年も前から行っていたんですね。バレないと分かって、今回人数を増やした。それにさっき、この執事が襲い掛かってきた時一番後ろにいたのはあなた。なのに、何の声も上げませんでした」
「違う、驚いて声が出なかっただけです!」
「残念ながら、この書面にあなたのサインがありますよ。令嬢を売ったお金の取り分に関する書面の様ですが二年前の日付です」
ギルベルトは、一枚の紙を取り出して彼女に見せた。それを見て、レナータの涙は止まって青い顔になった。レナータはそこで慌てて逃げようとするが、ヴェンデルガルトがその腕を掴んだ。
「離して! 離せ! 離せ!! この、無能野郎! こいつ等さえ始末すれば!!」
暴れるレナータは、ヴェンデルガルトの腕を振り払う様に暴れた。執事を押さえているロルフは、手が離せない。
「私のヴェンデルに乱暴しないで貰おう――あなたこそ、諦めて落ち着きなさい」
「きゃあ!」
ギルベルトが歩み寄りヴェンデルガルトからレナータの腕を受け取ると、強くひねり上げた。
「ヴェンデル、すみませんが神父に縄を用意して貰える様に話して貰えませんか? それと、城に応援を呼んで欲しいと」
「分かりました!」
ギルベルトにそう言われて、ヴェンデルガルトは神父の元に向かった。縄を用意して貰い、ギルベルトとロルフはレナータと執事、眠っているフロレンツィアを縄で縛った。そうして、赤薔薇騎士と白薔薇騎士を引き連れたジークハルトがやって来た。入れ替わりに、ロルフとヴェンデルガルトはカールの別荘に向かった。
「ラムブレヒト公爵に強いコネと財力があったのは、これだったんですね」
「薬の販売と、令嬢娼婦……それらを使った貴族の弱みを握る。汚いわ……可哀想な彼女達……」
自分が起きた時、すでに囚われていた少女たちがいた。亡くなった少女もいたのかもしれない。短期間にあんな地下牢が作れるはずなかったのだ。ヴェンデルガルトはその地下牢を見なかったが、話しを聞いていて違和感を抱いていたのに今になって気が付くなんて。
「でも、助けられた少女たちがいます。ヴェンデルガルト様が、これから支えてあげてください。俺も手伝いますから」
馬に乗るロルフの言葉に、ヴェンデルガルトは彼の前に乗りながら小さく頷いた。
これから、見つかった証拠でラムブレヒト公爵と彼らと共に国家転覆を狙う人たちが裁かれるだろう。国が大きく変わる時だ。
全員がフロレンツィアに気を取られていたので、執事が部屋に入って来るのに気が付かなかった。ロルフが剣を構える執事のその腕を蹴ると、執事は呆気なく飛ばされて床に倒れた。絵を描くことが好きで、武術をした事が無かったのだろう。素早くロルフに取り押さえられた。
「おい、魔女! フロレンツィア様を治せ! 毒の耐性が弱くなったから、意識を取り戻さない!」
ロルフに腕を押さえられても、執事はフロレンツィアの事を心配していた。ロルフは一度執事の顔を殴った。しかし、執事は言葉とは裏腹に願う様にヴェンデルガルトを見つめていた。
「治します。落ち着いて下さい」
ヴェンデルガルトはそう言うと、部屋の中に入った。壁には、色んな紙が貼られていた。名簿の様な紙の束も見えた。
「治療」
優しくヴェンデルガルトが治癒魔法を唱えると、苦しそうだった息が収まり疲れのせいか眠ったようだ。
「フロレンツィアは――娘は、夫と何をしたのでしょう?」
一連の出来事を見ていたレナータは、動揺したようにヴェンデルガルトに訊ねた。ヴェンデルガルトは少し躊躇ったが、静かに口を開いた。
「ラムブレヒト公爵は、国家反逆罪の容疑。フロレンツィア様は、貴族令嬢の誘拐と……虐待の容疑です」
「まさか! ……まさか、そんな恐ろしい事を! ああ、神よ……」
レナータは、フロレンツィアに駆け寄らなかった。それが、もう決別している証だろうか。室内をざっと見渡したギルベルトが「証拠は、全てここにあるようですね」と言うと、レナータは更に涙を零した。
「私は……私は、何も知りませんでした。知っていれば、止めました! そんな私の所に、こんな恐ろしいものを置いておくなんて!」
「嘘はよくありません、レナータ様」
ヴェンデルガルトは、悲しそうにレナータを見つめた。彼女は金の瞳を見つめて、動揺したように瞳を泳がせた。
「別宅にあんな地下室が最近出来た訳がないですよね。あなたが教会に住むまで、別宅に住んで地下牢を作るのを世間から隠しながら用意していたのではないでしょうか? 夫婦不仲も、嘘。昨夜この執事が来た時、フロレンツィア様をここに匿ったのでしょう? 昨夜から今朝に掛けての短い時間で、あなたがいない時間にフロレンツィア様を隠すなんて無理なんです」
「そんな、私は何も知らない!」
「教会に来る令嬢たちを、あなたが選別していたのではないですか? 令嬢誘拐は、きっと何年も前から行っていたんですね。バレないと分かって、今回人数を増やした。それにさっき、この執事が襲い掛かってきた時一番後ろにいたのはあなた。なのに、何の声も上げませんでした」
「違う、驚いて声が出なかっただけです!」
「残念ながら、この書面にあなたのサインがありますよ。令嬢を売ったお金の取り分に関する書面の様ですが二年前の日付です」
ギルベルトは、一枚の紙を取り出して彼女に見せた。それを見て、レナータの涙は止まって青い顔になった。レナータはそこで慌てて逃げようとするが、ヴェンデルガルトがその腕を掴んだ。
「離して! 離せ! 離せ!! この、無能野郎! こいつ等さえ始末すれば!!」
暴れるレナータは、ヴェンデルガルトの腕を振り払う様に暴れた。執事を押さえているロルフは、手が離せない。
「私のヴェンデルに乱暴しないで貰おう――あなたこそ、諦めて落ち着きなさい」
「きゃあ!」
ギルベルトが歩み寄りヴェンデルガルトからレナータの腕を受け取ると、強くひねり上げた。
「ヴェンデル、すみませんが神父に縄を用意して貰える様に話して貰えませんか? それと、城に応援を呼んで欲しいと」
「分かりました!」
ギルベルトにそう言われて、ヴェンデルガルトは神父の元に向かった。縄を用意して貰い、ギルベルトとロルフはレナータと執事、眠っているフロレンツィアを縄で縛った。そうして、赤薔薇騎士と白薔薇騎士を引き連れたジークハルトがやって来た。入れ替わりに、ロルフとヴェンデルガルトはカールの別荘に向かった。
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「薬の販売と、令嬢娼婦……それらを使った貴族の弱みを握る。汚いわ……可哀想な彼女達……」
自分が起きた時、すでに囚われていた少女たちがいた。亡くなった少女もいたのかもしれない。短期間にあんな地下牢が作れるはずなかったのだ。ヴェンデルガルトはその地下牢を見なかったが、話しを聞いていて違和感を抱いていたのに今になって気が付くなんて。
「でも、助けられた少女たちがいます。ヴェンデルガルト様が、これから支えてあげてください。俺も手伝いますから」
馬に乗るロルフの言葉に、ヴェンデルガルトは彼の前に乗りながら小さく頷いた。
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