あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

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第2章 再会編

第20話 二人だけの約束/亮二・加奈子

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 しかし出会ってまだ二度目のカナちゃんと話をしただけで、いや話だけじゃなかったけど、でもこうも色々と前に進む気になれたんだろう? 不思議だよなぁ……

「りょう君がどう決着させるのかを聞くのは怖いから聞かないでおこうかな……」

「そうだね。今は聞かないでくれるかな? 後でちゃんとカナちゃんには報告するつもりだし。でも、カナちゃんに対して決めた事もあるんだ」

「えっ!? わ、私も? それって聞いてもいいのかな?」

「うん、いいよ。でもそれは俺の勝手な思いだからカナちゃんが嫌なら全然、拒否してくれてもいいからね」

「う、うん……」

 カナちゃんは少し不安そうな表情をしている。

「まだ2回しか会っていないけど今日、色々と話をして俺もカナちゃんの事が大好きになったよ。ただ、その大好きが恋愛対象かどうかは今はよく分からない……でも告白してくれたのは本当に嬉しかったんだ……」

「う、うん……」

「でもさすがにお互いが好き同士だとしても今付き合うのは問題が多過ぎて無理なんだよ。小学生が被害を受ける事件も多いだろ? さっきのキスも俺からしていたら完全に犯罪になるんだよ。仮に俺が何も悪い事をしていないって訴えても通じないんだ」

「犯罪……」

「そう、犯罪さ。たださ……もしお互いに、うーん、そうだなぁ……カナちゃんが18歳くらいになった時に、もしお互いに彼氏彼女がいなくて、お互いにまだ両想いだったらその時に正式な彼氏彼女になって付き合うってのはどうだろう? それまでは『歳の離れたお友達』という関係でいるっていうのはどうかな? ダメかな?」

「・・・・・・」

 カナちゃんは俯きながら俺の言葉に対して考えている様だ。

 しかし我ながら何というありきたりで身勝手な提案なんだろうか。
 捉え方によったら俺が先で全然、彼女ができなかった時の保険をかけているみたいに聞こえるし……俺って最低な奴に見えないか?

 はぁ、頭の良い人ならもっと良い提案ができるんだろうなぁ……

 俺は保険のつもりで言っている訳では無くて、小学生とは絶対に付き合えないんだよという事を言いたいだけなんだけどなぁ……カナちゃんはどう思うだろうか?

 こんな提案では俺の事を幻滅してしまうかもしれないな……

「うん、分かった……」

「そっか、ダメか……って、えっ、いいのかい? か、カナちゃん、俺の提案を受け入れてくれるのかい?」

「うん、りょう君が考えた案なら私は文句なんて無いよ。それに私のせいでりょう君が犯罪者になるのは嫌だし……でも私はこれからも絶対に誰とも付き合う気なんて無いし……告白されたって断るし……」

 きっとこれからしばらくの間はカナちゃんにフラれる男子が急増するんだろうな。本当は同世代の子と付き合う方がカナちゃんにとって良いとは思うんだが……

 まぁ、今は小学生だからこう言っているけど成長するにつれて考え方も変わるだろうし、好みも変わるだろうし、好きな人だって現れるかもしれないし……

 逆に俺の事を『つまらない男』って思いだす可能性もあるかもな。それはそれで悲しい様な気もするけど……

「でも18歳までって長いなぁ……16歳じゃダメなのかな? 女性って16歳から結婚できるって前にお母さんから聞いた事があるんだけど……」

「ブハッ、け、結婚!? そ、そ、そんな事を考えるのは早過ぎるよ。ちゃんと順序を踏んで行かないと……と、とりあえず、まずはお友達からで……」

 まぁ最近はできちゃった婚とかも増えているから順序にこだわっている俺の考え方の方が古いのかもしれないけど……

 しかし、俺は結婚なんて全然、考えてなかったぞ。カナちゃんの方が俺よりも更に上をいった考え方をしているよな? なんだかタジタジだよ。

「でもお友達という事はこれからはりょう君といつでも会えるんだよね?」

「まぁ、そういう事になるね。ただ俺はバイトを二つもしているからなかなか会える時間を作るのは難しいかもしれないけどね。それにカナちゃんだって中学生になったら高校受験もあるし、勉強も頑張ってもらわないと……俺のせいで成績が悪くなったらご両親に申し訳無いしさ……」

「私、勉強も頑張るよ。りょう君に迷惑は絶対にかけたくないもん」

 はぁ……何て可愛いことを言ってくれるんだ、この子は……
 俺もマジでこれから頑張らないと……

「あっ、そうだ。りょう君の携帯番号を教えてくれないかな?」

「え? 別にいいけど、カナちゃん、携帯電話を持っているのかい?」

「ううん、持って無いよ。でも今度の誕生日にお父さんにおねだりしてみようかなって思っているの。それでもし携帯電話を持たせてくれたらりょう君の携帯番号を一番に登録したいなぁと思って」

「ハハハ、そういうことなら紙と鉛筆が……そうだ。一緒に事務所に行こうか? 普通の人が遊園地の事務所に入る事はなかなか無いだろうしさ」

「うん、行ってみたい」

 たしか事務所には根津所長と桜ちゃんのお母さんの大塚さんがいるんだっけ?

 俺達が事務所に入ろうと入り口のドアに触れようとした瞬間、ドアが急に開き、大塚さんが俺達に背中を向ける様な感じで根津さんに大きな声で話しかけながら外に出ようとしている。

「それじゃぁ、根津さん、お互いバツイチ同士、今度ゆっくり飲みに行きましょうね!?」

 えっ!?

 根津所長ってバツイチだったんだ。初めて知ったぞ。

「あら? カナちゃんに……広美ちゃんのお友達の……お名前なんだったっけ? そっか、二人でお話してたんだよね? しかし二人よく見るとお似合いのカップルだねぇ」

 何だこの人は? 普通、高校生と小学生を見てお似合いのカップルなんて言わないだろ? あっ、もしかしたら娘の桜ちゃんの為にカナちゃんから翔太君を奪わせないようにする作戦なのかも……でもまぁ、その心配は無いんだけどな。

 すると事務所にいる根津所長も笑いながら大塚さんの言葉に賛同する様なことを言ってきた。

「ハハハ、大塚さんって昔から思ったことをポンポン言うタイプだねぇ……でも大塚さんがそう見えちゃうのも無理ないよね。何と言っても私達の身近には17歳差で結婚した人間がいるんだから……鎌田君と三田さんの娘ちゃんがカップルになっても全然、違和感を感じないもんねぇ……ハハハ」

 イヤイヤイヤッ、10年後くらいならともかく、さすがに今の俺達でのカップルには無理があるだろ?

 でも根津所長や大塚さんの身近な人って、きっと広美の両親のことなんだよな? 俺もそれを知ってからは広美の両親の事を『奇跡のカップル』とあがめているくらいだし……

 こうして俺の休憩時間も終わりに近づきカナちゃんとの5年ぶりの会話は終わった。

 別れ際にカナちゃんが「約束だよ。私が16歳になったら……」と言ってきたので「ハハハ、18歳ね」と俺は笑顔で答え、最後に二人で指切りをした。

「 「約束を守らないと針千本のーます」 」

 三田さん夫婦に連れられて俺の前から去って行くカナちゃんの後姿をずっと見つめながら、もし、これからカナちゃんが他に好きな人ができても俺は怒る立場でも無いし、ちゃんと祝福するからね。カナちゃんの好きなように進んでくれて良いんだからねと心の中で呟いていた。

 そうこうしていると広美が頬に涙の跡をつけながら戻って来た。

「あれ? 亮君、とてもスッキリした顔をしているわね? もしかして何か良いことでもあったのかしら?」

「べ、別に……」

 先に俺が涙の跡を突っ込もうと思っていたのに先に突っ込まれた気分だ。

「ええ、ホントに? マーコ先生の娘ちゃんのカナちゃんと何かあったんじゃないの? それか若いエネルギーを吸い取っちゃって元気になったとか……」

「ば、バカな事を言うなよ!? ほんと広美は昔から……」

 俺を弟みたいな扱いを……

「広美、今日は俺達バイト5時半までだからさ、終わったら一緒にアトラクションを周らないか? それで最後に『ステップスター』に乗りたいんだけど? そこで少し話したい事もあるし……」

「うん、いいよ。実は私も亮君に話したい事があったんだぁ……」

 広美が俺に話したい事? 珍しいな。一体何だろう?


――――――――――――――――――――――――

 私は遂にりょう君に会えただけじゃなく、キスまでしてしまった。まぁこれは私が無理矢理してしまったんだけど……

 でも、りょう君は怒るどころか私の為に色々と考えてくれ、そして素敵な提案をしてくれた。私達だけの数年後の約束を……

「ねぇ、お父さん……?」

「ん? 何だい加奈子?」

「あのね、今年の誕生日プレゼントなんだけどね、凄く欲しい物があって……」

「ハハハ、加奈子の誕生日は11月なのに気が早いなぁ。でも良いよ。言ってごらん」

「う、うん……あのね、私が欲しいのはね……」





――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
これで第2章は終了です。
第3章も引き続きよろしくお願い致します。
次回からは毎日(夜10時前後の予定)1話ずつ投稿させていただきます。
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