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【検証と結果】
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俺は、人に近い魔物でIPS細胞移植の最終検証をするために魔物の情報を貰いに冒険者ギルドに行った。
「テスラさん、この辺にエイプかコング系の魔物っていますか?」
「そうですね。帝都から北西に行きますと山と森に囲まれたサンシャインの街がありますが、そこにエイプが多く生息すると言われていますね。」
「そうなんですね。ありがとうございます。」
「そうそう、あと別件ですが、最近、帝都の沖合でクラーケンが出現し、航行する船舶に甚大な被害が出ているそうです。一応、ギルドマスターからタカミさんが来たら状況を説明するように言われているのでご説明させてもらいました。」
「なぜ俺に・・・、まぁ、分かりました。ありがとうございます。」
なぜ俺にそんな事を話するんだろう。何か期待しているのか?でも、まぁ、情報として貰っておくのは悪くないかな。俺は、心の片隅にし留めておく。
俺は、レビテーションでサンシャインに向かう。サンシャインの街には飛行して約1時間程度の所にあった。街の大きさは、ヤマトの街程度かな。街並みもヤマトの街に似ている。俺は、街には立ち寄らず、そのまま森に向かう。マップを開きエイプを敵索する。結構な数のエイプがいるみたいだ。俺は、2体を生け捕りにして屋敷に転移で戻る。サンシャインの街の座標が特定できたので、次回から転移での移動が可能だ。俺は、庭に小屋を作り、結界で隔離する。早速、部屋に戻り、一匹のエイプをマウス同様、脳の一部を切り取り、IPS細胞を融合させ、再生させる。エイプでも再生は可能だった。これで、しばらく様子を見る事にした。
翌日、ホープ師匠の治療方針を話するために道場に向かった。道場には多くの門下生がいる。これでも結構っ選抜したらしい。そこには、ドミノとクーガの姿があった。
「こんにちわー。師匠いますか?」
「おう、お前か。じじいなら奥で休んでいる。なんか用か?」
「うん。師匠の治療について話しに来たんだけど、調子悪いのか?」
「いや、そういう訳じゃないと思うぞ。最近、門下生が多くて、じじいも張り切りすぎて疲れが出たんじゃないか?」
「そっか、では、ちょっと師匠の所に行って来る。それと、後でクーガ先輩にも話があるので時間ができたら教えてください。」
「ん?クーガ先輩!?なんか、お前にそう呼ばれると変な感じだな。クーガでいいよ。」
「いえ、年上の方だし、神明流の先輩だから。神明流は礼を重んじるんだろ?こういう事はちゃんとしないとね。」
「分かった、分かった。好きにしろ。ほれ、とっとと爺の所に行ってこい。」
俺は、ホープの所に行く。ホープは縁側の椅子に座り休んでいた。
「師匠、大丈夫ですか?」
「あぁ、お主か。まぁ、ちょっと疲れただけじゃ。最近の若者はこらえ性が無くてなっとらんな。」
俺は、師匠にヒールをかける。まあ、気休めだけどないよりはいいかな。
「悪いの。で、なんか用か?」
「はい、今後の治療のスケジュールについて話しようと思ってきました。」
「そうか。それはお主に任せる。好きにせい。」
「まぁ、そう言われてもちゃんと説明しないといけないと思うので・・・、現在、エイプを使った最終の検証を行っています。マウスやエイプにおいては今の所上手くいってます。脳細胞もきちんと再生しました。麻痺を持っていたエイプも普通に生活しています。この後、エイプの様子を見て問題なさそうであれば師匠の治療にあたりたいと思っています。何もなければ、オペの予定は1週間後でどうでしょうか?」
「今は、ドミノとクーガに道場を任せておる。儂は今の所予定は無いからお主に任せるとしよう。」
「分かりました。では、ドミノさんにも同じ説明をしておきます。」
俺は一礼して、ドミノとクーガの休憩委時間になるのを素振りをしながら待った。暫くするとドミノとクーガがやって来る。
「だから、あんたの教え方が雑なのよ。そんなんで門下生が理解できる訳無いじゃないの!」
「あー、分かった分かった。でも、あれくらい誰でも出来るだろ。」
「だから、そう言うのがダメなのよ!最初はちゃんと説明しないと変な癖着くでしょ!」
「はいはい。分かりましたよ。」
なんか、ドミノとクーガがやっている。でも、何となく仲良くやってそうだからいいか。
「仲良さそうですね。いい光景です。」
「仲良くないわよ!」
「これのどこ見て仲良いって言っているんだ?」
二人い揃って否定する。
「まぁまぁ、さっき師匠に根この治療について説明してきました。一応、ドミノさんにも説明しておきます。」
俺は、ドミノに今後の治療方針を話す。何気にクーガも聞いている。そりゃ、気になるか。
「で、じじいは治るのか?」
「うん、今の検証が上手くいけば問題無いと思う。」
「そっか。悪いな。こんな事になっちまって。」
「ほんとだよ。反省して下さい。」
「あぁ、そこは真摯に受け止めているよ。本当に悪かった。」
「なんか、素直なクーガ先輩は変な感じですね。」
「ぷぷぷ・・・クーガ先輩ですって。背筋が寒くなるわ」
「ふん!二人共、人が素直になってりゃ調子づきやがって」
「そう、そんな感じがクーガ先輩ですね。それと、クーガ先輩の腕ですが、そろそろ治しましょうか?」
「ん?治るのか?」
「まぁ、何とかなりますよ。」
「あー、でもいいわ。これは、俺への戒めだ。」
「ったく、何言っているですか。ちゃんと腕を治して道場に貢献する方がよっぽど戒めになりますよ。自分に酔ってないでとっとと治しちゃいましょう。今からいいですか?」
「あぁ、稽古は一応終わったからな。じゃあ、よろしく頼む」
俺は、オペの準備をする。クリーンルームを出し、そのベッドの上に上半身を脱いで寝てもらう。俺は、空間収納から白衣を取り出し、”バサ”っと着る。
「これからオペを始める。」
《ベール》
《アネスシージャ》
《リカバリー》
《アナライズ》
俺は、空間収納から腕を取り出す。そして、腕の断面を切る。
《クリップ》
血流を止め、血管、神経、筋組織を繋いでいく。
《シール》
最後にヒールで傷口を治すが、わざと跡を残した。
《ヒール》
《アンチバクテリア》
《アンチウィルス》
《アナライズ》
《キュア》
麻酔を覚まし、オペを終える。
「術式終了。」
クーガは起き上がって、腕を動かす。
「少し違和感があるけど、ちゃんと動く!お前凄いな。」
「治療費は、大金貨3枚ね。」
「ま、マジか!!まぁ、でもそれくらいの価値はあるな。分かった。分割でいいか?」
「では、その分、死に物狂いで道場の為に働いてください。よろしくお願いします。」
「あぁ、分かっているよ。それとこの傷。わざと残したんだろ。ありがとな。」
「うん。後は、師匠が元の身体に戻ればすべて解決だね。」
「あぁ、よろしく頼むよ。」
「うん、全力を尽くす。ってことで、師匠の治療費もクーガ持ちね。」
「あ、あぁ…も、もちろんだ・・・!」
「嘘だよ。師匠にはそれ以上の物を貰っている。その恩に俺は答えるから心配しなくていいよ。」
「ったく。まぁ、その方がタカミらしいけどな。」
俺は、屋敷に戻り、エイプ達を観察する。特に異常は見られない。この調子でうまく行って欲しい。
鍛錬、図書館三昧の日常が1週間が過ぎた頃に王家より使者が屋敷に訪れた。どうやら調査結果が出たようだ。使者によると翌日の昼過ぎに俺と、オッティー、ボルボに城に出向くように国王からお達しが来た。俺達は、言われた通り昼に国王の下へ出向く。流石に東地区最大の都市 中央帝都イーストシティーだ。城門から場内に入るまでの距離が半端ない。俺達は馬車で城門を抜け城の入口までやって来た。数人の親衛隊が入口で俺達を待ち構えている。俺達は馬車を降り、彼らの下へ行く。
「私は、中央帝都親衛隊隊長 トーハツだ。君がタカミ君か。ようこそ。イーストシティー城へ。それに、ボルボ様とオッティー様。お久しぶりでございます。さぁ、皆様、陛下がお待ちになっております。こちらへどうぞ。」
俺達は、トーハツの後について行く。両サイドには親衛隊の兵士が並走している。城内も凄い。様々な彫刻や装飾がズラッと並んでいる。庭園を挟んだ通路を通り、ひたすら進む。そして、大きな扉の前でトーハツが止まった。
「ここは謁見の間である。くれぐれも陛下に無礼が無いようにお願いする。」
トーハツは門兵に一言告げると、扉が開く。謁見の間はとても広く内装も豪華絢爛だ。その中心の奥に陛下が座っている。その両隣にはお妃さまと皇子が付き添っている。なんか、本格的な謁見だ。俺達は、トーハツの後に続き陛下の側へと近づいていく。そして、陛下の前に来ると、片膝をつき礼をする。
「よく来たくれたな。タカミよ。そなたの告発後、各所、貴族達の調べを行った。」
「はい。私の話を聞き入れて下さり大変感謝申し上げます。」
「そんなに畏まらなくてもよい。面を上げなさい。」
「はい。ご意向のままに」
俺は、顔を上げ国王をみる。
「いい目じゃ。ボルボもオッティーもいい少年と出会った。調べの結果、お主らの話の通りだった。
大臣が今回の調査結果を読み上げる。
「この件に関与した首謀者は全員投獄、貴族達は、その称号の剥奪と資産の没収を行った。特に、魔族の手引きに関与した者はその時の状況を自白させ、処刑とした。尚、現第一魔導騎士団隊長は、元騎士団長との関りは無かったものとし、現職を継続して行うものとした。尚、オッティー元第一魔導騎士団団長及び第一特殊部隊隊長 ボルボ=アイーンの処遇については本人との協議の上追って公示を出す物とする」
「オッティー、ボルボ、儂が至らぬばかりにお前たちに大変な苦労をかけたな。申し訳なかった。」
国王は自らオッティーとボルボに謝罪する。国王自ら謝罪すると言う事は、国が今回の事件に関して全面的に非を認めた事になる。大変なことだ。
「なんと、恐れ多いこと。陛下頭を上げてください。」
「そうは言っても、オッティーに関してはこの国が悪魔からの被害を受けぬよう自らの命を犠牲にしてまで貢献してくれた。しかも、そなたらは世界を救った5大英雄の2人。それなのにこのような仕打ちをして申し訳なさでいっぱいなのじゃ。」
「陛下、お気になさらずに。儂は、この世界と同じくらい家族も大切にしております。その家族を守りこのようになった事。陛下に非はありませぬ」
「そう言ってもらえると儂も少しは気が楽になる。オッティー、ボルボすまんな。」
「陛下、勿体なきお言葉です。」
「もう過ぎた事なのでお気になさらないで頂きたい。」
「そこでじゃ、二人にはもう一度、儂直属の魔導士と諜報員として就いてほしいのじゃがどうだろうか。」
「折角のお言葉ですが、某らにはタカミと言う主君がおります。大変喜ばしいお誘いではありますがお断りさせていただき奉る。」
「お主らが認めるこの少年、一体どのような人物なのだ?」
「某らの主君は、人柄も能力も我我が主君ににふさわしい人物と思っておりまする。」
「5大英雄にそこまで言わせるなんてとんでもない少年だ。その少年にも褒美を与えねばならないな。タカミ。お主の望みを言ってみよ。」
「はい、私の望みは既に叶えて頂きました。ありがとうございます。」
「ん?どういうことだ?」
「はい、私の望みは大切な仲間であるボルボとオッティーの冤罪を晴らす事。なのでもう充分でございます。」
「わっはっはっは!!そうか!うむ。流石オッティーやボルボが認めただけの事はある。分かった。では、こうしよう。今後、何か望みが出来たら時、儂に出来る事を一つ叶えてやろう。いつでも良い。何かあったら儂を尋ねで来るが良い。」
「え!!も、勿体なきお言葉でございます。」
なんか、俺は国王を勘違いしていた。王族や貴族はもっと威圧的で傲慢なイメージだったが、どうやらそうではないような気がする。それは、相手がオッティーやボルボと言った国王に近い存在だったからなのかは分からないが、こうしてきちんと調査し報告してくれた。リザードマンの集落をパジェロが襲撃に来た時は、確かに不信感で一杯だったが、パジェロが言った通り、第二皇子の独断だったのかもしれない。まぁ、分からないけど。でも、現国王に対して俺は悪いイメージは無くなった。今は、国王に感謝しているくらいだ。今の所、すげてが順調だ。俺は、王城をでて帰路につく。1日の検証を最後に問題無ければ、ホープのオペをしたいと思っている。
屋敷に着き、エイプの下に向かう。今日が最後の検証となる。俺は、スキャンとアナライズで隅々までエイプの状態を調べる。状態としては、コントロールのエイプとほぼ同じ状態である事が分かった。問題行動も出ていない。ガン化の懸念もあったが今の所全くその兆候は見られていない。最後に時間を進めて2体の様子を見る。最初に3年、続いて5年と時間を進めて検証するが、特にコントロールと比較しても大きく変わる所は無かった。最後に10年進めてみる。最終の検証としても特に変わった所は見られず、俺が作ったIPS細胞の有効性は問題なさそうだ。その結果を踏まえ、ホープにIPS細胞を移植し、死滅した脳細胞と脳神経の再生を試みたいと思う。
翌日、俺は、ノアと共に道場に向かった。
「本日は、師匠の最後の処置を行います。魔獣による検証は問題なく済みました。しかし、ここからは本番です。正直、俺の初めての事なのでどうなるか分かりません。その事を了承していただきたい。」
俺は、ホープとドミノに今日の術式を説明する。一瞬ドミノは、不安そうな顔をしたが、二人は真剣に話を聞き、了承してくれた。
「分かった。私は、タカミを信頼している。おじい様をお願いします。」
「うむ。儂もお主を信頼しておる。もしだめでも、それが運命だと受け入れるから安心してやってくれ!」
「ありがとうございます。全力を尽くします。」
俺は、ドミノを外に出し、オペの準備を始める。
《クリーンルーム》
ホープに上半身だけ脱いでもらい、ベールで包み、ベッドに寝かせる。
《ベール》
《アネスシージャ》
全身の感覚を失いホープが意識をなくす。
《アシスタント》
《アナライズ》
俺の目の前に、バイタルのモニターが映し出される。集中してオペを行うために、アシスタントに状態のチェックを任せ、バイタルモニターを目の端にやる。
《スキャン》
俺の目の前に3Dの脳が映し出される。
《ターゲット》
機能していない部分を内部まで合わせ、空間認識と演算にてターゲットを絞り込む。
”さて、ここからが本番だ。”
《ズーム》
俺は、全記憶にて脳細胞や脳神経の構造をすべて覚えこむ。バイタルは正常だ。脳の状態もいい。そして、指定された部分の切除を行った。
《ディメンションカッター》
《クリップ》
出血を起こさない様に止血のコントロールをアシスタントに任せ、ターゲットに沿って、正確に脳の一部を切り取る。切り取った部分をトレイに移す。
《転移》
そして、脳細胞にIPS細胞を融合させる。
《アナライズ》
正常に融合が行われ、再生させる準備は整った。ここから、創作と再生の魔法で脳と脳細胞を元通りに再生させる。
《リジェネレイト》
俺は、全記憶で記憶したとおりに創作、再生させていく。最後に脳神経と血管を繋ぐ
《シール》
《スキャン》
《アナライズ》
再度、スキャンとアナライズをリセットし、状態を確認する。一応、これで脳は元通りになった。しかし、脳のメカニズムは”前の世界”でも完全には解明されていない。しかし、”
前の世界”以上の処置をした。後は、神様に祈るしかない。俺は、麻酔を解く。
《キュア》
「ふぅ、オペ終了。」
俺は一息つきホープに声をかける。
「師匠、師匠・・・」
ホープはゆっくりと目を覚ます。
「師匠、体はどうですか?動きますか?」
ホープはゆっくりと麻痺していた側を動かす。少しぎこちないが動いている。
「うむ。最近、全然半身を動かしとらんかったから動きが鈍いのう。でも、ちゃんと動くぞ!!」
ホープは、手をグー、パーと動かし、数を数えるように指を一本ずつ伸ばしていく。拘縮もしていないようだ。きちんと、曲げ伸ばしをしていたんだな。流石に、そう言うところはストイックだな。
「よし!!!!!!」
俺は、思わず”ガッツポーズ”をする。
「師匠、歩けますか?」
「うむ、やってみよう。」
ホープはベッドから降りると、ゆっくりだが歩き出す。
「少し、感覚が鈍いが歩くのは問題ない。暫く動かしとらんかったから感覚が鈍っているのかもしれんな。」
ホープは、難なく歩き始める。後は、様子見だろう。俺は、ドミノとクーガを呼んだ。
「オペは旨く行きました。今の所、麻痺も取れています。動きがぎこちないと言っていますが、暫く動かさなかったのが原因と思われるので暫くしたら元通りになると思われます。」
「ほ、本当か!!良かった・・・本当に良かった。」
「おじい様ー。」
クーガは拳を握りしめ、ドミノはホープの所に駆け寄り、ホープに抱きしめられる、各々オペの成功を喜び、噛みしめていていた。人間関係は、色々な因果が絡みちょっとしたきっかけですぐに様々な方向を向く。それは、いい方にも悪い方にも。クッコロさん(ボルボ)とオッティーの汚名を返上するために剣術大会に出場する事になり、そして、それをきっかけに剣術道場のドミノやホープに出会い、神明流を学ぶ。しかし、その神明流もクーガと言う一人の男が対立流派の北辰流にそそのかされ、師匠との確執から子弟同士の争いに発展。師匠であるホープが半身麻痺となり、その結果、名声は地に落とされてしまう。剣術大会で優勝し、国王に直訴。その結果、オッティーやボルボの汚名は返上された。同時にクーガとホープの確執も解け、クーガは正気を取り戻した。そして、マヒが残ったホープの治療が今完了し、元の身体に戻る。複雑に絡み合った流れが一つに纏まり、信頼や絆を得られ、これから大きな良い流れになっていくだろう。俺は、そんな彼らを後に屋敷に戻った。
「テスラさん、この辺にエイプかコング系の魔物っていますか?」
「そうですね。帝都から北西に行きますと山と森に囲まれたサンシャインの街がありますが、そこにエイプが多く生息すると言われていますね。」
「そうなんですね。ありがとうございます。」
「そうそう、あと別件ですが、最近、帝都の沖合でクラーケンが出現し、航行する船舶に甚大な被害が出ているそうです。一応、ギルドマスターからタカミさんが来たら状況を説明するように言われているのでご説明させてもらいました。」
「なぜ俺に・・・、まぁ、分かりました。ありがとうございます。」
なぜ俺にそんな事を話するんだろう。何か期待しているのか?でも、まぁ、情報として貰っておくのは悪くないかな。俺は、心の片隅にし留めておく。
俺は、レビテーションでサンシャインに向かう。サンシャインの街には飛行して約1時間程度の所にあった。街の大きさは、ヤマトの街程度かな。街並みもヤマトの街に似ている。俺は、街には立ち寄らず、そのまま森に向かう。マップを開きエイプを敵索する。結構な数のエイプがいるみたいだ。俺は、2体を生け捕りにして屋敷に転移で戻る。サンシャインの街の座標が特定できたので、次回から転移での移動が可能だ。俺は、庭に小屋を作り、結界で隔離する。早速、部屋に戻り、一匹のエイプをマウス同様、脳の一部を切り取り、IPS細胞を融合させ、再生させる。エイプでも再生は可能だった。これで、しばらく様子を見る事にした。
翌日、ホープ師匠の治療方針を話するために道場に向かった。道場には多くの門下生がいる。これでも結構っ選抜したらしい。そこには、ドミノとクーガの姿があった。
「こんにちわー。師匠いますか?」
「おう、お前か。じじいなら奥で休んでいる。なんか用か?」
「うん。師匠の治療について話しに来たんだけど、調子悪いのか?」
「いや、そういう訳じゃないと思うぞ。最近、門下生が多くて、じじいも張り切りすぎて疲れが出たんじゃないか?」
「そっか、では、ちょっと師匠の所に行って来る。それと、後でクーガ先輩にも話があるので時間ができたら教えてください。」
「ん?クーガ先輩!?なんか、お前にそう呼ばれると変な感じだな。クーガでいいよ。」
「いえ、年上の方だし、神明流の先輩だから。神明流は礼を重んじるんだろ?こういう事はちゃんとしないとね。」
「分かった、分かった。好きにしろ。ほれ、とっとと爺の所に行ってこい。」
俺は、ホープの所に行く。ホープは縁側の椅子に座り休んでいた。
「師匠、大丈夫ですか?」
「あぁ、お主か。まぁ、ちょっと疲れただけじゃ。最近の若者はこらえ性が無くてなっとらんな。」
俺は、師匠にヒールをかける。まあ、気休めだけどないよりはいいかな。
「悪いの。で、なんか用か?」
「はい、今後の治療のスケジュールについて話しようと思ってきました。」
「そうか。それはお主に任せる。好きにせい。」
「まぁ、そう言われてもちゃんと説明しないといけないと思うので・・・、現在、エイプを使った最終の検証を行っています。マウスやエイプにおいては今の所上手くいってます。脳細胞もきちんと再生しました。麻痺を持っていたエイプも普通に生活しています。この後、エイプの様子を見て問題なさそうであれば師匠の治療にあたりたいと思っています。何もなければ、オペの予定は1週間後でどうでしょうか?」
「今は、ドミノとクーガに道場を任せておる。儂は今の所予定は無いからお主に任せるとしよう。」
「分かりました。では、ドミノさんにも同じ説明をしておきます。」
俺は一礼して、ドミノとクーガの休憩委時間になるのを素振りをしながら待った。暫くするとドミノとクーガがやって来る。
「だから、あんたの教え方が雑なのよ。そんなんで門下生が理解できる訳無いじゃないの!」
「あー、分かった分かった。でも、あれくらい誰でも出来るだろ。」
「だから、そう言うのがダメなのよ!最初はちゃんと説明しないと変な癖着くでしょ!」
「はいはい。分かりましたよ。」
なんか、ドミノとクーガがやっている。でも、何となく仲良くやってそうだからいいか。
「仲良さそうですね。いい光景です。」
「仲良くないわよ!」
「これのどこ見て仲良いって言っているんだ?」
二人い揃って否定する。
「まぁまぁ、さっき師匠に根この治療について説明してきました。一応、ドミノさんにも説明しておきます。」
俺は、ドミノに今後の治療方針を話す。何気にクーガも聞いている。そりゃ、気になるか。
「で、じじいは治るのか?」
「うん、今の検証が上手くいけば問題無いと思う。」
「そっか。悪いな。こんな事になっちまって。」
「ほんとだよ。反省して下さい。」
「あぁ、そこは真摯に受け止めているよ。本当に悪かった。」
「なんか、素直なクーガ先輩は変な感じですね。」
「ぷぷぷ・・・クーガ先輩ですって。背筋が寒くなるわ」
「ふん!二人共、人が素直になってりゃ調子づきやがって」
「そう、そんな感じがクーガ先輩ですね。それと、クーガ先輩の腕ですが、そろそろ治しましょうか?」
「ん?治るのか?」
「まぁ、何とかなりますよ。」
「あー、でもいいわ。これは、俺への戒めだ。」
「ったく、何言っているですか。ちゃんと腕を治して道場に貢献する方がよっぽど戒めになりますよ。自分に酔ってないでとっとと治しちゃいましょう。今からいいですか?」
「あぁ、稽古は一応終わったからな。じゃあ、よろしく頼む」
俺は、オペの準備をする。クリーンルームを出し、そのベッドの上に上半身を脱いで寝てもらう。俺は、空間収納から白衣を取り出し、”バサ”っと着る。
「これからオペを始める。」
《ベール》
《アネスシージャ》
《リカバリー》
《アナライズ》
俺は、空間収納から腕を取り出す。そして、腕の断面を切る。
《クリップ》
血流を止め、血管、神経、筋組織を繋いでいく。
《シール》
最後にヒールで傷口を治すが、わざと跡を残した。
《ヒール》
《アンチバクテリア》
《アンチウィルス》
《アナライズ》
《キュア》
麻酔を覚まし、オペを終える。
「術式終了。」
クーガは起き上がって、腕を動かす。
「少し違和感があるけど、ちゃんと動く!お前凄いな。」
「治療費は、大金貨3枚ね。」
「ま、マジか!!まぁ、でもそれくらいの価値はあるな。分かった。分割でいいか?」
「では、その分、死に物狂いで道場の為に働いてください。よろしくお願いします。」
「あぁ、分かっているよ。それとこの傷。わざと残したんだろ。ありがとな。」
「うん。後は、師匠が元の身体に戻ればすべて解決だね。」
「あぁ、よろしく頼むよ。」
「うん、全力を尽くす。ってことで、師匠の治療費もクーガ持ちね。」
「あ、あぁ…も、もちろんだ・・・!」
「嘘だよ。師匠にはそれ以上の物を貰っている。その恩に俺は答えるから心配しなくていいよ。」
「ったく。まぁ、その方がタカミらしいけどな。」
俺は、屋敷に戻り、エイプ達を観察する。特に異常は見られない。この調子でうまく行って欲しい。
鍛錬、図書館三昧の日常が1週間が過ぎた頃に王家より使者が屋敷に訪れた。どうやら調査結果が出たようだ。使者によると翌日の昼過ぎに俺と、オッティー、ボルボに城に出向くように国王からお達しが来た。俺達は、言われた通り昼に国王の下へ出向く。流石に東地区最大の都市 中央帝都イーストシティーだ。城門から場内に入るまでの距離が半端ない。俺達は馬車で城門を抜け城の入口までやって来た。数人の親衛隊が入口で俺達を待ち構えている。俺達は馬車を降り、彼らの下へ行く。
「私は、中央帝都親衛隊隊長 トーハツだ。君がタカミ君か。ようこそ。イーストシティー城へ。それに、ボルボ様とオッティー様。お久しぶりでございます。さぁ、皆様、陛下がお待ちになっております。こちらへどうぞ。」
俺達は、トーハツの後について行く。両サイドには親衛隊の兵士が並走している。城内も凄い。様々な彫刻や装飾がズラッと並んでいる。庭園を挟んだ通路を通り、ひたすら進む。そして、大きな扉の前でトーハツが止まった。
「ここは謁見の間である。くれぐれも陛下に無礼が無いようにお願いする。」
トーハツは門兵に一言告げると、扉が開く。謁見の間はとても広く内装も豪華絢爛だ。その中心の奥に陛下が座っている。その両隣にはお妃さまと皇子が付き添っている。なんか、本格的な謁見だ。俺達は、トーハツの後に続き陛下の側へと近づいていく。そして、陛下の前に来ると、片膝をつき礼をする。
「よく来たくれたな。タカミよ。そなたの告発後、各所、貴族達の調べを行った。」
「はい。私の話を聞き入れて下さり大変感謝申し上げます。」
「そんなに畏まらなくてもよい。面を上げなさい。」
「はい。ご意向のままに」
俺は、顔を上げ国王をみる。
「いい目じゃ。ボルボもオッティーもいい少年と出会った。調べの結果、お主らの話の通りだった。
大臣が今回の調査結果を読み上げる。
「この件に関与した首謀者は全員投獄、貴族達は、その称号の剥奪と資産の没収を行った。特に、魔族の手引きに関与した者はその時の状況を自白させ、処刑とした。尚、現第一魔導騎士団隊長は、元騎士団長との関りは無かったものとし、現職を継続して行うものとした。尚、オッティー元第一魔導騎士団団長及び第一特殊部隊隊長 ボルボ=アイーンの処遇については本人との協議の上追って公示を出す物とする」
「オッティー、ボルボ、儂が至らぬばかりにお前たちに大変な苦労をかけたな。申し訳なかった。」
国王は自らオッティーとボルボに謝罪する。国王自ら謝罪すると言う事は、国が今回の事件に関して全面的に非を認めた事になる。大変なことだ。
「なんと、恐れ多いこと。陛下頭を上げてください。」
「そうは言っても、オッティーに関してはこの国が悪魔からの被害を受けぬよう自らの命を犠牲にしてまで貢献してくれた。しかも、そなたらは世界を救った5大英雄の2人。それなのにこのような仕打ちをして申し訳なさでいっぱいなのじゃ。」
「陛下、お気になさらずに。儂は、この世界と同じくらい家族も大切にしております。その家族を守りこのようになった事。陛下に非はありませぬ」
「そう言ってもらえると儂も少しは気が楽になる。オッティー、ボルボすまんな。」
「陛下、勿体なきお言葉です。」
「もう過ぎた事なのでお気になさらないで頂きたい。」
「そこでじゃ、二人にはもう一度、儂直属の魔導士と諜報員として就いてほしいのじゃがどうだろうか。」
「折角のお言葉ですが、某らにはタカミと言う主君がおります。大変喜ばしいお誘いではありますがお断りさせていただき奉る。」
「お主らが認めるこの少年、一体どのような人物なのだ?」
「某らの主君は、人柄も能力も我我が主君ににふさわしい人物と思っておりまする。」
「5大英雄にそこまで言わせるなんてとんでもない少年だ。その少年にも褒美を与えねばならないな。タカミ。お主の望みを言ってみよ。」
「はい、私の望みは既に叶えて頂きました。ありがとうございます。」
「ん?どういうことだ?」
「はい、私の望みは大切な仲間であるボルボとオッティーの冤罪を晴らす事。なのでもう充分でございます。」
「わっはっはっは!!そうか!うむ。流石オッティーやボルボが認めただけの事はある。分かった。では、こうしよう。今後、何か望みが出来たら時、儂に出来る事を一つ叶えてやろう。いつでも良い。何かあったら儂を尋ねで来るが良い。」
「え!!も、勿体なきお言葉でございます。」
なんか、俺は国王を勘違いしていた。王族や貴族はもっと威圧的で傲慢なイメージだったが、どうやらそうではないような気がする。それは、相手がオッティーやボルボと言った国王に近い存在だったからなのかは分からないが、こうしてきちんと調査し報告してくれた。リザードマンの集落をパジェロが襲撃に来た時は、確かに不信感で一杯だったが、パジェロが言った通り、第二皇子の独断だったのかもしれない。まぁ、分からないけど。でも、現国王に対して俺は悪いイメージは無くなった。今は、国王に感謝しているくらいだ。今の所、すげてが順調だ。俺は、王城をでて帰路につく。1日の検証を最後に問題無ければ、ホープのオペをしたいと思っている。
屋敷に着き、エイプの下に向かう。今日が最後の検証となる。俺は、スキャンとアナライズで隅々までエイプの状態を調べる。状態としては、コントロールのエイプとほぼ同じ状態である事が分かった。問題行動も出ていない。ガン化の懸念もあったが今の所全くその兆候は見られていない。最後に時間を進めて2体の様子を見る。最初に3年、続いて5年と時間を進めて検証するが、特にコントロールと比較しても大きく変わる所は無かった。最後に10年進めてみる。最終の検証としても特に変わった所は見られず、俺が作ったIPS細胞の有効性は問題なさそうだ。その結果を踏まえ、ホープにIPS細胞を移植し、死滅した脳細胞と脳神経の再生を試みたいと思う。
翌日、俺は、ノアと共に道場に向かった。
「本日は、師匠の最後の処置を行います。魔獣による検証は問題なく済みました。しかし、ここからは本番です。正直、俺の初めての事なのでどうなるか分かりません。その事を了承していただきたい。」
俺は、ホープとドミノに今日の術式を説明する。一瞬ドミノは、不安そうな顔をしたが、二人は真剣に話を聞き、了承してくれた。
「分かった。私は、タカミを信頼している。おじい様をお願いします。」
「うむ。儂もお主を信頼しておる。もしだめでも、それが運命だと受け入れるから安心してやってくれ!」
「ありがとうございます。全力を尽くします。」
俺は、ドミノを外に出し、オペの準備を始める。
《クリーンルーム》
ホープに上半身だけ脱いでもらい、ベールで包み、ベッドに寝かせる。
《ベール》
《アネスシージャ》
全身の感覚を失いホープが意識をなくす。
《アシスタント》
《アナライズ》
俺の目の前に、バイタルのモニターが映し出される。集中してオペを行うために、アシスタントに状態のチェックを任せ、バイタルモニターを目の端にやる。
《スキャン》
俺の目の前に3Dの脳が映し出される。
《ターゲット》
機能していない部分を内部まで合わせ、空間認識と演算にてターゲットを絞り込む。
”さて、ここからが本番だ。”
《ズーム》
俺は、全記憶にて脳細胞や脳神経の構造をすべて覚えこむ。バイタルは正常だ。脳の状態もいい。そして、指定された部分の切除を行った。
《ディメンションカッター》
《クリップ》
出血を起こさない様に止血のコントロールをアシスタントに任せ、ターゲットに沿って、正確に脳の一部を切り取る。切り取った部分をトレイに移す。
《転移》
そして、脳細胞にIPS細胞を融合させる。
《アナライズ》
正常に融合が行われ、再生させる準備は整った。ここから、創作と再生の魔法で脳と脳細胞を元通りに再生させる。
《リジェネレイト》
俺は、全記憶で記憶したとおりに創作、再生させていく。最後に脳神経と血管を繋ぐ
《シール》
《スキャン》
《アナライズ》
再度、スキャンとアナライズをリセットし、状態を確認する。一応、これで脳は元通りになった。しかし、脳のメカニズムは”前の世界”でも完全には解明されていない。しかし、”
前の世界”以上の処置をした。後は、神様に祈るしかない。俺は、麻酔を解く。
《キュア》
「ふぅ、オペ終了。」
俺は一息つきホープに声をかける。
「師匠、師匠・・・」
ホープはゆっくりと目を覚ます。
「師匠、体はどうですか?動きますか?」
ホープはゆっくりと麻痺していた側を動かす。少しぎこちないが動いている。
「うむ。最近、全然半身を動かしとらんかったから動きが鈍いのう。でも、ちゃんと動くぞ!!」
ホープは、手をグー、パーと動かし、数を数えるように指を一本ずつ伸ばしていく。拘縮もしていないようだ。きちんと、曲げ伸ばしをしていたんだな。流石に、そう言うところはストイックだな。
「よし!!!!!!」
俺は、思わず”ガッツポーズ”をする。
「師匠、歩けますか?」
「うむ、やってみよう。」
ホープはベッドから降りると、ゆっくりだが歩き出す。
「少し、感覚が鈍いが歩くのは問題ない。暫く動かしとらんかったから感覚が鈍っているのかもしれんな。」
ホープは、難なく歩き始める。後は、様子見だろう。俺は、ドミノとクーガを呼んだ。
「オペは旨く行きました。今の所、麻痺も取れています。動きがぎこちないと言っていますが、暫く動かさなかったのが原因と思われるので暫くしたら元通りになると思われます。」
「ほ、本当か!!良かった・・・本当に良かった。」
「おじい様ー。」
クーガは拳を握りしめ、ドミノはホープの所に駆け寄り、ホープに抱きしめられる、各々オペの成功を喜び、噛みしめていていた。人間関係は、色々な因果が絡みちょっとしたきっかけですぐに様々な方向を向く。それは、いい方にも悪い方にも。クッコロさん(ボルボ)とオッティーの汚名を返上するために剣術大会に出場する事になり、そして、それをきっかけに剣術道場のドミノやホープに出会い、神明流を学ぶ。しかし、その神明流もクーガと言う一人の男が対立流派の北辰流にそそのかされ、師匠との確執から子弟同士の争いに発展。師匠であるホープが半身麻痺となり、その結果、名声は地に落とされてしまう。剣術大会で優勝し、国王に直訴。その結果、オッティーやボルボの汚名は返上された。同時にクーガとホープの確執も解け、クーガは正気を取り戻した。そして、マヒが残ったホープの治療が今完了し、元の身体に戻る。複雑に絡み合った流れが一つに纏まり、信頼や絆を得られ、これから大きな良い流れになっていくだろう。俺は、そんな彼らを後に屋敷に戻った。
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