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ペガサスの少女
そのきゅう
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大きな円陣を組んで天を飛ぶペガサスの少女たちはクラーケンが巨大な白波を蹴立ててこちらに近づいて来るのを見るやその場で翼をはためかせながら空中でいったん静止し運んできた大きな網を海上の宙空に協力して広げると件の怪物が自分たちの真下を通過するのをじっと待ち構えます。
彼女たちは円陣を組んで浮遊しながらその真ん中に置いた丈夫な蔓草で編み上げた巨大な投網の端をそれぞれが長い首を伸ばした口先に咥え空中で協力して支えていました。
それは遠目から見ると漁師の使う網を巨大化させた様な物体が空中をフワフワと浮いているように見えました。
一方、沖の方に目をやると怒りにまかせて波を蹴立て海岸の方に近づいて来る大海獣クラーケンの海面に半身を突き出した巨大な姿とその眼前を羽虫のごとく旋回して飛ぶシュナン少年の小さな姿が水平線の向こうにかすかに見て取れます。
羽虫のごとく眼前を飛ぶシュナンを血相を変えて海を泳ぎ追いかける魔獣クラーケン。
それとは対照的に反対方向の海岸側から飛んで来て沿岸近くの海の上空に大きな網を広げながら滞空して陣を張りクラーケンがやって来るのを静かに待ち受けるペガサスの編隊。
水平線の向こうから迫り来るクラーケンの巨大で異様な姿が宙空で待ち受けるペガサスの少女たちの澄んだ瞳に映ります。
海と空で上下の空間を挟み対峙する両者はどんどん接近して砂浜近くの浅瀬の海で今まさにすれ違おうとしていました。
空飛ぶシュナン少年は微妙に進路を変えて背後から波を蹴立て追ってくるクラーケンがちょうど前方の空で網を広げて待ち構えるペガサスたちの群れと正対する様に上手く誘導します。
そしてー。
双方が浅瀬の海ですれ違おうとするその瞬間シュナンは急に飛ぶスピードを上げて空中でペガサスの群れと交差しました。
その刹那、彼は叫びました。
「今だっ!!網を落とせっ!!!」
次の瞬間、ペガサスたちは円陣を組んで支えながら運んでいたその大きな網を海を泳いでこちらに迫るクラーケンの頭上に落としました。
落とされた網はフワリと空中で大きく広がって重りがついている為か徐々に加速し海を行くクラーケンに向かって急速に落下していきます。
そしてシュナンやペガサスたちが空中で迂回しながら見守る中その落とされた網は海上のクラーケンの身体に接触しその巨体をすっぽりと包みこみました。
「イアーッー!!イアッー!!イタベタッ!!」
今では誰にも理解出来ない古代の言語で咆哮を上げる大海獣クラーケン。
彼は夢中でシュナンを追いかけていた為、上空で待ち構えるペガサスの編隊にギリギリまで気づかなかったのです。
そしていきなり上空から網を落とされそれに身体を絡みとられてクラーケンはパニックに陥ります。
クラーケンはその怪力で絡みついた網を引きちぎろうとしましたが樹齢千年以上の大木の蔓で作られたそれはとても丈夫で柔軟性もありさしもの大海獣の力をもってしても縄から抜け出す事は出来ませんでした。
むしろジタバタと動いたせいでその網はますます彼の身体に深く絡みつきました。
「グアッ!!メンラー!!モ!!イタベタッ!!」
そして浅瀬の海で網に絡まれそれを外そうと波を立てて暴れるクラーケンを上空からペガサスの群れと共に見下ろすシュナン少年は網が完全にクラーケンの身体を覆ったのを確かめると海岸の方に向かって合図をするように大きく手を振ります。
実はクラーケンの上に落下し彼の身体を拘束しているその大きな網には一本の太くて長い丈夫な手綱が取り付けられていました。
その丸太の様な極太のロープを引けば網はキュッとすぼまり中に入った者は出られなくなる仕組みだったのです。
そしてその長い長いロープは海の中を真っ直ぐに走り海岸の方へ延びています。
一方、その海岸では砂浜まで延びた長いロープの周辺にボンゴ族の男たちが長蛇の列を作って待機していました。
ボンゴ族の男たちは砂浜の上に置かれた海へと延々と続く長い極太ロープの側にうずくまりそれぞれが綱引きをする様に両手でそのロープを握りしめています。
海岸の砂浜にずらりと並び綱引きの要領でロープを握りしめる彼らは拘束された海中のクラーケンの真上に浮かぶシュナンからの合図で一斉にロープを引く瞬間を今や遅しと待ち構えていました。
海獣クラーケンをそのホームグランドである海の中から引きずり出し無力化する為に。
そうこれこそシュナンとその師であるレプカールがペガサス族とボンゴ族に提案した共同作戦の中身でした。
それは海の中では無敵を誇る海獣クラーケンをまず海岸近くの浅瀬までおびき寄せそれからペガサス族とボンゴ族が共同で彼を大きな網で捕らえてそのまま陸地まで引きずり出して倒すという大がかりな作戦でした。
砂浜で長く太いロープを両手で持ち綱引きをする様に順番に並んでいるボンゴ族の男たちの先頭に立つのは一族の長ボボンゴでした。
彼はペガサスたちとともに網の中のクラーケンの上空に浮かぶシュナンが杖を大きく振って合図をしたのを見ると自分の後ろに並んでロープをもつ仲間たちに大声で呼びかけます。
「今っ!!引けっ!!!ボンゴッ!!ボボンガッ!!!」
ウオーッという裂帛(れっぱく)の気合いと共に綱引きの様に怪力揃いのボンゴ族が一斉にロープを引きます。
すると砂浜から海中へと延びる太いロープはたちまちピンと張って先端についた網を茶巾袋みたいにキュッと引き絞ると共にその中に捕らわれた海の底でもがくクラーケンを海岸の方にズルズルと引き摺り始めます。
「ヤキガースー!!!」
必死に抵抗するクラーケンでしたが浅瀬の海にいる為に本来の力を発揮できず網に閉じ込められたまま海底からズルズルと陸地の方へ引き摺られていきます。
海岸に近づくにつれその巨体は水の中から引きずり出されその奇怪な全身が露わになってゆきます。
シュナンとペガサスに変身した少女たちはその様子を海の上の空中に浮かびながらジッと見下ろしていました。
そしてついに海の海獣クラーケンは一丸となってロープを引くボンゴ族の手により完全に水の中から引きずり出されました。
「シーチャ!!!マシマシ!!!ギネッ!!!メエカヒッ!!!ンガーッ!!!」
ホームグラウンドである海から陸地に投げ出され網に包まれたまま狂ったように砂浜でのたうち回るクラーケン。
そしてー。
そんな風に網に包まれたその巨体を白日の下にさらしたクラーケンに向かって周囲の砂浜にいるボンゴ族の間を縫う様に一つの人影が近づいて来ました。
[続く]
彼女たちは円陣を組んで浮遊しながらその真ん中に置いた丈夫な蔓草で編み上げた巨大な投網の端をそれぞれが長い首を伸ばした口先に咥え空中で協力して支えていました。
それは遠目から見ると漁師の使う網を巨大化させた様な物体が空中をフワフワと浮いているように見えました。
一方、沖の方に目をやると怒りにまかせて波を蹴立て海岸の方に近づいて来る大海獣クラーケンの海面に半身を突き出した巨大な姿とその眼前を羽虫のごとく旋回して飛ぶシュナン少年の小さな姿が水平線の向こうにかすかに見て取れます。
羽虫のごとく眼前を飛ぶシュナンを血相を変えて海を泳ぎ追いかける魔獣クラーケン。
それとは対照的に反対方向の海岸側から飛んで来て沿岸近くの海の上空に大きな網を広げながら滞空して陣を張りクラーケンがやって来るのを静かに待ち受けるペガサスの編隊。
水平線の向こうから迫り来るクラーケンの巨大で異様な姿が宙空で待ち受けるペガサスの少女たちの澄んだ瞳に映ります。
海と空で上下の空間を挟み対峙する両者はどんどん接近して砂浜近くの浅瀬の海で今まさにすれ違おうとしていました。
空飛ぶシュナン少年は微妙に進路を変えて背後から波を蹴立て追ってくるクラーケンがちょうど前方の空で網を広げて待ち構えるペガサスたちの群れと正対する様に上手く誘導します。
そしてー。
双方が浅瀬の海ですれ違おうとするその瞬間シュナンは急に飛ぶスピードを上げて空中でペガサスの群れと交差しました。
その刹那、彼は叫びました。
「今だっ!!網を落とせっ!!!」
次の瞬間、ペガサスたちは円陣を組んで支えながら運んでいたその大きな網を海を泳いでこちらに迫るクラーケンの頭上に落としました。
落とされた網はフワリと空中で大きく広がって重りがついている為か徐々に加速し海を行くクラーケンに向かって急速に落下していきます。
そしてシュナンやペガサスたちが空中で迂回しながら見守る中その落とされた網は海上のクラーケンの身体に接触しその巨体をすっぽりと包みこみました。
「イアーッー!!イアッー!!イタベタッ!!」
今では誰にも理解出来ない古代の言語で咆哮を上げる大海獣クラーケン。
彼は夢中でシュナンを追いかけていた為、上空で待ち構えるペガサスの編隊にギリギリまで気づかなかったのです。
そしていきなり上空から網を落とされそれに身体を絡みとられてクラーケンはパニックに陥ります。
クラーケンはその怪力で絡みついた網を引きちぎろうとしましたが樹齢千年以上の大木の蔓で作られたそれはとても丈夫で柔軟性もありさしもの大海獣の力をもってしても縄から抜け出す事は出来ませんでした。
むしろジタバタと動いたせいでその網はますます彼の身体に深く絡みつきました。
「グアッ!!メンラー!!モ!!イタベタッ!!」
そして浅瀬の海で網に絡まれそれを外そうと波を立てて暴れるクラーケンを上空からペガサスの群れと共に見下ろすシュナン少年は網が完全にクラーケンの身体を覆ったのを確かめると海岸の方に向かって合図をするように大きく手を振ります。
実はクラーケンの上に落下し彼の身体を拘束しているその大きな網には一本の太くて長い丈夫な手綱が取り付けられていました。
その丸太の様な極太のロープを引けば網はキュッとすぼまり中に入った者は出られなくなる仕組みだったのです。
そしてその長い長いロープは海の中を真っ直ぐに走り海岸の方へ延びています。
一方、その海岸では砂浜まで延びた長いロープの周辺にボンゴ族の男たちが長蛇の列を作って待機していました。
ボンゴ族の男たちは砂浜の上に置かれた海へと延々と続く長い極太ロープの側にうずくまりそれぞれが綱引きをする様に両手でそのロープを握りしめています。
海岸の砂浜にずらりと並び綱引きの要領でロープを握りしめる彼らは拘束された海中のクラーケンの真上に浮かぶシュナンからの合図で一斉にロープを引く瞬間を今や遅しと待ち構えていました。
海獣クラーケンをそのホームグランドである海の中から引きずり出し無力化する為に。
そうこれこそシュナンとその師であるレプカールがペガサス族とボンゴ族に提案した共同作戦の中身でした。
それは海の中では無敵を誇る海獣クラーケンをまず海岸近くの浅瀬までおびき寄せそれからペガサス族とボンゴ族が共同で彼を大きな網で捕らえてそのまま陸地まで引きずり出して倒すという大がかりな作戦でした。
砂浜で長く太いロープを両手で持ち綱引きをする様に順番に並んでいるボンゴ族の男たちの先頭に立つのは一族の長ボボンゴでした。
彼はペガサスたちとともに網の中のクラーケンの上空に浮かぶシュナンが杖を大きく振って合図をしたのを見ると自分の後ろに並んでロープをもつ仲間たちに大声で呼びかけます。
「今っ!!引けっ!!!ボンゴッ!!ボボンガッ!!!」
ウオーッという裂帛(れっぱく)の気合いと共に綱引きの様に怪力揃いのボンゴ族が一斉にロープを引きます。
すると砂浜から海中へと延びる太いロープはたちまちピンと張って先端についた網を茶巾袋みたいにキュッと引き絞ると共にその中に捕らわれた海の底でもがくクラーケンを海岸の方にズルズルと引き摺り始めます。
「ヤキガースー!!!」
必死に抵抗するクラーケンでしたが浅瀬の海にいる為に本来の力を発揮できず網に閉じ込められたまま海底からズルズルと陸地の方へ引き摺られていきます。
海岸に近づくにつれその巨体は水の中から引きずり出されその奇怪な全身が露わになってゆきます。
シュナンとペガサスに変身した少女たちはその様子を海の上の空中に浮かびながらジッと見下ろしていました。
そしてついに海の海獣クラーケンは一丸となってロープを引くボンゴ族の手により完全に水の中から引きずり出されました。
「シーチャ!!!マシマシ!!!ギネッ!!!メエカヒッ!!!ンガーッ!!!」
ホームグラウンドである海から陸地に投げ出され網に包まれたまま狂ったように砂浜でのたうち回るクラーケン。
そしてー。
そんな風に網に包まれたその巨体を白日の下にさらしたクラーケンに向かって周囲の砂浜にいるボンゴ族の間を縫う様に一つの人影が近づいて来ました。
[続く]
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